うつ病を防げ
2010年8月19日(木曜日)
10●薬 3   抗アレルギー剤も有効


 風邪をひいたときや、アレルギーに悩むとき、抗アレルギー剤を投与されると眠くなった経験はないだろうか。
 抗アレルギー剤のうちから脳内のモノアミンを増やす薬が見つかった。スイスの精神科医ローランド・クイーン博士がうつ病の薬として使い、さらに効果を上げた。患者は最初の数週間、まるで効果を示さなかった。ところが、その後急に効果を示し、うつ状態は劇的に改善されたのだ。
 この物質は三つの環状構造をもっているので三環系の薬と言われ、その代表がイミプラミン(商品名トフラニール)である。三環系の抗うつ剤の種類を述べておこう。かっこ内は商品名だ。
・イミプラミン(トフラニール、イミドール)
・クロミプロミン(アナフラニール)
・アミトプリチン(トリプタノール)
・ノリトリプチン(スルモンナール)
・トリミプラミン(アモキサン)
・アモキサピン(アモキサン)
・ロフェプラミン(アンプリット)
・ドレスピン(プロチアデン)
・デシプラミン(アモキサン)

 これらの作用機序は、シナプスから再度モノアミンがもとの神経末端に取り込まれるときの通路、モノアミン輸送体のふたをしてしまい、モノアミンがもとの神経に取り込まれないようにする。
 その結果、長い間モノアミンがシナプス間隙(かんげき)に存在し、受容体を刺激するので、気分を良くする効果が増加するということになる。これを再取り込み阻害剤という=図。
 イミプラミンは非常に効果があったが、副作用も強かった。そこで副作用がなく、脳内のセロトニンだけに作用する薬が開発された。
 1980年代にイーライ・リリー社により発売されたプロザック(化学名=フルオキセチン)である。この薬はまたたく間に抗うつ剤の主役になり、世界中で1千万人以上の人に処方された。
 プロザックとかイミプラミンはセロトニンなどの量を増やすと言ったが、じつは有効利用するだけというのが正しい。特にセロトニンの場合は選択的セロトニン再取り込み阻害剤、SSRIと名づけられた。

Next