ファジアーノ岡山関連コラムNo.18

ファジアーノ岡山2010年前半戦を終えて(1)(2010/7/30)


−昨年との比較−

昨年は18クラブの3回戦で行われ、今年は19クラブの2回戦制と単純に比較は出来ないかもしれないが、昨年の第1クールと今年の前半戦との比較を表にしてみた。
2010年 2009年
勝敗 4勝4分8敗
勝ち点16
16位
2勝6分9敗
勝ち点12
17位
ホーム 2勝2分5敗
勝ち点8
16位
2勝4分3敗
勝ち点10
10位
アウェイ 2勝2分5敗
勝ち点8
13位
0勝2分6敗
勝ち点2
18位(最下位)
得点 9点
18位タイ(最下位)
12点
17位タイ(最下位)
失点 20点
8位タイ
29点
16位タイ(最下位)
ホーム得点 5点
18位タイ(最下位)
6点
15位タイ
ホーム失点 9点
10位タイ
10点
10位タイ
アウェイ得点 4点
17位タイ(最下位)
6点
16位
アウェイ失点 11点
10位タイ
19点
17位タイ(最下位)
シュート数 136本
7.55本/1試合
18位
156本
9.17本/1試合
18位(最下位)
被シュート数 226本
12.55本/1試合
18位
211本
12.41本/1試合
15位
シュート決定率 6.61%
18位
7.05%
17位
被シュート決定率 8.84%
4位
13.74%
17位
ホームシュート決定率 6.75%
18位
7.05%
14位
ホーム被シュート決定率 9.09%
10位
9.34%
8位
アウェイシュート決定率 6.45%
17位
7.04%
16位
アウェイ被シュート決定率 8.66%
6位
18.26%
17位
観客動員数 68,850人
7,650人/1試合
7位
61,086人
6,787/1試合
5位

−アウェイでの守備力向上−

数字を見ると明らかにアウェイでの戦績がアップしていてホームではやや成績を落としていることが読み取れる。
アウェイでの成績が上がったのはひとえに守備力の向上に尽きる。昨年の第1クールはホームではそこそこ守れるもののアウェイに行くと守備が崩壊する試合が多く、8試合で19失点と1試合平均2.375点も失点を喫していた。しかし、今年は9試合で11失点と1試合平均1.22失点と1試合当たりの失点数が1点以上も改善したことにより、得点はなかなか取れなくとも負けない試合がある程度出来た(昨年はアウェイでの負け確率75%が今年は55.5%まで下がっている)。

打たれたシュート本数を見ると昨年までと大して違いはないもののゴールキーパーを含めた最終ラインで踏ん張って失点を抑えてきたのがよく分かる。

これはGKが昨年のリ・チャンガンから真子秀徳に変わったことと浦和から新加入した近藤徹志の奮闘が非常に大きい。
昨年のコラムでリに対しては致命的な欠点を指摘し、要改善ポイントを指摘したが、真子については触れなかった。というのも真子はバランスの取れたキーパーで現状の岡山のチーム力を考えると十分なGKに見えたからだ(欲を言えば身長がもう少し欲しいがそれはどうしようもないことである)。

近藤は岡山のセンターバックに欠けていた安定感をもたらしていた。昨年は野本や木村に特に顕著だったがスピードが大きく不足しててそこを突かれると非常に脆かったが、近藤はスピード不足を感じさせず、ヘッドの強さも非常にありJ2下位にはもったいないディフェンダーにさえ見える。欲を言えばCKでの得点力があれば文句ないが、ジャブラニを使用している以上なかなかそう簡単には行かないのかもしれない。

−攻撃は後退−

アウェイの守備が向上したことによってアウェイの成績は向上したが、ホームでの成績は昨年の第1クールよりも悪くなっている(第3クールと比較すれば良くはなっているが)。

ディフェンスラインがほとんどの試合でベストメンバーを組めたのに対して攻撃陣は怪我人が多く、まともなメンバーを組みにくかったというエクスキューズはあるかもしれないが、シーズン開幕前から得点力不足を懸念してそのまま結果に表れた。

ファジアーノ岡山のセカンドチームのファジアーノ岡山ネクストから臼井、小寺、馬場といった選手を昇格させたものの(臼井は昨年の前半戦はトップチームに在籍)、どの選手もトップでやるにはまだ実力不足で攻撃陣は他チームからの補強よりも内部昇格をメインにするというフロントの判断は間違いだった(もちろん狙っていた選手に移籍を断られた例も複数ありこうならざるを得なかった面もあるだろうが)。

唯一シーズン前に補強した岸田はチームトップの3得点と及第点の働きを見せ、若い選手ばかり取ってきた岡山のフロントには珍しく28歳の中堅選手を獲得した補強はまずまず当たった。岸田は得点だけでなく運動量豊富で守備にも献身的な動きを見せるので攻撃力の乏しいファジアーノ岡山の攻撃陣でなくてはならない存在の選手となった。

データを見るとシュート本数が激減していることが分かる。シュート本数が示すとおりチャンスさえ作り出すことがままならなかった。
特に相手が元気な前半のシュート数は1〜3本という試合が多く相手が疲れてこないとシュートさえ打てない体たらくだった。

昨年も決定力不足だったが、決定的チャンスをいかに多く作り出すことを目指していたが、今年はその前の段階のいかにシュート数を増やすことが課題となっており、攻撃力は明らかに後退している。

−シーズン前半戦終盤に戦術変更−

ファジアーノ岡山は攻撃陣の個の力が低いながらできるだけ繋ぐサッカーを志してシーズンをスタートさせた。
しかし、個人の力が低いためになかなか最後までボールを繋ぐことが出来ずに結局シュートまで至らないことが多く、そこがシュート数が大きく減った最大の要因だろう。

そしてW杯中断直前に1トップから2トップに変更し、背の高い選手を並べてトップにボールを放り込む回数を多くしてボールを出来るだけ繋ぐというコンセプトを放棄した。
ロングボールを徹底するわけではなく、繋げるところは出来るだけ繋ぎたいようだが、三木良太や李東明(リ・ドンミョン)に当てる場面が非常に多くなっている。

水戸戦と福岡戦ではロングボールをうまく2トップが捌ける場面が多く、比較的攻撃が機能しているが、これから対戦してくるチームは岡山のやり方を研究してきて2トップへ入るボールを徹底的にマークしてくるだろう。

これまでの2戦では三木がうまくボールを落とせていたもののこれからも機能するかというと個人的には非常に疑問だ。
昨年の三木の動きを見るとDFとの競り合いに弱く、ボディーコンタクトを激しくしてくるDFに対応できないのではないかと思える。
シュート力もそれほどではないのでシーズンが進むにつれて今のやり方を変えない限りまたも手詰まりの状況になるのではないかと思う。

現在のロングボール多用戦術だとせっかく長期離脱から復帰して個の力で唯一突破出来るドリブラーであり、決定的パスを送れる妹尾隆佑が生きないのが問題だ。
妹尾はシュート力はないもののドリブルでDFを抜く去ることが出来、ペナルティーエリア付近で決定的なパスを送れる落ち着きはチーム随一で、昨年アシスト数は非常に多かった。
やはり妹尾が生きる戦術を採用することがコンスタントに得点を取る近道だと思われ、妹尾の前にスペースがある状況で前を向いてボールをもらえる形を多く作りたい(2トップだと妹尾が一番生きる左サイドからゴール中央やや左のスペースがなくなりがちになってしまう)。
ファジアーノ岡山前半戦を終えて(2)へ
ファジアーノ岡山ホームゲーム感想・観客動員数・結果
ファジアーノ岡山と日本スポーツ ホーム ファジアーノ岡山関連コラム目次