■秘密結社への誘い(8)■
一本、二本と指を増やしていき、ようやく三本目の指が岩瀬の中に納まる。
ローションでたっぷりと潤してはいるが、岩瀬の鍛え抜かれた筋肉はどうしても、石川の指を押し戻そうとしてしまう。
「……岩瀬、どうだ?」
「どうって言われても……すみません、入っているのは分かるんですが、それ以外は……」
「痛くないか?」
「大丈夫です」
苦笑しながら岩瀬は答える。その余裕が石川には面白くないのだろう。何とか岩瀬の感じる部分を探り当てようと、そろそろと指を蠢かせている。
──悠さんなら、三本目を入れる頃にはもう溶けきっちゃってるもんなあ──
思わずその時の石川の様子を思い出し、岩瀬の雄がピクリと反応する。
「岩瀬?」
「いえ、えっと、もう大丈夫だと思うんで……」
「でも、まだすごくキツイ……」
不安そうな石川を安心させるように、岩瀬は優しく笑った。石川の手を取って引き抜かせ、抱き寄せて耳元で囁く。
「早く悠さんを感じたいんです」
立場は逆なのにいつもどおりの言葉を囁かれ、石川は思わず赤くなった。
「馬鹿……っ」
照れ隠しに悪態をつき、石川は恐る恐る岩瀬の入り口に自分を押し当てた。そのままゆっくりと腰を進める。
「……っ」
「痛っ……!」
苦痛の声を漏らしたのは石川の方だった。
「悠さん!?」
「岩……瀬……もうちょっと緩めて……」
そう言われても、岩瀬にも緩め方など分からない。
「悠さん、痛いなら無理しないで……」
「嫌だ……っ」
苦痛の表情を浮かべながらも、石川はやめようとはしない。その熱い吐息に苦痛以外のものが混じっていることに気づき、岩瀬もどうにか身体を緩めようと試みる。
やがて、石川のものが全て収まり、岩瀬は大きく息をついた。
石川は岩瀬の上で、息を詰めたままじっとしている。
「悠さん? 大丈夫ですか?」
「……熱い……」
「え?」
石川は瞳に快感を浮かべ、熱に浮かされたように呟いた。
「お前の中が……こんなに熱くて……気持ちいいなんて……知らなかった……」
その扇情的な声に岩瀬の心臓がドクンと音を立てる。雄が無意識に反応し、連動した筋肉が石川を刺激した。
「あ……っ」
石川の口から、喘ぎが漏れる。
「すみません! 大丈夫ですか?」
「……平気……」
石川は快感に潤んだ瞳で、岩瀬に問いかけた。
「岩瀬……お前は?」
「悠さんも熱いですよ。それに、今の悠さん、すごくいやらしい……」
岩瀬は石川の頭に手を伸ばして強引に引き寄せ、口付けた。
「悠さん、動いてみせてください」
「え、でも……」
岩瀬が中で感じてはいないことは石川にも分かっている。自分だけが勝手に欲情しているようで、石川は急に気恥ずかしさを感じた。
そんな気持ちを和らげるように、岩瀬は優しく石川の頬を撫でた。
「いいんです、感じてる悠さんが見たいから。悠さんが気持ちいいように、好きに動いてください」
暫くの戸惑いの後、石川はゆっくりと腰を動かし始めた。自分の感じる部分を岩瀬の内側に擦りつける。
「……っ……は……」
動くたびに、熱い粘膜が石川を包み込む。
石川の口から喘ぎが溢れる。自ら快感を追い求める淫らな姿に、岩瀬も煽られていく。逆の行為をしているはずなのに、自分の上で快楽を貪る石川の姿はまるで──騎乗位で自らを慰めているかのようだ。
やがて、石川の表情の表情に切なげなものが混じり始める。
──悠さんの、イク顔を見せて──
普段はあまりじっくりと見ることのない光景を期待して、岩瀬の雄も熱くなる。
不意に石川が岩瀬の雄を握りこんだ。自分の動きに合わせるように、幹から括れへと指を滑らせる。
「悠さん!?」
「一人……で……は嫌だ……一緒……に……」
「……っ」
予想外の刺激に、岩瀬の雄はあっという間に硬くなる。
「あ……んっ……岩瀬……っ……もう……」
「……っ! 悠さん……っ」
石川の手の中で岩瀬の雄が弾ける。一瞬遅れて石川の動きが止まり、岩瀬の上に崩れ落ちた。岩瀬の中のものがずるりと抜け落ちる。
「悠さん……? 大丈夫ですか?」
「お前こそ……大丈夫……だったか?」
「俺は全然、平気ですよ」
「……お前、本当に頑丈だな……」
呆れたような顔で石川は岩瀬を見る。しばらく顔を見合わせた後、二人は同時にくすりと笑った。
「こういうのも、新鮮でいいですね。積極的な悠さん、すごく可愛かったなあ」
「何言ってんだ! 基寿!」
「あれ、そういえば名前……」
岩瀬の言葉に、石川は一瞬動きを止め、急に真っ赤になった。がばっと毛布を被り、岩瀬に背を向ける。
「悠さん、どうして今日は名前を呼んでくれなかったんですか?」
「……」
「ねえ、悠さんってば」
「……から」
「え?」
「名前で呼んだら、いつもと同じになりそうだったから……」
毛布を被ったまま、石川は小さな声で答える。
石川の言葉に、岩瀬はショックを受けた。
──俺って、信用されてなかった……?──
石川のためなら何でもすると言った言葉に偽りなどないのに。
岩瀬は努めて冷静に尋ねた。
「いつもみたいに俺が襲っちゃうって思ったんですか?」
「そうじゃなくって……俺の方が……」
「……え?」
「俺の方が、いつもみたいにして欲しくなりそうだったから……って、うわっ!」
岩瀬は石川の毛布を剥ぎ取り、仰向けにベッドに押し倒した。
「基寿!?」
「そんな可愛いこと言われたら、俺、止まりませんよ!?」
岩瀬の眼差しは恐ろしいほど真剣で、先ほどまでの余裕は全くない。石川は柔らかく笑うと、岩瀬の首に腕をまわした。
「うん、いつもみたいに……して……基寿」
その後、秘密結社DTのテロ行為はピタリと止んだ。
彼らがいったいどうやって「石川童貞卒業」の情報を得たのか、それは謎のままである。
END
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【あとがき(隆沢春生)】
ゴロクさんとGD話をしていた時、何気なく出た言葉。
『石川さんって、絶対に童貞だよね〜』
これが、この話の始まりでした。
最初はゴロクさんのDTネタ漫画だったのに、あまりにもステキ☆なので私が勝手に続きを書いちゃいました(笑)
メインテーマは「石川さん童貞卒業」です。
裏テーマは「岩瀬さん処女喪失!?」なのですが、そこはあえてツッコまない方向で。
今度はフツーに「岩瀬さんにアンアン言わされちゃう石川さん」のエッチも書きたいな〜♪
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