発動五分前。(8888&10000HIT)
 深夜に会った晃哉は、夜目にも酷く顔色が悪かった。
「どうしたの…!」
 閑散としたとおりの向こうから、フラリフラリとおぼつかない足取りの影が近づいてきたなと思ったらそれが晃哉だった。 夜中でも明るいコンビニの外で、芳美は思わず数歩かけよった。晃哉は白いサンバイザーで顔を隠していたが、コンビニのライトに当てられて顔色までは隠せなかった。細いドレッドにした髪も力ないように見える。
「イヤ、大丈夫…、ちょっと飲み過ぎただけ」
 自動ドアの隣、煙草の自販機の前に晃哉はしゃがみ込んだ。蒼白になった横顔を芳美は心配して一緒にしゃがんでのぞき込む。携帯でいきなり晃哉から、近くのコンビニまで来てくれと言われて来てみるとこれで、芳美はとても驚いていた。駅から少し離れたこのコンビニに、深夜の客は少なかった。
「そんなに飲んだの? 会社の人と飲んでただけでしょ?」
「俺、仕事残ってて行くのが遅かったからさ…、駆けつけでビール、ジョッキで一気したりしてさ。昼も夜も食ってなかったから、滅茶苦茶に酔いが回って」
 息も絶え絶え、という感じで晃哉は言った。芳美はバカね、と言って晃哉の背中をさすってやった。
「だったらお店から電話してくれば、私、車で迎えに行ったのに」
「いや、店でタクシー乗ったときはここまでじゃなかったんだよ。だけど乗ってるうちに気持ち悪くなって」
 晃哉はここまでタクシーで来るのが精一杯だった、と言った。つまり、芳美の家までさえ乗れなくてここで降りてしまったらしかった。芳美は何だか、心配を通り越して呆れてしまった。しかし晃哉は相変わらず地面を見つめたまま「うーん吐きそう」とか呟いている。
 ちょっと待ってて、と芳美はコンビニに入りミネラルウォーターを買って戻ってきた。しゃがんで蓋を開けて晃哉に渡すとありがとう、と言って一気に半分くらい飲み干した。
「少し、マシになってきたかも。ありがと芳美」
「心配させないでよね」
「ホント、ごめん。本当はさ、いきなり芳美の家行ってびっくりさせようと思ってたんだ。だからわざわざタクシー乗ったんだけど」
 逆に駄目だったみたい、と晃哉はいたずらが見つかった子どものように苦笑した。つられて芳美も少し笑って、何だか仕方ないなあという気になってきた。晃哉も顔色も随分と戻ってきたので芳美はわざと乱暴に尋ねた。
「どうするの? うちに泊まるの? それとも帰る?」
「ここまで来て帰るわけないっしょ」
 へろへろの笑顔で答えて晃哉はまた水を飲んだ。
「でも明日、仕事なんでしょ?」
 だからこそ今夜は晃哉が家に来るはずはなかったのだった。
「芳美、明日CXまで送ってよ。俺、会社に車置いて来ちゃったよ」
「明日? せっかく寝ようと思って午前中だけ休暇取ってたんだけどな…」
「あれ、俺が泊まりにくるからじゃなかったんだ?」
 違うわよもう、と芳美は言うと立ち上がった。そして晃哉の手を引いて立ち上がらせた。
「早く帰って寝よう、その方がいいよ」
「帰っても寝られるかわかんないぞ?」
「酔っぱらい!」
 芳美は呆れて先に歩き出す。
「そういえば会うの、久しぶりだよな」
 後ろから晃哉の声がした。
 お互い、仕事が詰まっていて電話とメールだけの日が続いていたから、顔を見るのは数週間ぶりだった。
 遅いのよ、と芳美は思いながら、口元が緩むのを堪えることは出来なかった。


End 
もうこのオッサン嫌・・・(笑)
ななみさんからの8888&10000HITリクエスト、キィワードは「サンバイザー・髭もしくはドレッド(髪)・CXまたは洞爺湖・酒(ビールでもok)」でした。
・・・ぐったり。
あのー、気付いたんですけど、キリリクでR指定はいるようなのって書けないと思うんですけど(笑)
ナナの中での晃哉ってこうなんですよきっと。もう決まってるんです、これでも少しはオッサン度が増すように書いたつもりなんですがいかがでしょうか。オッサン通り越して只のエロオヤジという意見もありますが(笑)。しかしそれでもやっぱり阿呆なんですよね。ひとえにナナが阿呆だから(笑)
でもね、もうパターンだと思いますが、晃哉って絶対臆面もなく恥ずかしい殺し文句言えるタイプだと思うんですけどどうでしょうか。格好いいというより、適度に格好付け。しかもそれが何故か滅茶苦茶にタイミング良くてドキドキさせるの(笑)。そういう面があるから、この人は女が絶えないのではないかなあ、と密かに思っております(この話はちっとも格好良くないですけどね・・・)。逆にこういうスタンドプレィが出来ないのがカンナミ(笑)彼は絶対に格好付けたり気障な科白言ったりしたいのにイマイチ勇気が出なくて踏み切れずにタイミングを逃すタイプだとナナは思いこんでる(笑)
しかも今回、かなり短いです。重ね重ね、ななみさん申し訳ないです(笑)。
当サイトの管理人ナナへのメールは   →cs7_factory@hotmail.com 
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