うつ病を防げ
2010年4月22日(木曜日)
3●抗うつ薬の総合判断   効果は誇大化されやすい


 うつ病の薬については後に述べるが、ここでは現在使われている有名な抗うつ薬の効果 がどのようにゆがめられて発表されたかをみてみよう。
 パキシルという薬などは「効果あり」とされたものが7研究、「効果なし」も7研究、残り2研究は「効果 が疑問」ということになっている。ところが効果ありとされたものはすべて発表されているのに、効果 なしとされたもののうち、公表されたものは2研究のみである。疑問の研究の一つは効果 があるように書かれている。
 プロザックは有名で、そもそもうつ病の薬が効果を持つということが知られるようになった最初の薬である。これは日本では発表されていない。これには効果 ありの研究が多く、その大部分は公表されている。一方、ジェイゾロフトは効果 がないという報告の方が多いが、米国でも公表されていない。
 今まで述べたデータが選択的に発表されたということが製薬会社の圧力なのか、論文がよくなかったのか分からないと研究者は言っている。
 もっと問題なのはメタアナリシスに用いる効果サイズである。メタアナリシスは数多くの研究をまとめて、、総合的に判断した際、その薬が効果 があるのか、ないのかを決める方法である。その効果は効果サイズで表され、これが大きいほど効果 が大きいということになる。

 米国食品医薬品局(FDA)での判定の場合は、否定のデータも入れるが、論文として公表されたものを学者が議論するときには効果 があったとするデータのみで処理する。その結果、公表されたデータでは効果 サイズが高くなるのだ。パキシルでは40%、ジェイゾロフトでは64%も高くなる。発表された論文だけ見ると効果 が非常にあったように見えるのだ=図。その後学会で議論されたり、販売の際に使われるデータは公表されたものだけになるのである。
 効果がなかったという結果は論文になりにくいので、その結果をまとめるメタアナリシスも、効果 ありという判定になりやすい。
 多くの研究をまとめて、総合的に判断した結果、効果ありとするのであるから、その報告を読んだ医師も専門家も信用する。
 これは副作用にも言える。 総合的に薬は副作用が少ないと発表されがちになる。最近の抗うつ剤は副作用が少ないと医師が信じるのはこうした理由にもよる。

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