心のチカラ
2011年9月8日(木曜日)
16●薬の値段と効果 「高いものは良い」は錯覚


 テレビでタレントに高価なワインと安いワインを飲ませ、どちらが高いワインかを当てさせる番組を見たことがある。一本150万円もするワインと1500円くらいのワインを飲ませるのだ。タレントは判別に苦しむ。最後は半数くらいの人が正解するのだが、半数の人は1500円のワインを「非常にこくがあり、おいしい」などと評し、これが高いワインだと言う。
 実際に正解した人に聞くと彼らはすでに何回も間違っていたことがあるという。そして「少し苦いような、味が重苦しいようなワインが高い」などと言う。おいしいから正解したのではなく、「このような味のワインが高いのだ」と学習し、それを当てたことが分かるのだ。
 これはワインだけでなく、100グラム2万円の極上のステーキと1000円のステーキを比べさせても正解が出ないことがしばしばである。多くの人は「一体よいワインとか、ステーキとは何なのだ」と疑問を持つ。タレントがワインのうんちくを傾けても、当てにならないのではないかと思う。  実際、私たちは「高いものは良いはずだ。なぜならそれは、専門家が高い値段をつけているからだ」と考える傾向がある。良いから高いのではなく、高いから良いと思うのだ。
 これは薬についても当てはまる。ボランティアを集め、手首に電気ショックを与える。人によって痛みの感じ方が違うので、同じくらいの痛みを与える電流の量を決める。その後次第に電気を強くする。耐えられない痛みを100点とし、今の痛みの点数を述べさせる。次にコデインに似た鎮痛剤を飲ませる。一方は2ドル半で、もう一方は10セントの薬だ。だが実は、両方ともプラシボで、効果はない。

 薬を飲んだ後に電気ショックの強さを次第に増してゆく。おのおのの電気量に対して、薬を飲んだときに痛みの程度が減ったかどうかを点数で示してもらう。
 すると図に示すように、高い"薬"を飲み、痛みが減ったという人が安い薬を飲んだ人より多く、痛みが増えたという人は少なかった。つまり、高い薬は効果があると思っているのだ。
 最近ジェネリックと呼ばれる安い薬が売られている。薬の特許が切れたものを売っているので、効果はもとの薬と同じだ。しかし、ジェネリックの売れ行きはあまりよくないと聞いている。
 これは人々の中に、高い薬の方が効くはずだというプラシボの意識があるからである。

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