ファジアーノ岡山関連コラムNo.15

ファジアーノ岡山2010年序盤戦を終えて(1)(2010/4/27)


−野戦病院−

ファジアーノ岡山はJ2に参戦するトップチームとJFLの下に位置する地域リーグの中国リーグに参戦するセカンドチームがあり、両方合わせて44人で2010年をスタートさせた。

1チーム当たり22人と少数にも関わらず新加入の千明は膝のリハビリのために最低でも夏まで試合に出ることは出来ないことはキャンプに入る前から明らかだったので実質43人でスタートさせた。

12月に膝の手術を受け、早くて3月の開幕頃、遅くても4月上旬には復帰すると思われていた昨年唯一個人で打開できた妹尾隆佑の復帰が遅れ未だ復帰の目途は立っていないようだ。新加入のキムは開幕早々の3月下旬にねん挫(全治6〜8週間)で戦線離脱したのを始め、昨年ほぼフル回転したMFの喜山が3月28日の札幌戦で左足親指を骨折して全治2〜3ヶ月の重傷を負い、4月4日の栃木戦でボランチで全戦先発出場していた新人の福本は鎖骨を骨折してこちらも全治3ヶ月の重傷を負った。
同じ栃木戦ではほとんどの試合で先発で使われていたMFの新中が下腹部打撲で全治3週間の傷を負い、FWの柱の西野も栃木戦後の練習中に左膝の靭帯損傷で全治4〜6週間とボランチより前の選手がほぼ総崩れという異常事態となった。

レギュラーやレギュラー候補の選手が次々と負傷し、監督のやりたいサッカーを体現するにはあまりにも戦力が乏しい状態となってしまい、スタメンを組むのでさえ四苦八苦で選手交代を有効に使うなど望むべくもないチーム構成となり監督には同情してしまうほどだ。

−得点力不足−

ファジアーノ岡山が流れの中で得点を決めるのは第5節の栃木戦を待たないといけなかった。
これまでの8戦で僅か4点と得点力不足は誰の目にも明らかで、開幕前に懸念した攻撃陣の戦力不足がケガ人続出もあって最悪の形で結果となって表れている。

開幕数戦で得点力不足が浮き彫りになったことによりサンフレッチェ広島ユース出身で横浜FC所属の中野裕太をレンタル移籍で獲得したが、中野も初出場となった札幌戦で鼻骨を骨折し、フェイスガードを装着してのプレーとなりフェイスガードが取れるまで接触プレーは及び腰のように見えた。

また西野が離脱したことにより昨年練習生で参加していて獲得を見送っていた韓国人の李東明を獲得し、中野に続いてFWが出来る選手を緊急補強した。

−信念を貫けるか−

今年のファジアーノ岡山は出来るだけボールを繋ぐスタイルを採用する。昨年第2クールからボールを繋ぐ意識を高めていて個人的にはこのスタイルは歓迎している。

今年の岡山は西野が怪我をするまでは西野をやや下げてトップ下に近い位置に置くことによってDFとボランチの間でボールを受けさせてスペースを作ろうとしていた。
西野はヘディングの競り合いに非常に強く、昨年の怪我の影響か元々欠けていたスピードがさらになくなっている印象を受け、裏に抜け出すスピードはない。よって西野の持ち味を生かすために少しポジションを下げた監督の考えは支持できる。

本来ならば西野が作ったスペースを妹尾や岸田などスピードのある選手が縦横無尽に走り回ることによってチャンスを作り出そうとしようと考えていたのだろうが、妹尾の復帰が予定を大幅に遅れていることよって個で勝負できる選手がおらず、シュートまで持っていくことができない状態でいる。

シュート数は全チーム中最下位でここまでの8試合で1試合も10本以上シュートを打ったことはない。

繋ぐことを意識するもののフィニッシュまで到達することは稀で流れの中の得点は2点のみで1点は岸田の難しい角度からの技ありシュートと川原のカウンターとやろうとしているスタイルでの得点はない。
繋ぐ意識を持っていることで縦に放り込むのは最後の選択となるので途中でミスが出てシュートまで持ち込めないか、繋ぐことを最優先にしているためバックパスで攻め手がない場面も目につく状況となっている。

標榜するスタイルで崩し切れないために守備を意識したチームからは崩すことが出来ず苦戦している。千葉戦は相手がアウェイでも勝ち点3を取ることが至上命題だったために前掛かりに攻めてくれてカウンターがうまくはまったが、慎重に戦われると得点は期待しにくいのが現状だ。

下位チームがしっかりと繋ぐことを指向するのはメリットよりもデメリットの方が大きい。技術的に不十分な選手が繋ごうとしてもどこかでミスを起こし、高い位置でボールを取られて危ないシーンを作られてしまう危険性が高い。
現に高い位置でボールを取られ、ペナルティーエリアの近くでファールを犯してFKからの失点が非常に多くなっている。
またミスが続出するとサイドバックの選手がオーバーラップを自重してしまう結果となり攻撃の厚みがなくなる危険性を秘めている。

目先の結果だけを追うのならば下位チームがポゼッション指向をするのは止めた方が良いだろう。
長期的な展望を元に昇格争いを目指していくチームを作るのならば特に今は耐え時となる。まだチームの戦術が浸透し切っておらず、各選手のコンビネーションが未成熟の段階でボールを繋ごうとしてもなかなかうまくは行かないだろう。

結果が出ないと単純にボールを放り込めという圧力も掛かるだろう(札幌戦では解説者にもっと単純にボールを放り込んだ方が良いのではと指摘されていた)。しかし、先のないやり方で目先の勝ち点を追うのか個人で勝負できる妹尾復帰までは大苦戦を覚悟の上でやり方を貫くのか監督の信念が試される。
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