■孤独の代償(6)■


 ホテルの部屋に入ると、ビバリがゆっくりとレオンを抱きしめた。
 決して嫌いになったわけでもなく、まして憎んでなどいない。今まで語った言葉に、一つも偽りはない。
 ただもう、無理なのだ。
 ビバリの腕の中で、レオンは思った。
──もういっそ、壊してしまいたい。堕ちるところまで堕として、二度と笑えないようにして──
 そんなこと、僕は望んでいない。レオンは自分にそう、言い聞かせた。
 ビバリがレオンをベッドに押し倒した。
 哀しそうに、それでも優しく笑う男の顔をレオンは見上げた。
 この体勢でビバリの顔を見るのは、本当に久しぶりだ。初めのころ、おそらく二、三回だけだっただろう。その後は、たいてい、レオンが上に乗っていた。ビバリを拘束し、時には射精を許さないまま、自分の欲望だけを貪った。
 後悔はしていない。でも、ビバリはそんな自分を許しながら、本当は何を望んでいたのだろうか。
 ビバリの手が、優しくレオンのシャツを脱がせていく。レオンの中に、初めてビバリと寝た時の記憶がよみがえる。あの時のビバリは優しくて優しくて──
 レオンはビバリを見つめた。もうこれで最後なら、せめてあの時みたいに──レオンは苦笑した。
 駄目だ。そんなことをしたら、ビバリの望みが叶ってしまう。決心が鈍る。自分は傷つけるだけの存在のままでいなくてはならない。
 感情を押し殺し、レオンは身体を入れ替えた。酷い顔で笑い、ビバリの上に跨る。
「レオン……」
 ビバリの哀しそうな、何かを諦めたような声を無視し、レオンはベルトを引き抜いた。ビバリの手を頭の上で縛り、下を脱がせる。
 レオンは細身のディルドを取り出した。たっぷりとローションを振りかける。滴った液体が腹に飛び散る。
 ビバリの顔が、怯えて歪む。今まで何度もしてきたことだ。
 レオンはビバリの前に触れた。僅かに熱を帯びているが、十分な硬さはない。レオンはディルドをビバリの後ろにあてがい、ゆっくりと差し入れた。
「……っ」
 ビバリが唇を噛みしめる。内側の感じる場所を人工物で擦られ、ビバリのものが硬さを増す。
 冷酷に笑い、レオンはビバリの腰に跨った。そのまま一気に、自分の腰を落とす。

「あ……ん……っ」
 ただただ自分の快感だけを追い、腰を振る。自分の下で、ビバリが苦しそうに、それでも甘い息を漏らす。
 やがてビバリが呻き声をあげ、ぶるりと震えた。熱い液体を、レオンは身体の奥深くに受け止めた。
 
 
 
 ベッドの上で、男が気を失っている。
 何度放出させたか、もう覚えてはいない。その全てをレオンは、口と体内で受け止めた。
 衣服を隙なく整え、レオンはベッドに腰掛けた。
 男の乱れた前髪をそっとかきあげ、憔悴した顔を眺める。
 この先、君はきっとまた誰かを愛するだろう。
 その相手はどうか、君を大事にする人であってほしい。君を無邪気に笑わせる人であってほしい。
 僕が壊すのを我慢したんだ。君を僕の手で壊さなかったことを、後悔させないでくれ。 
 レオンはそっとビバリに口づけ、部屋を後にした。
 
 
 
END


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 というわけで、ビバレオの過去話です。
 大丈夫でしたでしょうか?(苦笑)
 なんかもう、自分でもどこをどうツッコんでいいんだか分かりません…。

 なんで攻受がこうなったかというと、原作を見ていてものすごーく単純に、
 「ビバリ=B=攻」
 「レオン=L=受」
 だと思っていたのですよ。
 で、後々、皆様の作品を読んでびっくり。
 
 逆だったのか……!!!
 
 でも今さら自分の妄想を変えることもできず、茨道覚悟で書いちゃいました。
 レオンのイメージは、T/H/E A/L/F/E/Eの「孤/独/の/美/学」です。
 夢見てますねー、はい、自分でも分かってますよ〜。
 
 レオンはドSで受なので、少し女王様をイメージしてみました。
 本物の女王様はMの身体に痕をつけるのもつけないのも自在らしいのですが、
 レオンは傷つけずにはいられない、不器用な女王様です(笑)
 
 
 原作本筋とは関係ないですが、ビバリさんもレオンもルイも、相当仕事はできるはずなんですよね。
 ビバリさんも、海外転勤は当然経験してるはずだし。
 ビバリさんが原作ではぜんぜん仕事してないので(笑)、ちょっと「デキる男」風に描写してみました。
 それにしては、ちょっとしゃべり方がアホっぽいですが……。
 この後、年月と経験を経て、仕事と恋人の両方を手に入れる力をつけて、そうして今のビバリさんになった、ってことで。



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