心のチカラ
2011年6月16日(木曜日)
10●期待の効果 脳内に快感、痛みも軽減


 プラシボには食べ物をもっとおいしく感じるとか、気分が楽しくなる、さらに最近では脳の機能がよくなるという研究結果 も示されている。喜びを期待させる作用がプラシボにはあるのだ。喜びを待つという効果 だ。これは脳のどこの作用だろうか。
 スイスのフリーブルク大学のトレムブレイとシュワルツ両博士はサルを使って、脳内の神経細胞の活動を調べた。
 サルは干しブドウが最も好きで、次にリンゴ、シリアルの順になる。図に示す干しブドウとリンゴの組み合わせ実験をする。干しブドウと結びつけられたマークがモニター画面 の右または左に現れて消えた後に、もしサルがマークの出た側のバーに触れれば正解で、やがて干しブドウが出てくる。サルが干しブドウを待っている間、つまりサルが干しブドウを食べることを強く期待している間中、前頭前野の眼窩(がんか)回の活動は高まった。
 サルはリンゴよりも干しブドウが好きなので、次にリンゴを用いて同じ実験をすると、リンゴが出てくるまでの脳の活動は、干しブドウを待つ間の活動よりも弱い。
 「良いことがあるぞ」と期待させる場所は前頭葉の前の下の方にある眼窩回だ。最近では眼窩回の活動も前頭葉の外背側部により指令を受けているということが分かった。
 興味深いのは、サルが期待の程度を相対化していることだ。A(リンゴ)とB(シリアル)を比較すれば、Aの方が反応は高い。C(干しブドウ)が最も好まれるから、CとAを比較すれば、そのときにCへの反応はAより高い。Aへの反応はCと組み合わせたときより、Bと組み合わせたときの方が高い。つまり、どのように組み合わせるかで反応は異なるのだ。

 こう考えると、私たちは「よい情報だ」と思うような場合には、それを前頭葉の外背側核が受理し、眼窩回に期待を持たせるような反応を起こさせ、腹側被蓋(がい)を刺激して側坐核を活性化して快感をもたらし、中脳水道周囲核を刺激してβエンドルフィンを出させるということが分かる。

 これにより不安がなくなり、痛みも軽減し、食べ物などの体や脳に及ぼす効果が変化し、病気が治ったりするのだ。
 これらのことが意識に上ることなしに起こることがプラシボの特徴だろう。
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