うつ病を防げ
2010年6月10日(木曜日)
6●うつ病の症状  抑うつ気分や睡眠障害など


 精神医学の診断と治療のバイブルとされる「精神疾患の分類と診断の手引き DSV-IV」を読むと、「以下の症状のうち五つ(またはそれ以上)が同じ二週間の間に存在し、病前の機能から変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも一つは(1)抑うつ気分または(2)興味または喜びの喪失である」と書いてある。
 普通の常識を持つ人にもなかなか意味が理解できない言葉が並んでいる。「病前の機能から変化を起こしている」というのは、このような状態になる前にはこのようなことはなかったという意味である。
 ではその症状は何かというと、一例をあげれば、
(1)その人の言明(例えば悲しみまたは、空虚感を感じる)か、他者の観察(例えば涙を流しているように見える)によって示される。ほとんど一日中、ほとんど毎日の抑うつ気分、あるいは
(2)ほとんど毎日の不眠または睡眠過多などという項目が九つ並んでいる。

 うつ病の診断が難しいということは、うつ病の原因を探ることが難しいことにもつながっているし、治療はもっと難しいことを意味する。
 うつ病は過労、ストレス、フラストレーションなどで引き起こされる。朝青龍関が急性ストレス障害と診断され、うつ病の前段階だと言われたことがある。これなどは強度のストレスもうつ病を引き起こすという例である。

 否定型のうつ病も上司の叱責(しっせき)などが引き金になる。実際、うつ病は同じような人種でも住んでいる場所により発症率が異なる=図。文化、ものの考え方、育てられ方の影響も発症に関係している。
 うつ病は最近現れた病気ではない。私たちが自意識を獲得して以来、うつ病はその傍らにいたのだ。それは2500年前にヒポクラテスによっても記載されている。ヒポクラテスは健康や病気は体液のバランスによりもたらされると考えた。当時は私たちの体液には四種類があり、それは血液、粘液、黄色胆汁、黒色胆汁だとした。その割合が正しければ病気にならず、その割合が異常なら病気になるとした。
 私たちの性格もこの体液の量により決まると考えられた。血液の多い人は多血質で、陽気な人とされた。黒色胆汁の多い人は陰気な人、病的にはうつ病の人だとされた。ヒポクラテスが精神の状態を体液で表したということは、この異常が体質、つまり生まれつきだということを暗に示している。

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