中国ネット文書考証学

 YAHOO!JAPANではRecord China(以下レコチャ)、XINHUA.JP(以下新華経済)、サーチナ等が競って中国の新聞記事やネット文書の要約を掲載している。毎日中国経済の記事は、2013年からは見なくなった。最近はレコチャと新華経済の競争が激しいようで、よく同じ記事をほぼ同時に送信したりしている。両者で食い違いがある場合、中国語の原文に当たって確認しなければならない。また「本当にこんなこと言っているのか」という記事も多く、やはり原文を参照したくなる場合が多い。しかし適当なキーワードが含まれていないと検索に時間がかかったり、結局見つからないこともある。中国語の記事やネット文書を引用する場合、リンクを貼るか原題を表記するかしてほしいものである。このページは、韓国語は得意だが中国語は苦手な筆者が必死に検索して読んだ結果をまとめたものである。


情報源の表記

 韓国の大手新聞である한겨레は、日本では「ハンギョレ」または「ハンギョレ新聞」、中国では「韩民族新闻」と表記される。ところがサーチナの米原裕子記者や新華経済の恩田有紀記者は韩民族新闻がハンギョレであることがわかっておらず、記事中で平気で「韓民族新聞」と書いている。これならまだ良いが、変な間違え方をされると探す方としては大迷惑である。2013年10月22日、レコチャの北田記者は「日本が過去の反省をしないまま国際社会で主導的な役割を担うことを許せば、それは人類の良心に対する侮辱である」と韓国日報の社説が主張したと環球時報が伝えたと伝えた。

韓国紙が社説で日本の“靖国参拝劇場”を厳しく非難=「人類の良心に対する侮辱」―中国メディア [Record China 2013/10/22 11:31]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=78164

 しかしいくら韓国のポータルサイトを探してみても、韓国日報はそんな社説を出していない。「人類の良心に対する侮辱」が原文で何と書かれているかを知りたかったのだが、この日は検索を諦めた。ところが翌朝YAHOO!JAPANを見ると、新華経済の小豆沢紀子記者が「日本の靖国神社トリックは人類の良知に対する侮辱」と韓国の英字紙・コリア・タイムスが報じたと環球時報が伝えたと伝えているではないか!

日本の「靖国神社トリック」は人類の良知に対する侮辱―韓国紙 [XINHUA.JP 2013/10/22 21:26]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/363273/

 そこでもういちど検索してみると、確かに Korea Times “It will be an insult to humankind's conscience to allow a country that does not really repent its past misdeeds to reemerge as a global leader...”と吠えていた。あきれてどこから韓国日報が出てきたのか調べようと環球時報の記事を探して読んでみると、「香港中评社援引《韩国时报》社论称…」となっており、北田記者が韓国時報→韓国日報と脳内変換したことがわかった。ジャーナリストとして、情報源を正確に伝えることは基本中の基本のはずである。

Politics of Yasukuni [Korea Times 2013/10/20 17:09]
http://www.koreatimes.co.kr/www/news/opinon/2013/10/202_144637.html

韩媒:日本的“靖国神社把戏”有辱人类良知 [环球网 2013/10/22 07:30]
http://world.huanqiu.com/exclusive/2013-10/4472620.html

 情報源の名称の間違いは、韓国メディアについてだけではない。2012年11月1日、レコチャのKT記者は、日中対立で日本の体力が尽きつつあると加紙ナショナルポストが伝えたと環球時報が伝えたと伝えた。しかし検索してみたところ、情報源はカナダの National Post ではなく、米国の Globalpost だった。環球時報の記事に「美国《全国邮报》」と米国メディアだとはっきり書いてあるのに、勝手に「加紙ナショナルポスト」に脳内変換してしまうKT記者の資質を疑わざるを得ない。

Japan v. China: small islands, big worry [Globalpost 2012/10/30 06:01]
http://www.globalpost.com/dispatch/news/regions/asia-pacific/121029/east-china-sea-japan-senkakus-diaoyu-disputed-islands

美媒:中日东海攻守明显变化 日渐力不从心 [环球时报 2012/10/31 08:14]
http://mil.huanqiu.com/observation/2012-10/3229887.html

<尖閣問題>紛争をしかけた日本だがすでに体力は限界……日中対立の攻守は逆転―中国 [Record China 2012/11/01 05:53]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=66008

 2014年6月27日、レコチャの岡田記者は「AP通信によると、中国の周辺諸国から女性が“花嫁”として売られている」と伝えた。ところが岡田記者が参照した参考消息の記事の見出しには、情報源がAFP通信だと思いっきり書いてあった。プロのジャーナリストが、美聯社 (Associated Press) と法新社 (Agence France-Presse) の区別もつかないとは情けない。

Brides for sale: Vietnamese women trafficked to China [AFP news agency 2014/06/24]
http://www.youtube.com/watch?v=z-os1em48BQ

法新社:周边多国妇女被拐卖到中国做新娘 [参考消息网 2014/06/26 07:51]
http://world.cankaoxiaoxi.com/2014/0626/406150.shtml

誘拐されて中国で“花嫁”に、女性の立場の弱い国で被害、家族にだまされるケースも―仏メディア [Record China 2014/06/27 20:34]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=90317


韓国から始まる伝言ゲーム

真の勝利者は韓国人

 2011年1月31日、サーチナの畠山栄記者は、サッカーのアジアカップで日本が優勝すると「在日韓国人である李忠成がゴールを決めて優勝した。優勝者は韓国人だ」と韓国マスコミが主張したと環球時報が伝えたと伝えた。しかしいくら韓国のポータルサイトを検索しても、そんな記事は見つからない。そこで環球時報の記事を探してみると、「 日本《产经新闻》1月30日援引韩国《中央日报》消息报道称,日本男足获得了冠军,这是“在日韩国人主导的胜利”,“韩国人才是真正的胜利者” 」となっていた。つまり「韓国人が真の勝利者だ」と中央日報が主張したと産経新聞が伝えたということである。しかし該当する産経新聞の記事を読んでも、「韩国人才是真正的胜利者」に該当する記述はない。もちろん元になった中央日報の記事にも、そんな内容はなかった。環球時報の乌元春記者が思い込みで書いたのか、悪意を持って捏造したのかはわからない。

<アジア杯>李忠成、日本を勝利に導く [ISPLUS/中央日報日本語版 2011/01/30 08:39:51]
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=137088&servcode=600§code=610

在日同胞がやり遂げた 韓国紙 [msn産経ニュース 2011/01/30 11:53]
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110130/kor11013011560000-n1.htm (リンク切れ)

日本靠韩裔队员赢得亚洲杯 韩媒称“韩国人是胜利者” [环球网 2011/01/30 16:08]
http://mil.huanqiu.com/observation/2012-10/3229887.html

李忠成選手のゴールで韓国「優勝者は韓国人」、中国「恥知らず」 [サーチナ 2011/01/31 11:10]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0131&f=national_0131_049.shtml

中国の故事成語の引用は避けるべき

 2013年12月2日、新華経済の小豆沢紀子記者は、韓国学中央研究院の李蓓容院長が「中国の故事成語の引用は極力避けるべきだ」と述べたと朝鮮日報が伝えたと中国網が伝えたと伝えた。しかし朝鮮日報を見ると、李院長は「私たちは日常会話の中でしばしば中国の故事成語を引用するが、われわれの精神的な価値をよみがえらせるため『韓国の語録』整理事業も具体化する」と述べただけで、中国の引用は避けるべきなどとは言っていない。このことは朝鮮日報日本語版でも報道されたが、小豆沢記者はこれを読んでいなかったらしい。

이배용 원장 "문화 DNA 키워 韓流 폭 넓힐 것"[조선일보 2013/11/27 03:05]
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2013/11/27/2013112700083.html

「韓流の幅を広げたい」 韓国学中央研究院長が意欲 [朝鮮日報日本語版 2013/11/27 11:19]
http://www.chosunonline.com/svc/view.html?contid=2013112701378&no=0

韓国の専門家、「我が国は韓流で文化強国となった、中国の故事成語の引用は避けるべき」―中国メディア [XINHUA.JP 2013/12/02 06:01]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/367246/

若宮啓文の東京小考

 2013年12月20日、レコチャの内山記者は、朴大統領は日本批判を控えるべきだと東亜日報中国語版が論じたと伝えた。しかしこの記事は、そう論じたのがもと朝日新聞主筆の若宮啓文氏であるという、一番肝心なことを伝えていない。若宮氏は安倍首相の2013年9月の国連演説の揚げ足を取って、「まずは慰安婦被害者の救済から一緒にしましょう」と朴大統領が提案すれば安倍首相も断れないはずだと、韓国政府に戦術を指南している。ところがレコチャの記事では、まるで東亜日報が朴大統領に日本攻撃をやめろと言っているように読める。

[와카미야의 東京小考] 한일관계, 이렇게 타개할 수 있다 [동아일보 2013/12/19 03:10]
http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=110&oid=020&aid=0002508511

[東京小考] 日韓打開は、こうしてやれる [東亜日報日本語版 2013/12/19 03:15]
http://www.chosunonline.com/svc/view.html?contid=2013112701378&no=0

「朴大統領は日本批判をやめよ!」=日韓は手を取り合うべき、中国は期待できない―韓国メディア [Record China 2013/12/20 17:04]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=80764

あなたはキム・ヨナです

 2014年2月20日、中央日報日本語版によると、韓国のある企業(別の記事によると液化石油天然ガス会社のE1)はイメージキャラクターにキム・ヨナ選手を起用し、「君はキム・ヨナではない。君は世の中で最も美しい大韓民国だ」というコピーを付けた。これにムカついたあるネットユーザがパロディ動画を作成し、「あなたはフィギュア弱小国の選手キム・ヨナです。いつも最善を尽くすチャンピオンであり、若い後輩のために飛躍する先駆者です」という字幕を付けた。
 ところが「あなたはフィギュア弱小国の選手キム・ヨナです」の部分が、レコチャと新華経済の報道ではそれぞれ「あなたはフィギュア弱小国の選手ではありません」「あなたはフィギュア弱小国のキム・ヨナではない」となっていた。何かと思って中央日報のページに行ってみると、原文の「
당신은 피겨 약소국 선수 김연아입니다」が日本語版では「あなたはフィギュア弱小国の選手キム・ヨナです」と正しく訳されていたのに対し、中国語版では「您不是花滑弱国的选手金妍儿」と誤訳されていた。時系列的には中央日報日本語版の記事が5時間以上前に出ているが、わざわざ中国語版の内容を、誤訳をそのままにして紹介する意味があるのだろうか。

도전 받는 올림픽 애국주의…대한민국보다 김연아 응원 [중앙일보 2014/02/20 00:37]
http://joongang.joins.com/article/785/13948785.html?ctg=1400

<ソチ五輪>挑戦受けるオリンピック愛国主義…「大韓民国よりキム・ヨナ応援」 [中央日報日本語版 2014/02/20 11:48]
http://japanese.joins.com/article/031/182031.html?servcode=600§code=670

奥运爱国主义受到挑战 更多人支持金妍儿而非大韩民国 [中央日報中文版 2014/02/20 09:10]
http://chinese.joins.com/gb/article.do?method=detail&art_id=115828&category=002001

韓国で五輪愛国主義の危機、ファンは「キム・ヨナだから」応援する―韓国メディア [Record China 2014/02/20 17:11]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=83714

<ソチ五輪>大韓民国ではなくキム・ヨナ個人を応援する国民が急増、五輪愛国主義が挑戦受ける―韓国メディア [XINHUA.JP 2014/02/20 17:15]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/374014/2/

性犯罪の件数

 2015年2月5日、新華経済の城山俊樹記者は、2014年に韓国で性暴力被害を受けた人の数は713人だったと韓国・聯合ニュースが伝えたと環球網が伝えたと伝えた。しかし人口5千万を超える国で、年間の性暴力被害者がそんなに少ないはずがない。そこで2013年版犯罪白書を見ると、強姦だけでも2011年に22,034件、2012年に21,346件発生しており、2014年にいきなり713人まで減ったとするのは非現実的である。聯合ニュースの元記事をみると、2014年に水原市のひまわりセンターが受け付けた性犯罪被害者が713名だったとあるが、これを環球網の范ト婷実習生が全国の被害者数と勘違いして伝えたらしい。ウラも取らずに中国のヨタ記事をそのまま流すのは、やめてもらいたいものである。

성폭력 피해상담 4명중 1명은 13세 미만 아동 [연합뉴스 2015/02/03 15:21]
http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=shm&sid1=102&oid=001&aid=0007391856

韩去年有713名女性遭性侵 25%受害者不满13岁 [环球网 2015/02/04 14:52]
http://world.huanqiu.com/exclusive/2015-02/5593283.html

韓国、昨年の性暴力被害者713人 そのうち25%が13歳未満―韓国メディア [FOCUS-ASIA.COM 2015/02/05 07:59]
http://www.focus-asia.com/socioeconomy/photonews/408492/


欧米から始まる伝言ゲーム

安倍はオバマの注意を引こうとしている

 2013年11月12日、レコチャのNY記者は、「日本の安倍晋三首相が再三にわたり中国を挑発しているのは、米国の注意を引こうとするためでなく、オバマ米大統領に戦略の重心をアジアに移させようとする狙いがあるからだ」と米誌フォーリン・ポリシーが指摘したと中国新聞網が伝えたと伝えた。しかし原文には「Maybe Abe means really to do something; maybe he means just to get Obama's attention(安倍首相は何事かを実行に移そうとしているのかも知れず、単にオバマの注意を引こうとしているだけかも知れない)」とあり、「米国の注意を引こうとするためでなく」は誤りである。またフォーリン・ポリシーの元記事は、国際秩序に挑戦する中国を非難する論調なのだが、NY記者はこれを読んでいないらしい。

Abe Pick's Up Obama's Fumble in East Asia [Foreign Policy 2013/11/04]
http://shadow.foreignpolicy.com/category/topic/security

日本はアジアのリーダーたる資格なし、中国への挑発は米国を味方につける意図―米誌 [Record China 2013/11/12 22:13]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=79048

中国は度量を見せることができる

 2013年11月22日、レコチャのNY記者は「(日本に対する)中国の態度は度量のあるものだ」と英紙フィナンシャル・タイムズが評価したと環球網が伝えたと伝えた。しかしファイナンシャル・タイムズの記事を読むと、「China can afford to be magnanimous. It is the rising power. So it should make it absolutely explicit that ... China accepts that Japan has a secure and honourable place in the emerging political order in Asia(発展中の中国は度量を見せる余裕があるはずだから、日本がアジアに確固たる名誉ある地位を占めることを受け入れるべきだ)」とあり、「度量を示せるのにそうしていない」という意味であることが分かる。

CHINA AND JAPAN ARE HEADING FOR A COLLISION [Financial Times 2013/11/18]
http://gonzaloraffoinfonews.blogspot.jp/2013/11/china-and-japan-are-heading-for.html

中国の勢いを恐れるが故に弱音を吐けない日本、度量のある中国=安全保障枠組みめぐる対立―英紙 [Record China 2013/11/22 08:40]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=79418

中国がアジアを仕切る

 2014年1月8日、新華経済の恩田有紀記者は「米国と中国が世界を二分し中国がアジアを仕切る」という主張が世界を震撼させていると米誌ナショナル・インタレストが伝えたと環球時報が伝えたと伝えた。この記事は、インドや韓国がこのアイディアに震え上がっており、ヒュー・ホワイトの著書(The China Choice, 2012のこと)が懸念をいっそう高めたところで終わっている。ところがナショナル・インタレストの記事は、その直後で「But China getting its own piece of the rock isn't likely to happen(しかし中国が仕切るなどということは起こりそうにない)」と切り捨て、なぜこんな馬鹿げたアイディアをアジア人たちが大まじめに論じているかを分析している。新華経済の記事は論旨の半分しか伝えていないわけだが、思うに恩田記者は途中で読むのが面倒くさくなったのだろう。

Why a U.S.-China "G-2" Won't Work [The National Interest 2014/01/06]
http://nationalinterest.org/commentary/why-us-chinese-g-2-wont-work-9653

「中国がアジアを仕切る」、“新G2論”に世界が震撼―米メディア [XINHUA.JP 2014/01/08 08:44]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/370376/


中国原著記事の紹介

日本人がネコババしない理由

 2013年9月20日、中国の新浪新聞は、日本人が拾った財布をネコババしない理由を考察する記事を出した。ところがレコチャと新華経済は、この同じ記事を全く違うニュアンスで伝えた。読み比べてみると、両者の違いは「既铁面无私又不失人性化」の訳に最もよく現れていた。これを「公平無私で、人情味を備えた法律」と訳したレコチャのHA記者は、日本人がネコババしない理由は素養の高さに加え、遺失物を届け出るよう促す日本の法制度も優れているからだと肯定的なニュアンスで伝えた。ところがこれを「アメとムチの、容赦のない法律」と訳した新華経済の恩田有紀記者は、民度の高さだけではこのような行動は説明できず、日本人は無慈悲な法律に嫌々ながら従っているだけだと否定的なニュアンスで伝えた。中国語は苦手なので判断がつかず、日本語が堪能な中国人に読み比べてもらったところ、レコチャの方が原文のニュアンスをよく伝えているとのことだった。

日本人拾金不昧都是出于自觉吗 ? [新浪新闻 2012/09/20]
http://news.sina.com.cn/w/gc/2013-09-20/1124233.shtml

日本人はなぜ、拾ったものをネコババしないのか―中国メディア [Record China 2013/09/22 23:22]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=77048

滝クリスピーチに中国から異論、「日本人が財布を拾って届けるのは、厳しい法律のおかげだ」―中国メディア [XINHUA.JP 2012/09/23 07:34]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/360202/

信力建のブログ

 2014年2月16日から17日にかけて、レコチャの北田記者は信孚教育集団理事長で教育家の信力建氏のブログを紹介した。内容は日本の親は子どもを甘やかさず実践能力を重視すること、幼少時の清潔な環境が公共心を育てること、敬業精神が愛国心につながることなどである。原文を探してみたところ、2013年11月に発表された「今天我们要向日本学习什么」は2008年に書いた「中国应该向日本学习什么」に前文を付けて再掲したものらしい。

今天我们要向日本学习什么 [凤凰网博客 信力建 2013/11/18 09:08:29]
http://blog.ifeng.com/article/31121412.html

日本と中国の教育の違い=「道理は知っているが、その本質を理解していない」―中国ネット [Record China 2014/02/16 12:12]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=83478

訪日中国人が「恐怖」さえ感じた、日本人の精神に深く刻まれたもの―中国ネット [Record China 2014/2/17 07:39]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=83476

中国人はなぜ日本人の“清潔さ”をマネできないのか―中国ネット [Record China 2014/02/17 12:43]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=83477

 遡ってみると、2012年5月23日にレコチャの本郷記者が信力建氏の「我々と日本はどれほど離れているのか?」という文を紹介していたが、この内容は上の「今天我们要向日本学习什么」に含まれていた。さらにその前の2012年3月28日には、レコチャのKT記者が環球ブログのエントリーを紹介していたが、これも「今天我们要向日本学习什么」にある内容だった。何だか知らないが、2008年に発表されてからあちこちにコピペされて広まっているらしい。

<レコチャ広場>「私たちに“きれいな中国”は作れない」と、きれいな日本をみて思う [Record China 2012/03/28 12:00]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=59945

<中国人が見た日本>中国と日本はどれだけ離れているのか? [Record China 2012/05/23 12:02]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=61485

無名の親日ブログ

 2014年2月8日、新華経済の恩田有紀記者は、東方財富網の「日本見聞実録――これを読めば日本人のイメージが完全に変わる」という記事を紹介した。内容は「地下鉄で割り込み乗車するのは自分だけだった」「文句を言おうとしても先に謝られる」「信頼し合うことが大事だと床屋で諭された」「買った商品を簡単に返品させてくれる」というものだが、床屋のエピソード以外は2009年5月19日にレコチャのNN記者が紹介したブログに含まれていた。頑張って探せばもとのブログを突き止められるかも知れないが、面倒くさいのでやっていない。

<在日中国人のブログ>礼儀正しい日本の社会 [Record China 2009/05/19 17:07]
http://www.recordchina.co.jp/group/g31500.html

日本见闻实录:让你彻底改变对日本人的印象 [东方财富网 2014/02/07 10:07]
http://life.eastmoney.com/news/11001,2014020715790215.html

日本見聞実録、「これを読めば、日本人のイメージが完全に変わる」―中国メディア [XINHUA.JP 2014/02/08 18:40]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/economic_exchange/373097/

傳瑩女史?

 2014年5月30日、新華経済の小豆沢紀子記者は、傅瑩傳瑩と表記した。(伝)の繁体字だが、そんな姓はないと思われる。6月1日には新華経済の城山俊樹記者が「傅榮」と、今度は名前の方を間違えて表記した。検索するときに不便なので、いい加減にしてもらいたいものである。
 傅瑩はモンゴル族の外交官で、2013年3月に全人代代弁人として「
发达国家面临严峻的困难没听说要政改」と妄言を吐いて2013年度中国人渣排行榜29位に選ばれた。仮にも中国語のプロなら、これほどの有名人の名前ぐらい正しく表記してほしい。

安倍氏は間もなく中国の「鉄拳」を味わうことになる―中国メディア [XINHUA.JP 2014/05/30]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/economic_exchange/384288/

「中国脅威論をでっち上げ」シャングリラ会合での安倍首相演説前に、中国が“先制攻撃”―中国報道 [XINHUA.JP 2014/06/01]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/384385/

2013年度中国人渣排行榜!火热出炉! [博讯新闻网 2014/01/01]
http://www.boxun.com/news/gb/china/2014/01/201401010906.shtml#.U3LQ2k1ZrvU

中国人CAの苦悩

 2014年7月21日、新華経済の恩田有紀記者は、成田便に初めて搭乗したという中国人CAのブログを紹介した。しかしこのブログの「日本人特别有礼貌,日本航班特别有秩序,没有人按铃,没有人投诉」「日本街景美,日本人热情」の部分は、一ヵ月前の迪拜中華网の記事と一言一句変わらず、この記事を参考になりすましで書かれた疑いがある。
 ちなみにドバイ中華網の記事は、エミレーツ航空に勤務する中国人CAの手記で、日本人に比べ中国人乗客の素養がいかに低く、CAがいかに苦労を強いられるかを縷々訴えている。あまりにも面白かったので、中国人の協力を得て
全訳を試みた。

空姐说万人土豪团来迪拜包机EEK-A380见闻 [迪拜中华网 2014/04/09]
http://www.dibaichina.com/thread-169018-1-1.html

初次日本印象 [15210941843的博客 2014/05/13]
http://blog.sina.com.cn/s/blog_7c6bdc4b0101l70m.html

日本へのフライトはいいよ・・初めての東京便に乗務した中国人CAが実感した「その理由」ー中国ネット [XINHUA.JP 2014/07/21]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/economic_exchange/389584/

 全訳した後に気づいたが、これは4月11〜12日にサーチナの畠山栄記者とレコチャの内山記者が紹介したものと同じだった。畠山記者によると、4月11日ごろ中国内の微博で転載され拡散したらしい。

客室乗務員が語る、世界に称賛される日本人のマナー・・・「学ぶべき点は多い」=中国版ツイッター [サーチナ 2014-04-11 07:45]
http://news.searchina.net/id/1529532

中国人CAが見た日中の差、日本人に思わず嫉妬した瞬間とは?―中国ネット [Record China 2014/04/12]
http://www.recordchina.co.jp/a86416.html


中国男性のイタい妄想

日本女性は中国男性にメロメロ?

 2009年12月13日、レコチャの個人ブログ「21世紀中国ニュース」は、日本女性の間で中国人との結婚が激増していると千龍新聞網が伝えたと伝えた。内容はもてない中国男の気持ち悪い妄想が爆発したもので、最近の日本女性は横暴で偏狭で亭主関白で変態な日本男性を嫌い、強大で裕福な中国に憧れ、人格高潔で平等主義的な中国人男性との結婚を熱望しているというものだった。これを伝えた chinanews 氏は「本当に取材したのと疑いたくなるような内容」と評したが、「中国人男性が何をほめてもらいたがっているかがよくわかる」ことに資料価値を見出していた。しかしできればこの時点で、「去年日本女性与中国男子结婚的达一千五百多对,比头年增长百分之三十,创历史新高」の部分に突っ込みを入れてほしかった。

日本女性流行“吃饭吃中国餐 结婚找中国男” [千龙网 2009/12/08]
http://food.southcn.com/c/2009-12/08/content_6889950.htm

<レコチャ広場>日本の男は無能!?「中国の男」との結婚が日本人女性にブーム(1)[Record China 2009/12/13 08:59]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=37911

 そうこうするうちに、中国男性との結婚ブームなど存在しないと切り捨てる中国人ブロガーが現れた。レコチャのKT記者の訳によると、このブロガーは「中国人男性との結婚がブームとあるが、挙げられているデータは年たった1500組の結婚。記事では触れられていないが、日本人男性と中国女性の結婚のほうがよっぽど多いだろう」と指摘している。

“日本女喜嫁中国男”?春药与意淫! [许大立 2009/12/12]
http://blog.cqnews.net/?25602/viewspace-374598

<レコチャ広場>「日本人女性に中国人との結婚ブーム」?!「妄想」に大喜びする恥ずかしい人たち―中国 [Record China 2009/12/14 15:28]
http://news.livedoor.com/article/detail/4502805/

 この指摘は正しいが、どうせなら「日本人男性と中国女性の結婚のほうがよっぽど多いだろう」などと推測ですませるのではなく、人口動態統計で日本人夫=中国人妻の婚姻の方が10倍以上あることを示した方がよかった。さらに時系列データを示せば、「昨年の日本人女性と中国人男性の結婚は1500組で、前年比30%も増えた」というのが大ウソなのも明らかにできただろう。しかし国際結婚の統計が『人口動態統計年報』中巻に掲載されていることは、日本人でも知らない人が多いので、許大立氏にそこまで期待するのは無理だろう。


日本人と中国人の婚姻件数
年次 日本人夫=中国人妻 中国人夫=日本人妻
2000 9,884 878
2001 13,936 793
2002 10,750 814
2003 10,242 890
2004 11,915 1,104
2005 11,644 1,015
2006 12,131 1,084
2007 11,926 1,016
2008 12,218 1,005
2009 12,733 986
2010 10,162 910
『人口動態統計年報』各年版

 「日本女性は中国男性にメロメロ」という妄想はよほど中国人男性を喜ばせるのか、その後も繰り返し報道されている。いちいちこんな妄想に付き合わなくてもよさそうなものだが。

日本人女性と中国人男性の結婚が増加中?中国メディアが理由考察 [サーチナ 2010/10/29 20:26]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=1029&f=national_1029_184.shtml

「中国料理を食べ、中国男性に嫁ぐ」 日本人女性に流行? =中国 [サーチナ 2012/01/06 08:51]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0106&f=national_0106_025.shtml

なぜ日本人女性は争って中国人男性に嫁ぐのか? (1)=中国報道 [サーチナ 2013/01/25 16:19]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0125&f=national_0125_022.shtml

中国人男性は「モテ期」なのか?中国に嫁いだ日本人女性のスピーチが話題に―中国ネット [XINHUA.JP 2013/02/02 17:57]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140202-00000009-xinhua-cn

妄想の中の日本人妻

 中国人男性はとにかく日本女性と結婚したくてたまらないらしいが、それは日本女性がとてつもなく優しく従順で献身的で家庭的で……とイタい妄想を膨らませているためである。ついには「俺は日本女性と結婚したんだぜ」と言い張る中国男性の嫁(空気嫁か?)自慢がネット上に流布した。それによると嫁は結婚後もしばらく働いていたが、同僚からの白眼視に耐えられず退職し、晴れて専業主婦に「昇格」した。夫は中国式の両性平等主義に従い、結婚後もせっせと料理を作っていたが、嫁は「これでは専業主婦になった甲斐がない」と泣き出してしまった。
 筆者が知る限り、この文書を最初に紹介したのはレコチャのKT記者だが、「あまりにもステレオタイプな描写だけに作り話のようにも思える」と評していた。レコチャではなぜかその後も繰り返しこの文書を紹介しているが、本郷記者と内山記者は疑っていないようである。あまりにしばしば紹介されるので環球軍事网に掲載された記事を読んでみたが、多くのエロ画像を含むかなりの長文だった。この記事は三節から成り、第一節は上で述べた日本人嫁の自慢、第二節は日本女性と中国女性の比較、第三節は中国人に嫁ぐ花嫁の父の苦悩を描いたものだった。第一節と第二節は2014年2月15日の内山記者の記事で紹介されている。2014年2月4日付の恩田記者の記事は第二節の内容のみ紹介しているが、いずれも環球軍事网にある「日本女性は性愛に開放的」という部分が省略されている。
 第三節は紹介されたことがないらしいので簡単に要約すると、日本の大企業の重役の娘が北京に留学し、農村出身の苦学生の青年と恋仲になった。帰国した彼女を追いかけて来日した彼氏は、日本の大学を出て日本企業に就職した。彼女は親の反対を押し切り、家族に無断で結婚届を出してしまった。父親は「三代続く名家に外国人の血を入れてはご先祖に申し訳が立たない」「親戚にも顔向けできない」と嘆いたが、愛を貫こうとする娘の決断を受け入れざるを得なかった。いまどきこんな露骨な差別意識を外国人に吐露する父親がいるのか疑問だが、嫁自慢よりはまだリアリティがある。
 環球軍事网の記事の最後には「2007年に中国人男性と結婚した日本人女性は1,016人で、年率15%の増加率を示した」と、正しい人数と間違った増加率が記されている。したがってもとになった文書は2008〜09年頃に書かれたと思われるが、誰も統計を更新する気はないらしい。

日本人女性は“優しすぎ”て困る?結婚生活がツラい!―中国 [Record China 2009/10/6 12:59]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=35949

日本人女性を妻にすると幸せか?中国人男性が本音を語る―台湾メディア [Record China 2013/1/21 21:00]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=68667

夢は日本人女性との結婚!? 中国人男性の最も幸福な生活とは [XINHUA.JP 2014/2/4 07:35]
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/332017/

男にとって日本女性は「理想の妻」、中国人男性が驚愕した良妻賢母ぶりとは―在日中国人 [Record China 2014/2/15 07:00]
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=83367

中国男人娶了日本女人后欢呼:很幸福太棒了 [环球军事网 2013/08/19 15:10]
http://www.armystar.com/fun/2013-08-19_10860.html


日本専門家人名録

 中国発の記事を読んでいると、日本問題についてよくコメントや寄稿する人がいることに気づく。そこで、中国の新聞でよく見る人物についてまとめてみた。経歴は百度百科や維基百科によった。

高洪(高洪) 中国社会科学院日本研究所副所長
 1955年遼寧省瀋陽市生まれ。日本近現代政治史を専攻。1993年中国社会科学院研究生院で哲学博士号取得。著書に『日本当代仏教与政治』など。環球時報の記事(2013年12月13日)で安倍晋三首相を「島国根性にあふれている」と批判。東南アジアが反日的でないのが気に入らないらしく、人民日報(2014年1月4日)の取材に対し「見利忘義という言葉はフィリピンのような国に対しては少しも言い過ぎでない」と非難した。

蒋丰(蒋豊) 日本新華僑報取締役編集長
 1959年北京市生まれ。北京師範大学歴史学系卒。1988年に来日し、以後日本に滞在。1994年九州大学大学院文学修士。1999年から『日本新華僑報』編集長をつとめる。2009年以降サーチナやレコチャでブログが紹介され、その後は日本新華僑報や環球時報の署名記事も取り上げられるようになり、
YAHOO!JAPANに頻繁に登場している。蒋豊編集長は中国女性が日本男性と結婚することが気に入らないらしく、日本の男は変態だとか(2010年4月)、DV男ばかりだとか(2012年3月)、盛んにネガティヴ・キャンペーンを張っていた。また日本は男尊女卑の国だという思い込みが強く、日本の大学はセクハラ天国だとか(2010年3月)、男尊女卑の企業文化を嫌った日本女性が中国に大挙して渡っているとか(2012年1月)、日本の専業主婦はどんどん「絶望主婦」になっていくとか(2012年4月)書いた。日本人の麻薬密輸犯が中国で死刑になったこと(2010年4月)に対しては、日本人に感謝されこそすれ非難されるいわれはないと叱咤した。知的所有権の概念が確立される前に日本が外来文物を輸入したことを「パクリ」だと強弁し、屁理屈を以て現代中国のパクリを正当化した(2010年5月)。中国人実習生の陳双喜が広島県で殺人を犯したこと(2013年3月)に対しては、陳容疑者を虐待しバカ呼ばわりしたのが悪いと、殺された日本人被害者らを罵倒した。環球時報への寄稿記事(2013年6月)では、蒼井そらと滝澤ローラが小学生に対する強姦事件を起こした中国の校長や教師に向かって「小学生は許してあげて、私とホテルに行こう」と呼びかけたことを「非道徳的な営業活動」だと非難した。

刘江永(劉江永) 清華大学当代国際関係研究院副院長
 北京外国語大学日語専業卒。早稲田大学大学院博士課程中退。東アジアを中心とする国際関係が専門。中国現代国際関係研究所研究員、東亜研究室主任、中央外弁参賛、中日友好協会理事、中国外交学会理事などを歴任し、2002年から精華大学教授。尖閣問題の専門家だが、あまり感情的な反日発言はしない。2010年10月の中国漁船拘束事件の時には、「これにより、中国側は強行的な外交対応に出るしかない。なぜなら、それ以外のいかなる行動も、日本が主張する釣魚島所有権への黙認と見なされてしまうからである」と分析していた。環球時報(2013年5月30日)の取材に対し、「日本は世界3番目の経済大国であり、経済力と海外での影響力を含む世界での能力を甘く見てはいけない」と忠告した。人民日報(2013年7月14日)の取材に対し、「日本が政治的決断さえすれば、速やかに核兵器大国になれる」と述べた。人民日報(2014年7月2日)への寄稿文では、安倍政権の軍備増強の意図は日本国内での反対により失敗に終わるだろうとした。

刘军红(劉軍紅) 中国現代国際関系研究院日本研究所研究員
 1962年遼寧省瀋陽市生まれ。法学博士。専門は日本経済、日中経済関係。早稲田大学アジア太平洋研究センター客員研究員、日本アジアフォーラム客員研究員の経歴あり。環球時報(2010年9月19日)のインタビューに対し、日本からの環境保護技術の導入を拒否すれば、中国にも痛手だが日本の損失はさらに大きいと、はた迷惑な捨身戦術を提言した。また環球時報(2013年12月11日)の取材に対し、「日本は衰退の一途をたどっており戦争を起こす余力はない」と答えた。人民日報(2014年5月9日)への寄稿では、「日本外交はすでに収拾のつかない状態に追い込まれた」と診断した。

吕耀东(呂耀東) 中国社会科学院日本研究所外交研究室主任
 1988年山西師範大学政法系卒。2002年北京大学法学博士(国際関係学)。専門は現代日本政治。2010年10月、中国の若者が日本のODAについて知らないという調査結果に対し、「なぜ必ず若者すべてに認知させなければならないのか。ODAはそれ自身、戦略的目的を持っているものだ」と述べた。人民日報(2014年4月22日)への寄稿では、歴史修正主義や靖国参拝を「皇国史観」台頭の現れだと警鐘を鳴らした。

罗援(羅援) 軍事科学院世界軍事研究部副部長
 1950年代に四川省広元市に生まれる。父は共産党調査部長などをつとめた羅青長。軍事科学院に勤務し、『中国人民解放軍戦史』『中国人民志願軍戦史』などを執筆して少将の肩書を得る。環球時報などに強硬な反日論説を書きまくっている。2013年度中国人渣排行榜10位。

马立诚(馬立誠) 政治評論家、元人民日報編集主幹
 1946年生まれ。中国青年報評論部副主任、人民日報評論文主任、鳳凰衛視評論員などを歴任。その間、東京大学、シンガポール国立大学、北海道大学などに滞在した。著書に『交鋒三十年』『戦略和管理』『大突破』『歴史的拐点』『当代中国八種社会思潮』など。特に改革開放後の路線対立を扱った『交鋒三十年』(1998)は、200万部を売るベストセラーとなった。『戦略与管理』(2002年第6期)に発表した「対日関係新思惟」では、中国内の民族主義の高潮を批判して「漢奸」と非難された。共識网(2014年4月14日)への寄稿文では、ヨーロッパの中国大使の日本非難や中国内での抗日ドラマ乱造を批判し、中国の民族主義の暴走を憂慮した。東京での講演会(2014年7月16日)では、日中とも民族主義の抑制が必要だとしながら、「日本の方が秩序があり、多元的でナショナリズムを抑制する要素が多い」「中国は環境問題やソフトパワーで日本に学ばねばならない」などと述べた。

唐淳风(唐淳風) 中国商務部国際貿易経済協力研究院研究員
 1953年湖南省瀏陽市生まれ。1999〜2002年に駐日大使館経済参賛をつとめた。対日問題に関するタカ派の代表として知られる。しかし単に日本を見下すのではなく、環球時報(2011年8月30日)への寄稿文で「日本は国内の1.8倍の資産を海外に持っている」とし、「失われた20年」は幻想に過ぎないとした。尖閣問題に関する論調はやたら反日的で、環球時報(2012年8月12日)への寄稿では、世界中の華僑や中国人を動員しての日本大使館・総領事館への抗議運動を呼びかけた。香港フェニックステレビの討論番組(2013年1月)では、「われわれの選択は、安倍の妄言につきあわずに、軍備増強あるのみだ」と檄を飛ばした。環球時報(2013年10月10日)の取材に対し、「日本の世論は幼稚で無知だ」と侮蔑した。

信力建(信力建) 信孚教育集団理事長
 1956年広東省広州市生まれ。中山大学中文系卒。英国留学後、1989年に信孚学校を創設して以来、全国的に信孚教育集団を拡大している。2008年に自身のブログに「中国応該向日本学習什麼」という文章を上げ、日本人のしつけと教育、清潔さ、素行の良さを賞賛した。2012年6月には、日本の満州国経営を賛美し日本軍の南京侵攻を擁護するような発言を微博でつぶやいてバッシングされた。2014年4月のブログ記事では、日本の中国研究の緻密さに比べ「中国はまだ日本を幻想の中で捉えている」と嘆いた。

徐静波(徐静波) コラムニスト
 1961年浙江省生まれ。1992年に東海大学大学院への留学以来、主に日本に滞在。日中の経済・貿易に詳しい。2001年に日本で中国経済新聞を創刊。著書に『株式会社中華人民共和国』『日本経済の行方』など。BWCHINESE中文网(2013年12月4日)への寄稿では、バイデン副大統領が海江田民主党代表に向かって習近平を気遣う発言をしたという噂を取り上げ、「安倍首相がこの発言を聞いたらその場で卒倒するだろう」と書いた。一方、新浪网(2014年1月12日)への寄稿では、「中国人はいまだに日本を恐れている」「日本人が日本人としての尊厳を持つのは理にかなう主張だ」と親日的なニュアンスを出しており、スタンスがよくわからない人である。

阎学通(閻学通) 清華大学当代国際研究院院長
 1952年天津生まれ。文革で黒龍江建設兵団に送られ、1982年に黒龍江大学語学系を卒業。1982〜2000年に中国現代国際関係研究所に在籍しながら、1986年に同学院の政治学修士号を得る。1992年にはカリフォルニア大学バークリー校で政治学博士号を取得。著書に『中国国家利益分析』『美国覇権与中国安全』『国際政治与中国』『
Ancient Chinese Thought, Modern Chinese Power』『歴史的慣性』など。米国の覇権を「覇道」と批判し、中国は「王道」を目指すべしと浮世離れした主張を展開している。日本専門家ではないが、近著『歴史的慣性』の中で「日本は二流国に転落し、中国が世界に君臨する」と主張したため、反日民族主義者らが大喜びで引用している。

周永生(周永生) 中国外交学院教授
 1963年生まれ。吉林大学日本研究所修士、外交学院法学博士。早稲田大学に滞在。専門は日本の外交・経済。著書に『経済外交』『戦後日本外交』など。環球時報(2010年10月15日)への寄稿「落ち着きのない日本が真の大国になれるわけがない」では、米国に頼りきりの日本が国際社会で尊敬されるはずがないと主張した。斉魯晩報(2012年10月29日)のインタビューでは、「日本製品ボイコットをやめてしまうと、中国人は気概がないと外国人にあなどられる」と、ボイコットの継続を主張した。中国青年報(2014年7月17日)の取材に対し、日本企業がインドや東南アジアに投資してもうまく行かないとの見通しを述べた。このように反日的な言説に駆り出されることが多いが、環球時報(2014年7月26日)への寄稿では、日清戦争開戦記念日に日本人の麻薬密売人が死刑に処されたことを「政治化してはならない」と、なぜか火消し役に回った。



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