うつ病を防げ
2010年12月9日(木曜日)
19●薬のプラシボ効果 2 期待が大きい人 よく反応


 うつ病は最も薬のプラシボ効果が表れやすい分野だとされる。英国プリマス大学のカーシュは19の研究で、2318人のうつ病患者に薬が投与された結果を分析した。
 驚いたことに、抗うつ剤の効果により症状が改善された率は25%で、75%はプラシボ効果なのである。さらに薬の効果で改善した人もプラシボの影響を受けていた。薬で症状が改善した人も「これが新しい薬だ」という影響を受けやすい人たちだったのだ。
 米国コロンビア大学のウオルシュらは1991年から2000年までに発表された75の研究結果を調べた。するとプラシボで症状が改善した人は29.7%、薬で改善した人は50.1%だった。どのような薬で症状が改善したかを調べると、トフラニル、アナフラニルのような三環系の抗うつ座意に反応した人は46.9%、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に反応した人は48.9%だった。こうした人も新しい薬が開発されて治療されているという意識の影響を受けていることは間違いない。

 全部とは言わないが、プラシボによる効果を引くと、薬そのものによる効果は20%の人にしかみられないということになる。
 興味深いのは、薬の効果もプラシボの効果も論文の発表年次が後期になるほど著明になっていることだ。薬が発売されてから時期がたつと、薬のプラシボ効果が増加していく。現在でもこの理由は解明されていない。
 次は投与される薬への期待度と薬の効果の関係だ。米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校のクレルらは、リポキセチンという抗うつ剤の試験をする際、薬への期待度を聞いた。(1)効果はないだろう(2)ある程度効果がある(3)非常に効果がある―という設問に答えさせた。すると大きな期待を寄せている人は薬に非常によく反応したことが分かった=図。
 薬が効くと思う、あるいは効くといううわさを聞く、さらに信頼する医師などから「この薬は効く」と言われ、それを信じると、薬は非常に効果を発揮するということになる。
 こうしたことはパーキンソン病の治療薬や腰痛など痛みの治療薬にもみられる。医師が患者から信頼されることがいかに治療の上で大事かが分かると思う。

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