抗うつ剤が最初に使用された時の報告を見ると、明らかに効果があったと考えられる。それが今になってほとんど効果がないというのはどうしたわけだろう。
抗うつ剤に効果があるとする医師たちは、実際に患者はよくなったと言っていると主張し、効果がないのは軽度のうつ病の場合であって、重度のうつ病には効果がある場合が多いと主張。さらに抗うつ剤の使用を止めると非常に不安になったり、症状がぶり返し、自殺の可能性も増すなどということを述べて抗うつ剤使用を正当化している。
これに対して、抗うつ剤はプラシボと効果に差がないと主張する人たちは、重度のうつ病でも抗うつ剤の効果は51点満点のハミルトンのうつ病指数を2点くらい軽減するだけとし、重度のうつ病にも効果がないと主張する。
抗うつ剤には副作用と依存性があり、薬を止めると一種の禁断症状が現れる。これが抗うつ剤を止めたためにうつ病の症状が出たのだと間違って解釈されると言っている。自殺は抗うつ剤では防げないとも主張しているのだ。実際、自殺者の6割以上の人は医師の治療を受け、抗うつ剤を使っているとされる。
こうしたことから抗うつ剤への期待、つまり新しい薬はうつ病に効くはずだと思っている人に抗うつ剤が効き、このような人の数が増えているという意見も出ている。
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コロンビア大学のウオルシュ教授らは、抗うつ剤の治験が行われた時期、つまり抗うつ剤が新しくなってきた時期とプラシボの効果を比較した。すると燐分発表が新しいほど、つまり最近の抗うつ剤ほど、プラシボの効果が高いということが分かった。1980年には患者は20%くらいだったが、2000年には35%くらいに増加した。薬の効果も同じような比率で増加した。しかし薬の効果とされるものの中の多くは、プラシボ効果だということを考えると、やはり新しい薬が開発されるほど、その薬のプラシボ効果が高くなるということが分かる=図。
このことは新しい薬が出ると、それに対する期待が増し、それが薬の効果 を増しているのではないかと考えさせる。 |