心のチカラ
2011年2月17日(木曜日)
3●言葉の効果  人を信じる心が体変える


 プラシボを被験者に知らせると、プラシボの効果はなくなるのだろうか。
 米国のジョンスホプキンス大学のパーク博士らは15人の精神科の外来患者に薬瓶を渡し、「これはまったく活性作用を持たない砂糖の錠剤です。しかし多くの患者さんは一日三回、毎回一錠ずつ、飲み続けると症状が改善します。一週間したらチェックのためにまた来てください」と告げた。すると14人の患者のうちで13人の症状がよくなっていたのである。面白いのは、砂糖の錠剤だと理解していた人に効果が高く、医師の言うことが理解できなかった人には効果があまりなかったことだ。
 医師が「これを飲むと多くの人がよくなったと言っている」という点が大切だ。患者は「この砂糖の錠剤は特別で、多くの人にとって効果がある」と思うのだ。
 ここで関係しているのは、患者が医師の言うことを信じているということだ。医師が本当のことを言っていると受けとる。まさかプラシボの効果を調べるために言っているとは夢にも思っていないのだ。
 これは言葉というより、その言葉を使っている人を信じることが自分の心を変え、その影響で体の状態も変わるということをよく示している。
 心を変えるのは言葉だが、言葉は信頼があるから効果を示す。言葉は信じられることによって力を持つと言える。

 前に述べた過敏性腸症候群だが、鍼(はり)治療も効果がある。医師が症状を説明し、優しい態度で患者に接し、「何かあったらすぐに来ますよ」などというと、症状の改善度は著しい=図。
 痛みを感じるのは脳だ。もし脳の働き、仕組みが言葉、プラシボの影響を受けるなら、その結果として痛みを感じなくなったり、痛みを強く感じたりする。プラシボ効果は、それが働きかける人に心があるということが重要な点だ。心が関与しないところでは、プラシボ効果はないのである。
 これは祈りなどの効果についても言える。祈りによって目の前で茶わんが動いた(と思う)のも「私がそう思った」ということで、実際には動かなかったのではないだろうか。奇跡と称されるものは、心の動きがある場合にみられるので、心の働きのないところに奇跡がないからこそ、物理学などがゆるがない真実になるのだ。

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