うつ病を防げ
2010年9月2日(木曜日)
12●薬 4   効果なく副作用多いものも


 SSRI、SNRI(セロトニン―ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)は副作用があまり強くないということで売り出され、最初はあまり問題なかったが、その後の研究、調査で副作用の問題が提起された。
 日本で売られているルボックス、パキシルを例にとると、一般的な副作用として最も多いのは吐き気だ。ルボックスは25%、パキシルも17%の人にみられる。意外に多いのが疲労感である。本当に身体が重いという感じで、何かうつ病の症状のようだ。でも気分は暗くないというところがうつ病とは異なる。
 セロトニンは元気を出させる物質ということになっているが、摂取しているとなんとなく疲れやすい気持ちになる。大体15~20%の人にみられるが、ほとんどの人にみられるという報告もある。5~10%前後の人は物事に神経質になる。
 副作用で最も重大なのは性的障害だ。男性は性的不能が起こり、女性も性に関心を失う。これは60%くらいの人にみられる。使用後禁断症状を示す人も50%くらいある。

 問題は再発である。調査にもよるが、60%の人に再発がみられる。再発がこれほど多いということは、SSRIがうつ病を根本的に治す薬ではないということを意味する。 さらに重要なことは本当に抗うつ剤が効果があるかという調査の結果である。米国食品医薬品局(FDA)は今まで発売されている80以上の抗うつ剤の効果を再調査した。すると約50%の薬は効果がなく、約30%の薬はプラシボ効果で、効果があったのは20%前後だったと報告した=図。
 これは非常に重要だ。一般に心の病に効果があるとして発売された薬は、最初は評判通りによく効く。ところが、誰かが「あまり効かなかった」と報告すると、次第に効果がみられなくなってくるのである。
 こうした結果が出るもう一つの理由は、治験の結果うまくいかなかったものは論文にならないことによる。米国では治験はFDAにすべて報告させるが、それが論文になるかどうかの規制はない。多くの薬は製薬会社の援助のもとに行われるので、効果がない、副作用が多いものは製薬会社が論文にさせないことはすでに述べた。
 実際、FDAに提出されたすべてのデータを見ると、論文になっている結果よりも効果ははるかに少なく、副作用が多いのである。

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