スポーツコラムNo.52

誰もが感じることになるプロ野球の暗い未来(2010/4/25)


−日本TVのナイター中継はたったの8試合−

2010年は情報に疎い人でもプロ野球の衰退を感じずには得られないだろう。巨人の強力な洗脳装置として読売新聞と共に大きな役割を果たしてきた日本TVがさすがに我慢の限界を超えてしまったようで今季の巨人戦のナイター中継は僅か8試合になっている。

開幕2戦を中継したので4月以降9月までの半年間の中継数は1ヶ月に1度の割合しかない。これではもうあまりにも中継数が少なく過去との比較など無意味と言っていいだろう。

昨年スポーツコラムNo.34でWBCの結果がどうなろうとプロ野球の崩壊が決定的になったと記憶される年になるだろうと予想したが、まさに2009年はプロ野球を大きく支えてきた日本TVの心を折る年となった。

WBC優勝と野球界にとっては最高の結果でシーズンに入って僅かではあるが、WBC効果で視聴率が開幕1ヶ月ほどは前年同月比を上回る勢いを見せたが、あっという間にWBC効果は吹き飛んでしまい一桁の低空飛行が続いた。2009年は2008年よりも地上波全体で29試合もナイター中継を減らしたため(61→32)比較的視聴率が高い序盤戦に中継を集中させることによってなんとか平均10.0%を確保し、前年から0.3%の上昇となった。しかし、2008年と同様のペースで中継をしていれば前年割れは確実でWBCの結果に関わらずプロ野球離れが進んでいるのは明らかだった(老人が亡くなっている分だけ減っているとも言えるが)。

ペナントレースの視聴率で日本テレビの心が折れたわけではない。もっと衝撃的な事件が起きていた。
それは巨人が出場したクライマックスシリーズで巨人の負け試合とはいえ視聴率一桁を記録してしまったのだ。

クライマックスシリーズといえばペナントレースと比較にならないほど1試合の価値が重く、この試合で一桁を記録するようではペナントレースなど怖くて中継できたものではない。そうでなくともスポンサーがつかず、赤字必至のところにゴールデン帯で6〜9%しか取れないゴミ番組を大量に抱えてしまえば、せっかく復調の兆しを見せてフジテレビを追える雰囲気になっている局の人間のやる気を削ぐ結果になるのは明らかで、巨人戦のほとんどをBS&CS送りにするのも無理からぬことだ。

−今季で地上波撤退も−

既に上がり目のないことは視聴率が上がって欲しいTV関係者でさえ認めざるを得ない状況になっていたが、今年は開幕2戦目にして一桁の7.9%、3戦目の中継で6.8%とテレビ東京以外のTV局なら1クール(約3か月)で即終了のこれまでとは次元の違う低視聴率を記録した。

昨年までは4月までは平均二桁をなんとかキープしてGW以降一気に視聴率が下がる傾向にあったが、今年は完全に巨人戦中継は見放されている。

こうなっては日本TVとNHK以外の地上波撤退の可能性がかなり高いだろう。日本TVとて巨人戦など中継したくないのが本音だと思われるので今年の8試合から半減してもおかしくない。

−日本シリーズがある意味見物−

今年は一般人にもプロ野球はやっぱり衰退しているんだなと大きく実感する年になる可能性がある。もちろん巨人戦の中継数少なさで実感するのもあるが、日本シリーズに巨人が出場できなければシリーズの中継がない試合が出てくるかもしれない。

クライマックスシリーズを導入して露出度を高めようとしたものの、パリーグの中継はなし、セリーグも巨人が絡まなければ0だ。
巨人が出ても日本シリーズ進出決定シリーズで一桁を記録する試合が出てくるのだから日本シリーズといえど巨人が出場しなければ平均一桁も十分ありえる。

そうなればTV局としても積極的に手を挙げるとは思えず、優勝が100%決まらない第2・3戦は中継なしという前代未聞の事態が起きるかもしれない。

−代表戦に活路を見出そうとするも既に詰み−

WBCでその実情を分かっていない多くの国民を虜にしたことで味を占めたのか日本代表の試合を多く組もうとしているようだ。

リーグあっての代表ではなく、リーグを捨てての代表という構図でますますペナントレースはどうでも良い存在になることは間違いない。
ただどの国と試合をするのかという大きな問題が残っている。同じ国ばかりと試合をしていては野球の世界の狭さをより一層印象付ける結果にしかならないだろう。

サッカーは言うに及ばず、バレーやバスケ、ラグビーでも多くの国が強化を行っていて代表戦は多彩な相手と行える。
対して野球はどうなのか?またいつもの韓国か?アメリカは自分たちの利益にならないことに代表を組むとは思えず、メジャーに主力を送り込んでいるカリブ海の国も代表を組もうとはしないだろう。仮にアジア大会に出たとしても韓国・台湾・中国のいつものメンバーとしか試合にならないだろう。
そもそも何のために代表戦を行うのかということだ。サッカーにワールドカップと各大陸選手権、バレーとバスケには五輪と世界選手権、ラグビーにもワールドカップという権威と名誉の高い大事な試合がある。野球の日本代表を組むのは単に金儲けがしたいという発想を見透かされればあっさりと国民にそっぽを向かれるかもしれない。

リーグが駄目だから代表でという安易な考えにしか見えない。アマとプロの統一した組織を構築するなど抜本的な改革をする気がない(しようと思っても利権が複雑に絡み合って身動きすら取れない)野球の未来は限りなく暗い。そしてそのどうしようもない暗い未来をTV局の人間の多くも理解しているはずだ。しかし、TVでプロ野球が順調なまでに衰退している事実を発言することは許されない。マスメディアとプロ野球は共に利益を分かち合ってきた関係なだけに少しでも野球が完全に死ぬのを一般国民が理解するのを遅らて既得権益を吸えるだけ吸い続けたいのだろう。
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