■プレゼント(1)■
熱の残る腕が肩を抱き寄せた。
されるがままに、安積は厚い胸に顔をうずめた。筋肉に覆われた太い腕が、少し妬ましい。
ベッドの中、心地よい体温に包まれながら、安積は息を整えた。
速水の手が、汗に濡れた安積の髪をかきあげる。
「大丈夫か?」
先ほどまでの激しさをからかうような、それでいて本気で心配しているような、やさしい声だ。
大丈夫だ──安積はかすれた声で答えた。
意識がゆっくりと遠のく。眠りに落ちそうになった安積の耳に、速水の声が届いた。
「なあ、安積」
「ん……?」
薄い意識の中、安積はかろうじて返事をした。
「おまえ、何が欲しい?」
「……な……に?」
沈みかけた意識を揺さぶられ、安積は言葉をそのまま繰り返した。
速水の声が続く。
「おまえの誕生日だよ、来月の」
「……」
一瞬の間の後、安積はしっかりと目を閉じた。そのまま意図的に、意識を手放そうとする。
「おい、聞けよ」
速水の笑いを含んだ声に、安積は渋々、答えた。
「誕生日を祝う年じゃないだろう。気持ちだけ、ありがたくもらっておくよ」
我ながら、全然ありがたくなさそうな口調だ。
「一週間前になったら、また聞くからな。考えておけよ」
速水が意地悪く笑った気がした。
わかった、と返事をしたような気がする。安積はそのまま、速水の腕の中で眠りに落ちた。
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