聖闘士星矢 冥王ハーデス冥界編 前章 1
聖闘士星矢 冥王ハーデス冥界編 前章 2
聖闘士星矢 冥王ハーデス冥界編 前章 3
「聖闘士星矢」は週間少年ジャンプで連載された車田正美氏の漫画を元にアニメで大ブレークした作品。
近年アニメ版が復活を遂げて人気が再燃し、グッズの売り上げも良く、劇場版・天界篇序章が公開されるなど
底力を見せました。自分もその復活を心から喜びました。
今回の冥界篇も前作「冥王ハーデス十二宮篇」に続いて、自分も含め、多くの方にリリースを望まれていました。
ある発表を見るまでは・・・
ここでは多くを語りませんが、今回の冥界篇では数多くの変更点がありました。それに則して、レビューしていきたいと思います。
この冥界篇が発売される前にファンに大きな衝撃を与えたのは、これです。
アニメ星矢の人気を支えてきたベテランから若手へ声優を変更するというアナウンスが流れました。
・ペガサス星矢:古谷徹→森田成一
・ドラゴン紫龍:鈴置洋孝→櫻井孝宏
・キグナス氷河:橋本晃一→三浦祥朗
・アンドロメダ瞬:堀川りょう→粕谷雄太
・フェニックス一輝:堀秀行→小西克幸
・アテナ城戸沙織:潘恵子→折笠富美子
一部を除けば若手の中で実力のあるところ、人気どころを入れてきたなという感じですが、声優変更の理由を
知る術は当時なく、その発表を待ち望んでいました。
声優変更について反対運動が起こったための対策と思われますが、なぜか原作者サイドからその理由についての釈明がありました。
しかし原作者である車田氏のサイトでその代理人が書いたという文章を通して語られた理由は、あまりにも驚愕かつ残酷なものでした。
その内容については詳しくは語りませんが、担当していた声優の加齢がひどく、その若返りを図ったということです。
しかも文章内に担当声優への中傷に近い部分もあり、当然多くのファンの批判対象になりました。
結局は火に油を注ぐ形となり、車田氏に対する信用を失い、ファンを辞めた方も多くいらっしゃったようです。
そこまでして強行した今回の冥界篇の出来は果たしてどうでしょうか?
全体的に言うと、違和感は拭えません。
各キャラごとのイメージは以下の通り。
星矢:熱い感じのセリフはそれほど気にならないが、抑えた演技が薄く、繊細さ・やさしさがない。
紫龍:熱さと冷静さの融合がうまくいってません。氷河と勘違いしそうな場面もあり。
氷河:比較的橋本さんの演技に近いですが、技を叫ぶところが様になってません。
瞬:女性のような高い声と軟弱さだけで、秘めた意思の強さやハーデス時の威厳が皆無。
一輝:安定してますがクールすぎる感じ。セリフが少ないのでなんとも・・・
沙織:ほとんどセリフなし。ただかわいい女の子で女神としての威厳は全くなし。
やはり若手では、表面上はうまくできていたとしても、熱さとスピード感、そして奥深い心や威厳という星矢節は表現できていません。
薄い・冷たいという面が目立つ今風に仕上がっています。
アニメ星矢を支えた柱の要ともいえるのは、荒木伸吾&姫野美智の両氏が描く美しくもカッコイイ作画であるということに
異論を唱える方はそれほど多くないと思います。
若干ハーデス十二宮篇や天界篇序奏では崩れたところもありましたが、総じてレベルは高いものでした。しかし今回は
恐ろしいほどに作画レベルが低下しています。ところどころレベルの高いものは入るものの、そうでないものが大半を占め
ており、雰囲気としては荒木&姫野絵の同人レベルといったところです。デッサンは崩れるは、色の塗りは雑で・・・という
信じられないものになってしまっています。その原因は両氏が作画監督を一話も務めていないことが挙げられます。
レイアウトなどは荒木氏が行っていますが、大半の作画は外注のようで、総作画監督も名前だけのようです。ところどころ
レベルが高いものは荒木プロが修正したものなのかもしれません。
そして動画部分ですが、これがまた恐ろしいまでにレベルが落ちてしまっています。
これはデジタル化の弊害ともいえますが、それにしても動きがあまりにもありません。
カット割やコマ数が少なく、スピード感も迫力もない。必殺技のシーンも光の演出だけはこれでもかというように
使ってますが、かなりワンパターンでつまらなく、迫力不足というハーデス十二宮篇と天界篇序奏でも感じたものが
さらに悪化したようです。またカットや動画の使いまわしも目に付きすぎる感じです。
今回の方向性変更が荒木&姫野両氏に影響したのか、時間や資金などの問題でそれほど大きく関われなかったのかは
不明ですが、作画と動画に関しては非常に残念な結果になっています。
アニメ星矢をい支える3巨頭といえば、「声優」「作画」「音楽」といえます。
これまで前2つについては言及してきましたが、残りの音楽も残念ながら褒められたものではありません。
従来と同様に担当は横山菁児氏。
ですが劇中に流れるのはハーデス十二宮篇同様に過去のものが主で、時々新曲が入るという感じです。
特に新曲が目立つところはオルフェとファラオの対決場面ですが、両方の曲の完成度が???なため
全く盛り上がらずに終了してしまっています。
曲自体も盛り上がりに欠け、キレイな旋律ですが特徴がありません。
以前のストリンガーレクイエムは非常に名曲ですが、その新曲の後に入ったためにその完成度の低さが
目立つことになる演出も足を引っ張った格好です。
天界篇でも従来のものと比べるとややインパクトに欠ける印象はありましたが、それでも透明感や神々しさの表現は「さすが」
と思わせるものがありました。ですが今回の新録は自分の場合耳に全く残りませんでした。
今回はどうやら原作者の車田氏が口を出している面が強いせいか、アニメ本編や前作のような原作が外れた部分がほとんどありません。
原作に忠実すぎるくらいです。
まあアニメ本編のオリジナルやハーデス十二宮篇および天界篇序奏の脚本も褒められない部分も多いのですが、原作そのままというのは評価できません。
この冥界篇は原作自体のテンションが落ちていて面白みも少なかったのが明らかなだけに、それをアニメでテコ入れすべきであるのに
それをしていないのでは・・・アニメ化した意義が薄いのではないかと。
さらに演出も同じ一枚絵を何度も見せたり、顔のUPが多用され、アングルがあまりにも同じであったり・・・絵の使い方がまず安っぽいです。
さらにただでさえ迫力が不足しやすいデジタル作画をそのままどちらというとあまりその点の演出がうまくない山内監督の手法を取り入れている感じです。
まるで下手な星矢の同人アニメを見せられたような感覚にも陥るほどです。
また設定的に無理と思われる教皇と成人した黄金聖闘士が一堂に介してオルフェの琴を聴いたという原作にない余計な要素をつける始末。
そして一輝とアイアコスの戦闘中で「これからも若者は戦い続ける〜」というナレーションの後に、星矢の姉・星華とそれを見つめる魔鈴を少し映しただけ
の最後という演出意図がさっぱり見えない終わり方をします。なんというかあまりにもフォローできない稚拙さが目立ちすぎます。
よく比較対象にされるのが、ドラえもん。
あれだけ長期に渡って演じてきた声優陣を一新したことで大きな話題となりましたが、その際には作画関連も変更しており、
より原作に近づけようというスタッフや声優陣の努力や工夫が見られます。それゆえに最初は星矢同様に拒否反応が大きかったにも関わらず、
それなりに新しいドラえもんとして受け入れられつつあるようです。
しかし今回の星矢の件は上記のような努力も工夫も見られず、むしろ悪い方向に行ってしまったのは非常に残念でなりません。
従来DVDの販売はバンダイビジュアルが行ってきましたが、エイベックスに今回は変更になっており、売上は大方の予想通り、前作とは比較にならないほど低いようです。
レンタルで充分かな?と思ってしまいますが、残念ながらレンタル店にも入っていないケースが多いようです。
前章とありますので後章もあるのでしょうが・・・現状のままでは正直購入する価値があるのか、続ける意味があるのかは自分にはわかりません。
あまりにもドタバタとしすぎていて、思い入れの強いファンほど純粋に観ることができない作品と言えそうです。
今までのレビューはある程度悪いところが多くても、いいところは必ずフォローして来ましたが、今回はちょっと無理でした。
個人的に星矢ファンおすすめアイテムをピックアップ!
・聖闘士星矢コーナー:当サイトのコンテンツです。