これは私の通勤路の冬の風景だ。
気温は氷点下。路肩には雪、樹木にも雪が付いて、なかなかに幻想的な風景だ。
しかし、おかしくないだろうか。路面だけは融けて濡れている。
種明かしをすると、これは路面に塩を撒いてあるのだ。塩を撒くと融解熱で氷が融ける。北海道の国道では、北海道開発局に委託されている業者が、昼夜を問わず凍結のあるときには塩を撒いているのだ。
塩は、文字どおりの塩化ナトリウムよりは、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、尿素などが使われるらしい。どれも舐めればしょっぱい。そして、どれも車体を強烈に腐蝕させる。
さる筋の情報によれば、塩は、高規格道路などでは、わずか20kmほどの区間に、一車線3トン(!)も撒かれるらしい。
あまつさえ、高速道路のある区間では、試験的にではあるが氷酢酸(!!!)まで撒いているらしい。
これは、安全のためだという。まあ確かに、塩で融けたところは滑らなくはなる。しかし、この国道と交差する市町村道などでは、この路面の水分が、凍結した、塩を撒いていないところに塗り広げられ、ものすごく滑りやすくなったりしているのだ。
2003年から2004年にかけて頻発した、トラックのホイールボルト破断によるタイヤ脱落事故には、冬期に撒かれる塩の影響を指摘する専門家の声もあった。もっとも、どこかから圧力でもかかったのか、合理的な説明のないまま、その意見は黙殺されてしまったようだが。
10月の下旬に復活なった我がジープは、新年の頃には、早くもボディ下側が塗装がはげ、下地が錆び始めていた。半ば融けた路面の雪の撥ね上げはサンドブラストのように薄い自家塗装を削り、撥ね上げた水に含まれる海よりも濃い塩分が鉄板を蝕んでいたのだ。
これでは、鉄で構成されている自動車などひとたまりもあるまい。ひょっとしたら自動車メーカーが消費拡大のために塩を供給しているのではないかと勘繰りたくさえなる。古いクルマをやっとこ維持し、冬でも否応なく乗らざるを得ないビンボユーザーにとっては、恐怖、脅威以外の何物でもない。
北国では、道路から流出した塩による土壌汚染も無視できないレベルにきているという声もある。
凍結路面は危険だ。しかし、冬はそれがアタリマエの状態なのだ。いわばデフォルトで凍結しているわけだ。だからこそ冬は専用のタイヤを履き、特別な注意をもって運転しなければならないのだ。免許を受けているドライバーなら、それはできるはずなのだ。
塩を撒くようになったためかどうかわからないが、冬道でも夏道のような勢いで飛ばすドライバーが多くなったように思う。見ていると、夏道と同じタイミングであらゆる操作が行われているように見える。彼らが凍結路面上で無意識に同じ操作をしていないとは思えない。私の通勤路でも、こんなところでなぜ、と思うようなゆるいカーブや直線で、路外に落ちているクルマを見かける。私は小心者なので凍結路ではゆっくり走ることしかできないのだが、そのような場所で路外逸脱の危険を感じたことはまずない。
私は、冬道に夏道と同じ性能を、まして部分的に要求するのが安全とは思わない。滑らないつもりで突っ込んで、もし滑ったらその悲惨さは夏道の比ではないからだ。滑るなら滑るで、どこでも同じように滑るほうがむしろ安全かもしれない。塩をやたらに撒くようになったここ数年で、冬の交通事故が激減したという話も聞かない。つまり、凍結路面に塩を撒くというのは、まったく実効性のない、単なる環境汚染なのだ。
むしろ、塩の持つ腐食性による財産権の侵害、土壌汚染による生存権の侵害などは見過ごせない問題だろう。頼むから塩なんて撒かないでほしい、と強く思う。誰が俺のクルマを直してくれるんだよ!?
真冬の道央自動車道を全線走破した後の、恐るべき塩の痕跡。なお、実物は写真で見るよりもっとすごいことを申し添えておく。
洗わない限り落ちないが、洗っても、車体の隙間に浸透した塩分は簡単には落ちはしない。
喜んでいるのはクルマメーカーと塩メーカーだけだろうな、たぶん。
まだまだ書くぜ!!