■孤独の代償(3)■
バーを出て、レオンはホテルに向かった。ビバリが何も言わず、あとをついてくる。拒否の言葉はないが、受諾の言葉もない。
キーを開け、部屋に入る。ビバリが後に続く。
レオンは鞄を椅子に投げ、上着を脱いだ。ビバリは入口近くに立ったまま動かない。
──さて、どうしようか──
ここまで来て、何もせずにビバリを帰すつもりは更々ない。だが、ビバリがその気にならないことには、最終的には何もできない。もしかしたら酔いがさめて、つまらない言い訳を始めるかもしれない。
──まあ、いざとなったら縛って舐めて勃たせて、か──
視界の端にベッドを確認し、レオンは精一杯のいやらしい目つきでビバリを見た。まだどこか呆然としているビバリと、目が合う。目線をあわせたまま、レオンはゆっくりと自分のネクタイを緩めた。
次の瞬間、ビバリが動いた。レオンの肩を掴み、その身体を腕の中に引き寄せる。
「……っ……」
肉厚な唇が、レオンの薄い唇を塞ぐ。きついアルコールの匂いが鼻につく。そのままレオンは、ベッドに押し倒された。ビバリが馬乗りになる。
レオンは男を見上げた。荒い息を吐く唇、熱に潤んだ瞳、乱れた前髪。自分を見下ろすビバリの顔は、雄の情欲に濡れていた。
──完璧、だ──
その顔に思わず見とれながら、レオンはビバリのネクタイを解いた。
「聖沢……」
熱い吐息の唇を、レオンは指で抑えた。
「レオン、だ。 ……ビバリ」
「……レオン」
素直に名前を呼ぶその唇に、レオンは自分の唇を重ねた。
お互いの服を剥ぎ取り、肩口に顔を埋める。舌を絡ませながら、熱くなった下半身を擦り付ける。お互いにお互いのものを握り、ぬるぬると刺激しあう。レオンの手の中で、ビバリのものが熱く硬くなっていく。レオン自身のものも同じだ。
「ちょっと待て」
弾けそうになるのを堪え、レオンはビバリを制した。
身体を起し、ローションを手に取る。ビバリの方をちらりと見ながら、レオンはぬめった液体を指に絡め、自分の後ろにまわした。その手をビバリが掴む。
「……なに?」
「俺にやらせて。やり方、教えてよ」
ビバリの顔に、欲情した好奇心が浮かんでいる。
──そうくると思ったよ──
予想通りの反応に、レオンは心のなかでひっそり笑った。
ビバリの指が、レオンのそこに触れる。教えられたとおり、ゆっくりとやさしく、熱いそこをほぐしていく。
「これで大丈夫か?」
時折ビバリが、心配そうにレオンに尋ねる。
そのたびにレオンは、声で、吐息で、中の締め付けで、ビバリに答えた。
レオンが思っていた以上に、ビバリは優しかった。
「……もう、いい……」
自分のそこが十分にほぐれたのを確認し、レオンは一度、身体を離した。ビバリのものをちらりと見る。
それは硬く立ち上ったままだった。白い肌の印象そのままに、比較的淡い色のそれが、先走りの液で濡れている。
レオンの喉が鳴る。
──このまま上に跨って、根元をおさえてイかせないまま腰を振って──そうしたらいったい、ビバリの顔はどんなふうに歪むのだろう──
自分の内側に湧き上がる欲望を抑え、レオンは俯せになった。女しか知らないビバリが萎えないよう、胸と股間が見えない体勢を選ぶ。
その身体をビバリが強引にひっくり返した。両腕をつかみ、仰向けにベッドに押し付ける。
「顔が見えないだろ」
「……その代り、見たくないものも見える」
「見たくないものなんてあるかよ」
獣のように荒い息を吐きながら、ビバリがレオンの足を抱え上げた。
ゆっくりと、正面から侵入してくる熱い感覚に、レオンの身体は震えた。
こんなに優しく抱かれたのは──本当に、久しぶりだった。
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