■12月25日(3)■


 安積はソファーに座り、速水の肩に頭を預けていた。速水は片手にグラスを持ったまま、もう片腕で安積の肩を抱いている。
 普段、酒を飲んでいる最中に時にくっついていることはあまりない。単純に、酒が飲みにくいからだ。
 しかし今日の速水は、安積を腕の中から離そうとしない。安積も逆らわなかった。
 テーブルの上には封を切ったウィスキーが置かれ、そのそばには包装紙とリボンがある。プレゼントなんだから独りのときに飲め、という安積の言葉を無視し、速水はさっさと封を切ったのだ。
 一緒に祝ってくれるんだろう?──いささか意地悪く笑う速水に、安積は何も言えなかった。
 最後の一口を飲み干し、安積は空になったグラスを持ち上げた。天井の明かりが乱反射し、きらきらと輝いている。速水がそれに気づき、同じようにグラスを持ち上げた。
「きれいだな」
 速水の言葉が何となく嬉しくて、安積は小さく笑った。
 グラスの向きを変えると、光の色も変わる。それがおもしろくて、安積は何度もグラスと首を傾けた。
 ふと、その光が遮られた。大きな手がグラスを取り上げる。
 思わず速水の方を向いた瞬間、顎を掴また。同時に唇がふさがれる。
「ん……っ」
 速水の舌が強引に、唇をこじ開けようとする。
 戸惑いは一瞬だけだった。
 安積は唇を開いた。侵入してくる熱い舌に自らの舌をからめる。貪られる感覚に身震いしながら、安積は、速水の頭に腕をまわした。
「……んっ……っ」
 押さえきれない声が漏れる。唇が僅かに離れ、また深く触れ合う。速水の激しさに耐え切れず、舌を絡ませたまま安積の身体はゆっくりとソファーに沈んだ。
 ようやく唇が離れた。安積を見下ろす速水の目に、欲情した光が浮かんでいる。
 安積は自分のズボンに手をかけた。ベルトを緩め、自らのファスナーを下ろそうとする。僅かに震えるその手に大きな手が重なった。
 安積は上を見上げた。速水が獰猛な獣の顔で笑っている。
「これもプレゼントか?」
 にやにやと笑う速水に、安積はそっぽを向いた。
「ん?」
 速水がゆっくりとファスナーを下ろし、下着の上から安積に触れた。既に熱を持っていたそこを刺激され、身体がひくりと震える。
 思わず漏れそうになった声を吐息で隠しながら、安積は速水のズボンに手を伸ばした。震える手でボタンをはずし、ファスナーをひき下ろす。速水が驚いたように目を見開く。
 安積は速水の最も熱い部分を引き出した。震える手でそれに触れ、緩やかに握りこむ。そして顔を赤くしたまま、速水を軽く睨んだ。
「別に……プレゼントだからやるわけじゃない」
 自分がやりたいからやるのだ──とは、さすがに口に出しては言えなかった。
 手を動かすと、速水が僅かに息を漏らした。速水のものが形を変え、安積自身も煽られる。
 速水の手が、安積の下着とズボンを引き下ろした。慣れた動きで刺激され、安積の身体がひくりと跳ねる。速水が少し笑ったような気がした。なんとなく悔しくて、安積も手の動きを早める。
「安積……っ」
 速水が唇を重ねてきた。安積も負けずに、より深く舌を絡める。
「ん……ん……っ」
 達したのは、安積の方が僅かに早かった。息をつく間もなく、手の中で弾けた速水の感触にぞくりと身震いする。
 荒い息を吐きながら、速水が安積に覆いかぶさった。
 濡れた部分同士が触れあう。その感触に、安積の中に新たな熱が点る。
 速水の手が、安積の濡れた部分を辿り、後ろに触れた。
「あ……」
 ぞくりと身体が震える。
 情欲をあからさまに含んだ速水の声が囁いた。
「このまま、ここでいいか?」
 こくこくと安積はうなずいた。
 速水が今さらのように、安積のワイシャツのボタンを外していく。
 安積もまた、もっと触れたくて──生きている熱を感じたくて──速水のセーターに手をかけた。
 
 
END



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