■秘密結社への誘い(5)■


 監視カメラのない小さな会議室の中では、重い沈黙が流れていた。
 提案者である篠井は無線で呼ばれて出て行ってしまい、この場にいるのは石川、岩瀬、西脇の三名のみである。
 石川は不機嫌そうな顔で腕組みをしている。
 沈黙を破ったのは西脇だった。
「隊長、仕方がないでしょう。篠井さんの提案以外に、解決策があるんですか?」
「だからって!」
 石川は真っ赤になって怒鳴る。
 篠井の提案どおりにすれば、確かにテロは防げる。だが、それはつまり、見たこともない敵に「誰と」「何をしたか」を知られるということであり──要するに石川にとってはとても恥ずかしい状況なのである。
「第一、そんなのは岩瀬だって嫌だろう!」
 同意を求めるように、石川は岩瀬を見た。
 が、岩瀬は石川の両肩をがしっと掴み、自分の方に向かせた。真剣な眼差しで、石川を見つめる。
「岩瀬?」
「俺は悠さんのためなら何でもやります! 経験ないですけど、がんばりますから!」
「そういう問題じゃないだろう!」
「大丈夫! 悠さんなら絶対に出来ます!」
「そういう問題でもない!」
 煮え切らない石川に、西脇が溜息をつく。
「じゃあ、他にいい案があるんですか?」
「それは……とにかく主犯を捕まえれば……」
「表立って動けば委員会にバレますよ。宮沢さんが聞いたら、何を言われるか想像はつくでしょう」
「それは……っ」
 言葉に詰まる石川に、西脇はさらりと言った。
「まあ、俺も無理にとは言いませんよ。誰にでも、どうしても出来ないことはありますからね」
「っ……!」
 その言葉に、石川の表情が変わった。西脇は内心ほくそ笑む。この表情は、石川の「負けず嫌い病」が出た証拠だ。
 石川はくるりと振り向き、真正面から岩瀬の顔を見据えた。
「岩瀬!」
「は、はい?」
 その迫力に、岩瀬は思わず気圧される。
「今晩、やるぞ!」
 言い放ち、石川は踵を返して部屋を出て行く。
 一瞬の間の後、岩瀬はこの上なくにやけた顔で石川を追いかけた。
 残された西脇は壁に凭れ、自分の策略が成功したことに安堵の溜息をついた。




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