第一章 ゼロ戦の登場



ゼロ戦の話の前に、その前に作られた96式艦上戦闘機の話を少々します

大正12年2月 
世界初の新造航空母艦「鳳翔」*1 から
イギリス人パイロットの「ジョルダン大尉」が操縦する
三菱 10式艦上戦闘機が飛び立ち
日本の艦上戦闘機の歴史が始まります。

日本初の艦上戦闘機を製作した三菱でしたが
その後は 中島飛行機の3式艦戦・90式艦戦・95式艦戦が正式採用され
三菱は冷や飯を食っていました

三菱は新人の堀越二郎技師を次期艦戦の試作機の主任にし
「7試艦戦」*2(通称アヒル)を製作しましたが、これは成功せず
次の「9試艦戦」*3(後の96式艦戦)で要求性能を大幅に上回り見
昭和11年11月 96式艦戦*4として採用
これにより三菱は中島に対して雪辱を晴らしただけではなく、
日本の航空技術を世界的レベルまで引き上げることとなりました
折からの日華事変では中国軍に対して大活躍していました

有名なエピソードでは
昭和12年12月9日 中国・南昌上空にて樫村空曹長が操縦する96式艦戦と
中国空軍のアメリカ製複葉戦闘機「カーチス・ホーク」と空戦時に接触し
これを撃墜するものの、左主翼の半分を失ってしまいましたが
なんとか上海の基地まで無事に帰還することに成功!!
96式艦戦の堅牢製と安定性、操縦性の優秀さを証明する事件となりました。



ゼロ戦の話

昭和12年10月6日96式艦戦の成功で意気上がる三菱は
「堀越チーム」に対し新たに「12試艦戦」の設計を命じました


しかし海軍側の「12試艦戦」の要求値*5は当時の技術では実現不能と思われる物でした
堀越技師は96式の時にも数々の新技術を導入しましたが、
それ以上に多くの新技術・新機構*6を導入して更に
血のにじむ様な努力で*7軽量化・空気抵抗の減少を施し
無謀と思われた要求値をクリアしました。

ちなみに中島は海軍の要求が高すぎるため
早々に12試艦戦の試作を辞退してしまいました (´・ω・`)

昭和14年3月16日 1号機完成
同 3月18日初飛行 黄色に塗装された「12試艦戦」が各務ヶ原の空を飛びました

この時のエピソードとして三菱 名古屋工場から各務ヶ原の試験場までの50kmの道のりを
時速2kmほどの牛車で丸一日かけて輸送したそうです。
時速500kmを超える最新鋭戦闘機を運ぶのにずいぶんと長閑な光景でしたが
当時の道は舗装されていないバラス道(グラベルみたいな・・・)で大事な試作機を壊さず
輸送するためには最適な方法だったのかもしれません。

1号機、2号機(A6M1)のエンジンは三菱製「瑞星13型」780ps搭載
3号機(A6M2)以降はより強力な 中島製「栄12型」940psを搭載


初陣

その後も数々の改修を施し「12試艦戦」は正式採用を待たずに
昭和15年7月 中国大陸で作戦中の「12空」に「零式艦上戦闘機1型」*8として送り込みました

8月19日 横山保大尉以下12機が陸攻(爆撃隊)を援護するために
重慶に進攻したが敵機と遭遇せず
その後2回の出撃時にも敵機とは遭遇できませんでした。
9月13日 の4回目の出撃 進藤三郎大尉以下13機が重慶上空で
ソ連製の戦闘機 「ポリカルポフ I-15およびI-16」合わせて27機と遭遇し 
大半を撃墜し、ゼロ戦部隊は未帰還機なしという大勝利を収めました

そして 

昭和15年12月4日 それまで主翼は固定式でしたが、空母上での取り回しを考慮し
主翼先端50cmのところから折りたためる様に改修され「零式艦上戦闘機2型」とし
17年に「零式艦上戦闘機21型(A6M2b)」として正式採用されました。



次回はゼロ戦の戦歴について書いて見ます




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ゼロ戦伝説の検証




*1 当時の空母は既存の艦から改造されて作られた物はありましたが              
   最初から航空母艦として建造されたのは「鳳翔」が最初                  
  ちなみに世界初の本格的航空母艦は建造中の商船「コンテ・ロッソ」から        
  改造して作られたイギリスの「アーガス」です。                        

*2 7試艦戦のデータ 出力 710ps 最高速度 315km/h  上昇力 4分30秒/3000m     

*3 9試艦戦の要求値の一部 最高速度350km/h以上 上昇力 6分30秒/5000m       
 

*4 96式艦戦4号(A5M4(最終型)) のデータ エンジン 寿41型 785ps 最高速度435.2km/h
  航続距離 1200km 武装 7.7mm機銃×2 30kg爆弾×2                 

*5 12試艦戦の要求値の一部  
                                    
  最高速度 高度4000mで270kt以上(500km/h以上)  上昇力3000mまで3分30秒以内 
   航続力 巡航速度で6〜8時間  
   離陸滑走距離 風速 12m/sにて70m以下   着陸速度 58kt(107q/h)以下  
   空戦能力 96式2号艦戦に劣らぬこと                              
   武装99式20mm機関砲×2 97式7.7mm機銃×2 60kgまたは30kg爆弾×2 
       
*6 新機構・新技術の一部
  定速式プロペラ ・ 超超ジェラルミンESD ・ 主翼の形状 ・ 水滴方密閉風防
  流線型落下増槽 ・ 引き込み脚 ・ 主翼と一体になった胴体前部 などなど

*7 実際倒れた 堀越技師は身体が丈夫な方では無かったのでした orz

*8 正式採用後に零式艦上戦闘機1型は零式艦上戦闘機11型(A6M2a)名称変更されました 



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