スポーツコラムNo.34

プロ野球崩壊が決定的になる2009年(2009/3/14)


−崩壊が本格化−

TV・新聞社というマスメディアをバックに持って日本のスポーツを牛耳ってきたプロ野球。プロ野球は親会社の宣伝のために存在しているそのやり方は既に限界が見えており、いつ崩壊するかが問題だったが、2009年がプロ野球が今までのポジションを失い、マイナースポーツのひとつに成り下がる決定的となる分岐点の年となる。

Jリーグ誕生以降、バスケットボールのBJリーグやフットサルのFリーグと誕生したプロリーグは地域密着を基本とし、地域の名の下に企業は一歩引いた立場からスポンサーとして支援していくスタイルとなっている。
プロ野球も形の上では地域密着を標榜しているところもあるようだが、本質である親会社の宣伝、節税が第一というところは変わっていない。
プロ野球は一昔前の巨人におんぶに抱っこから脱却して巨人の人気が落ちても地方では人気があるから大丈夫と目を逸らさせようとしているが、巨人が行き詰れば即ちプロ野球の崩壊に等しい状況に変化はない。

−日本TVの我慢の限界−

その巨人が我慢の限界に達しようとしている。巨人の収入源は年間60億円を超えると言われるTV放映権料と個人ではほとんど手に出来ない実質法人向けのシーズンシートの販売の2つで成り立っている。

TV放映権に関しては視聴率低下でTV放映権に頼る経営の危うさを指摘されてきたが、今年のゴールデンタイム帯でのホーム試合の放映は昨年から激減し、大多数を担ってきた日本TVの放映予定は昨年の35試合から今年は僅か11〜15試合となっており、2010年には0になっても不思議ではなく、放映権のビジネスモデルは破綻を迎えようとしている。

日本TVは赤字を抱え、TV局そのものが傾き始めている中で何十億円もの赤字の垂れ流しに繋がる巨人戦の放映権料の支払いを続けるとはとても思えない。ゴールデンタイムから一切手を引けば放映権料収入はスズメの涙程度になってしまう。

日本TVの業績が回復すれば大丈夫なのではという期待を持つ人もいるかもしれない。現在の地上波テレビは視聴者のTV離れよりもスポンサーのTV離れの方が急で、そこへ来ての地上デジタル化のための設備投資でにっちもさっちも行かない状態となっている。
不況になると視聴率が上がると言われている。2008年上半期まで一貫して減り続けていた視聴率が好転している。調査サンプルを調整してTVが大好きな年配層に手厚くした可能性も高いが(高齢者を対象としている番組が特に高い)、数字だけ見ればそこまで深刻ではないようにも見える。
しかし、TV局の収入源はスポンサーからの広告料だ。いくら視聴率を取ってもスポンサーがつかなければ収入は増えない。
大口広告主のトヨタが不況が深刻化する前からTV広告の効果を疑問視して広告料を大幅カットを決めており、他の広告主も不況もあってTVCMに資金を投じる余裕はない。
個人的にはTVCMに巨額の資金を投下する価値がないことにやっと気付いたのかという思いがするが(ネガティブキャンペーンをされない程度CMを打っておけば十分)、TV局にとっては広告料金の減収は死活問題となっており、今まで自粛していた宗教関係の創価学会のCMまで流さなければいけないほど切迫している状況となっている。

地上波は2011年の地上デジタル化を強引に推し進めればそこでTVが主役の時代は完全に終了し、完全デジタル化を大幅延期してアナログ放送の継続が決定されたとしても(デジタル化を強引に推し進めるとは思えないのでこちらの可能性が高い)TVがかつて新聞やラジオが通ってきた道を辿るのは時間の問題だろう。

−球界の盟主に潜む危機−

底の見えない不況は巨人の非常に大きな収入源であるシーズンシートの販売不振に直結する。恐らく今年の巨人主催試合は空席が非常に目立つことになるだろう。シーズンシートそのものが売れないことに加えてレギュラーシーズンは3位以内に入れば良いだけの緊張感に欠ける、ファンとすればそれほど重要でない試合が続くので一般のファンも熱心に足を運ぼうとは思わないだろう。

オリックスやソフトバンクといった親会社そのものが潰れるのではという噂はよく聞かれるが、巨人が先に倒れてしまうことも十分考えられる。
巨人の親会社の読売新聞はプロ野球の親会社としては小さい規模の企業で巨人が大きな損失を出した場合に親会社が支える体力はない。シーズンシートの売れ行きが半分になるだけで巨人の経営は行き詰まるだろう。2009年は耐えられても2010年はどうなるか分からない。放映権収入は暴落し、シーズンシートが売れないことを見越して選手の年俸の大幅切り下げが出来るかどうか。例え身の丈経営に転ずることが出来てもそれは12分の1の球団に成り下がることを意味する。メディアではプロ野球は地域で人気とアピールしているが、巨人が中心的存在であってこそのプロ野球というのは間違いない。巨人中心のビジネスモデルが完全崩壊した時に備えての次のビジネスモデルは用意されておらず、プロ野球崩壊へと進むと見る。

−WBC狂想曲の後−

辞退者が山のように出て上に、最終メンバーからも辞退者が出てメジャーリーガーにとってあまりやる気にさせるような大会ではないWBC。盛り上がっているのは日本のみで、さらに言えばマスコミとそれに勘違いさせられている人間だけだとも言える。トッププレーヤーがこれだけ辞退をする最高峰の国際試合は聞いたことがない。そもそもアメリカではMLBの王者がナンバー1でWBCは国別オープン戦程度の感覚でしかないのだろう。

日本ではNHKも民放も全局を総動員してWBCを煽り立てているので、高視聴率を記録した。
しかし、その事がプロ野球崩壊を早める結果になることなど目先の利益しか見えない放送局には分からないのかもしれない。

バレーを見れば分かるように企業スポーツで日本代表を全面的に押し出せば、リーグ戦は影に隠れてしまい、ほとんど存在感をなくしてしまう。巨人中心のビジネスモデルで繁栄してきたプロ野球なのに巨人の上に日本代表を作ってしまえば巨人の存在が色褪せてしまうのは当然ともいえる。そのことは前回日本がWBCで優勝しても全く巨人(=プロ野球)の人気回復には結びつかず何事もなかったかのように年々人気低下していったことでも証明されている。

さらに先が見えていないことにプロ選手が参加する野球の国際大会は4年後まで全くないということだ。バレーならば年に1回大きな大会が開かれるので日本代表ビジネスも機能しているところもあるが、野球には今後参加する試合すらないにも関わらず狂ったようにWBCを煽り続け目先の利益を追っている。

日本代表の活動は休止状態になり、巨人の地位がさら低下してにっちもさっちも行かない状況になると簡単に予想できる。
一度握った権力を死守るために日本そのものを犠牲にしても構わないかのような麻生政権のようにありとあらゆる悪あがきをするのか、それともあっさりと何の抵抗もなく崩壊してしまうのか、どちらにせよプロ野球に明るい未来はなく、2009年がプロ野球崩壊を決定付けた1年と記憶されることになるだろう。
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