黒部下ノ廊下 (黒部ダム〜十字峡〜阿曽原温泉小屋〜欅平)

登山月日  2008.10.25〜27

 黒部川の仙人谷から黒部ダムまでの約15kmを「黒部下ノ廊下」という。
 昔、日本電力が測量のために歩道を作り、昭和32年関西電力が黒四ダム建設のためその歩道を改修、一般に開放されたのは34年からである。(道は「旧日電歩道」とある)
 今回、ここを会山行に計画した。
 昨年は扇沢ロッジに泊まり、始発のトローリーバスでダムまで行きすぐに歩き始めたが、ちょっとしたアクシデントがあり途中ビバークになった苦い経験がある。
 今回の参加者は24名、大所帯なので予定通り歩き通せるか危ぶまれたが、健脚のみんなのおかげで無事縦走した。
 

25日 
 朝、新潟を出発し扇沢に向かう。駅のトローリーバス乗り場にはシーズン真っ盛りで長蛇の列だ。でも、事前に予約していたのでスムーズに乗れた。心配した雨も降らず予定通り黒四ダムに到着した。
 ダムから宿まで40分位だが時間が早かったので各々自由行動とした。結局、黒部平まで登りに行った。黒部平からはダムを眼下に正面に針ノ木岳、スバリ岳、赤沢岳を始め、鹿島槍や五竜など素晴らしい景色が広がっていた。
 5日前に「立山黒部アルペンルート」を縦走した時も天気に恵まれ、立山連峰の全容の景色を満喫した。
 
26日 
 朝5時発。真っ暗な中、ヘッドランプを点けてダムまで30分くらいかかって戻り、トンネルを抜けジグザグに付けられた道を下り橋を渡る。下る途中ウサギが道を横切った。ここで朝食だ。ダムからの放水は既に終了していた。
 さて、朝食が終わり出発だ。普通の登山道と変わらないような道を1時間ほど歩くと、内蔵助出合に着く。ここは内蔵助平に行く道と間違いやすい所だ。
 内蔵助出合を過ぎるといよいよ今回の核心部に突入だ。
 辺りの紅葉も鮮やかで素晴らしい。鳴沢小沢では対岸に美しい滝を見ることができる。次第に道は険しくなり断崖絶壁に付けられた幅50cmほどのへつり道を、ワイヤーにつかまりながら恐る恐る進んで行く。途中、岩が崩れて通行できない箇所があり、そこには梯子が架けられ迂回するようになっていたが、この梯子がかえって高度感があって怖いのだ。別山谷にさしかかると、昨年は2週間も早かったのに全く雪はなかったが、今年は大量の残雪があり、それがいつ崩壊するかわからないブロックになっていた。
 事前にザイルを用意したほうがよいと言われていたので、装備一式持参したが、小屋の人がわざわざここまで来てロープを張ってくれて、一人ずつ慎重に通過する。
 また、さらに先へ進んで行くと白竜峡の辺りか、もう一箇所岩が崩れて梯子が架けられた場所があった。でもここは反対方向から来たパーティが梯子で手間取っており、崩れた箇所を見ると何とか行けそうだったので高巻はせずに通過した。 さて、険しい道はまだまだ続き、樹林帯になってようやく十字峡に着いた。十字峡は黒部川本流に剱沢と棒小屋沢が十字に合流する所である。沢を渡る吊橋から見る十字峡はエメラルドグリーンの水で深く刻まれていた。
ここでお昼を取った。昨年ここでビバークになり、その時の寒さは尋常でなかった。
 昼食が終わり出発だ。風が強くなって小雨がぱらついてきたが、すぐ止んだ。へつり道はまだまだ続き、ワイヤーにつかまりながら半月峡、S字峡と見事な渓谷美を眺めながら通過し、急下降すると50mほどの東谷吊り橋があり、渡り終えるとようやく難所が一段落する。
 広場で安堵の大休憩をした。
 ここからは仙人ダムまでは車道を歩く。スノーシェッドを通りダムに着くと、ダムの水はグリーンとブルーを混ぜたような美しい色で周りの紅葉も相まって本当に素晴らしい。
 地熱で暖かい建物の廊下を通り外に出て最後の登りにかかる。疲れた体この最後の登りが堪えるのだ。
 急下降してようやく今日の宿、「阿曽原温泉小屋」に到着した。
 小屋は我々1部屋貸し切りで1畳に2人雑魚寝だ。夕食まで宴会で盛り上がった。夕食のカレーは何杯もお代わりできて美味しかった。温泉は男女1時間交替だ。疲れた体を温めた。
 夕方から激しい雨になり、夜中じゅう、小屋のトタン屋根をたたいた。

27日 
 朝になっても雨は止まず、朝食は小屋で取ってから5時出発する。
 真っ暗な中ヘッドランプを頼りに足場の悪い沢を丸太で2回渡り、ロープの下がった急下降をすると登りになる。
 このルートは水平道なので下れば必ずその分、登りが待っている。
 岩から流れ落ちる水しぶきをシャワーのように浴びながら行くとオリオ大滝に着く。水量を更に増し、落差100mを豪快に流れ落ちていた。
 仕合谷は真っ暗な長いトンネルだ。大勢だからいいが、1人だったら気味が悪いだろう。背の高い人は何回も頭を打ったようだ。
 道は昨日よりは足元はしっかりとしているが、その代わり水平道の落差が増し、下を見ると目がくらむように高く高度感がある。
 大太鼓と言われる所は足場がなく、古い写真では丸太を渡してあるだけのものが写っているが、下を見ると丸太の隙間から谷底が見えて怖い。なるべく下を見ないほうが良いだろう。
 次第に雨も止み日が差してきた。高い山々は昨夜来新雪が降ったようで真っ白くなっていた。
 トロッコ電車の警笛が聞こえ、最後の長い急下降でようやく欅平に着いた。欅平では温泉に入りゆっくりした。
 このルートを歩き終えて乗ったトロッコ電車は、それまでのルートに比べると何の感激もない。
 残雪の状況、紅葉のベストシーズン、天候、そしてメンバーと様々な要素が絡み合う難しいルートだが、今回はどれもこれもうまくいったように思う。
V字谷 十字峡
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