クット・アッテルベリ(Kurt Atterberg 1887-1974)は、20世紀の前半に活躍したスウェーデンの作曲家です。 19世紀の終わり頃から、スウェーデンでは自国の優れた作曲家が現れ、活躍するようになります。特にアウリン、ペッテション=ベリエル、ステンハンマル、アルヴェーンらの活躍が目覚しく、スウェーデン音楽の発展に貢献しました。そして、彼らよりもやや遅れてアッテルベリが登場しましました。 アッテルベリは技師である父親と、オペラ歌手の娘である母親との間に生まれました。幼少の頃から音楽に親しんでいた彼は、電気工学を学ぶ一方で音楽の専門教育も受け、父親と同じ技師の仕事に就いてからも音楽活動を続け、9曲の交響曲をはじめとする数多くの音楽作品を創作しました。 アッテルベリの作風は、基本的に19世紀的な民族楽派と考えていいでしょう。ブラームスやマーラーなどのドイツ後期ロマン派のスタイルをベースに、スウェーデンの民俗音楽の要素をふんだんに取り入れた彼の音楽は、濃厚なロマンティシズム、雄弁なオーケストレーション、土俗的な生命力などが大きな魅力となっています。 私がアッテルベリの音楽にハマるきっかけとなった曲は、交響曲第8番です。初めてこの曲を聴いたときのインパクトは大きかった。一昔前のドラマやアニメの音楽を思わせるような俗っぽい表現にびっくりさせられました。「クラシック音楽で、交響曲でこんなことやって、反則じゃないか!?」と呆れると同時に、すっかり魅せられてしまった自分がいました。あとはひたすらのめり込むのみ。cpoレーベルのラシライネン指揮によるアッテルベリ交響曲シリーズを順次購入し、1枚聴くごとに感動を新たにしてきました。 アッテルベリの音楽は、20世紀の音楽としてはアナクロニズムであることは否めません。また、先人や同時代の音楽からの影響が明らさまに現れている箇所も少なくなく、ベタな印象を受けることもあります。でも、それでもいいのです。あの雄弁な表現と哀愁に満ちた情感は、他に換えがたい魅力となって聴き手に迫ります。何よりも聴いていて楽しいし、感動します。音楽の楽しみとは、こういうものではないでしょうか。聴き終った後に、「聴いたぁ〜っ!!!」という確かな満足感の得られる音楽。私は大好きです。 2003.04.30 |