■ピーター・スカルソープ (Peter Sculthorpe 1929〜 )
アース・クライ (1986年)
私がスカルソープという作曲家のことを初めて知ったのは、かれこれ6年前のことでした。日曜日にNHK-FMで放送されていた現代音楽の番組で『グレート・サンディ・アイランド』という管弦楽曲を聴き、その鮮烈な音楽が心に残ったのです。それ以来、私はスカルソープの管弦楽曲のCDが出るのを待ち望んでいましたが、最近になってやっとNAXOSから管弦楽作品集が出ました。
スカルソープはオーストラリアのタスマニア出身の作曲家です。彼自身は白人ですが、オーストラリア先住民の音楽や日本、インドネシアなどの伝統音楽から影響を受けているそうです。実際、管弦楽作品集を聴いても、西洋的な要素と非西洋的な要素が巧くブレンドされているのがよく分かります。スカルソープの作品には調性がありますが、聴きやすいと同時に深く心に刻まれるような作品が多いと思います。
NAXOSの管弦楽作品集の冒頭に収められている『アース・クライ(大地の叫び)』は、オーストラリア先住民の楽器であるディジェリドゥーと管弦楽のための作品です。ディジェリドゥーは朽木をくりぬいて作った管楽器(形状はアルペンホルンに似ている)で、倍音を含んだ独特の音が出ます。音階を演奏することはできませんが、豊かな表現力を持った楽器です。
曲はそのディジェリドゥーの独奏で始まります。自動車のエンジン音のような音でリズムを刻んだり、動物の鳴き声のような音を出したりしますが、それらの不思議な音は大地の精霊たちの声のように聴こえます。
その後、オーケストラのみの部分が続きます。それは日本の都節音階に近い節回しの旋律から成っていて、かなり聴きやすい音楽です。また、悠久の大地を思わせるスケール感があり、切実な祈りの感情も感じられます。
もう一度ディジェリドゥーの独奏とオーケストラが交互に演奏したあと、いよいよディジェリドゥーとオーケストラが共演します。打楽器の躍動的なリズムも加わって音楽は盛り上がりをみせますが、やがてリズム伴奏が止み、オーケストラが悲痛な旋律を歌う中、ディジェリドゥーが動物の吼え声のような音で訴えかけます。それは、確かに大地の叫びを思わせる音楽です。その後、音楽は静まり、余韻を残しつつ締めくくられます。果たして、大地は何を訴えているのでしょうか・・・
私はこの曲に、伊福部氏の『ラウダ・コンチェルタータ』に通じるものを感じます。一度聴いたら忘れられないような感銘を与えてくれる作品だと思います。
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『スカルソープ:アース・クライ、ピアノ協奏曲』
ディジェリドゥー:ウィリアム・バートン
ジェイムズ・ジャッド指揮 ニュージーランド交響楽団 NAXOS 8.557382
2005.01.24
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