*ほぼ聞き取れたのですが、どうしても聞き取れなかった部分は「・・・」にしてあります。ご了承下さい。 |
◆ミステリー談義 Part3 | |
斎藤 | えと、それではですね、この辺でですね、もうひと方、スペシャルゲストをですね、お呼びしたいと思います。映画監督の明石知幸さんをおよびします(拍手) (明石さん登場しお辞儀をしてまた拍手) |
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斎藤 | 夕べは、遅くまで。お疲れ様でした。(客席に)飲んでたんだよ(笑) どうせ、今日来るお客さんは京極さんの客だから2人でいじめようということで(笑)それでこういう風に席をですね(爆笑) (テーブルが2つあって、1つに斎藤さんと明石さん。もう1つのテーブルに京極さん1人だけが座っている。写真参照) (京極さんめちゃめちゃ渋い顔)えとですね、あの紹介します。明石監督はヒット作『免許がない!』を監督して、注目を集められ(観客「おー!」)(明石さんに)ね?昨年のミステリー映画祭で、人気を呼んだサブ監督の『弾丸ランナー』ではプロデューサーをですね。 |
明石 | あの、京極さんじゃないですけど、役者もやらせていただきました(笑) |
斎藤 | ああ、そうなの?えーそれから今回の映画祭には最新監督作『キリコの風景』を。今日?10時半から、上映したんです。で、そんな明石監督ですけれども、あの、ちょっと専門的な質問していいですか? |
明石 | はい。 |
斎藤 | 明るい石と書いて明石? |
明石 | はい。 |
斎藤 | あ、そうなんですか(笑)明石海峡では? |
京極 | 専門ですか?それ(笑) |
明石 | ええ(笑)あの〜昔、瀬戸内海を暴れまわった海賊がいまして、それを明石水軍といったらしいですね。それみたいですね。 |
斎藤 | と、いうわけで海賊の末裔でございます(笑) 今ね、お話を京極さんから邦画に対する愛をですね。目からウロコが落ちる思いで、うかがったんですけども、監督、いかがですか? |
明石 | いや、もう毎回邦画の上映の時には、先ほどの京極さんのお話を5分間、お客さんに聞かせたいですね(笑) |
斎藤 | 「公演に先立ちまして」(笑) |
明石 | はい。「京極夏彦から一言あります」と(笑)ぜひ |
斎藤 | 非常口説明する時にね(笑) |
京極 | 邦画振興会でも作りましょうね。 |
明石 | 。それで1回聞いた方は、安くなるというような(笑)システムを作れば。 |
斎藤 | 聞いたっていうしるしを持っていけば(笑)それはいいかもしれないね。そういうアイデア。 えーとね、たまたま今回、大林監督がスペシャルゲストでですね。それで『廃市』という映画を上映したんですけど、16ミリですね。えーと、小林聡美さんが、初々しい小林聡美さんが出てらして、デビュー作品が『廃市』であると。で、明石監督の『キリコの風景』が『廃市』の何ちゃんだっけなぁ?なんとかちゃんが(笑)成長して函館まで渡ってキリコというクラブのママになった、っていう、非常に連綿と繋がっているなぁという気がしてびっくりしましたが。そういう映画じゃないんですね?(笑)じゃないですね(笑) |
明石 | 大林監督に怒られますからね(笑) |
斎藤 | マズイ。あの〜ミステリー映画っていうテーマでお話したいんですけど。 |
明石 | それでかなり先ほどから京極さんと斎藤さんがミステリー映画について深く語るのかなと思って、緊張して聞いてたんですけど、案外良かったと思ってるんですよ(笑)あの、僕は『妖怪大戦争』の話が出たじゃないですか。ホッとしましたけれども(笑)ええ、ミステリーを語らなくていいんだっていう(笑) |
京極 | この中でミステリー作家、斎藤さんだけだから。 |
斎藤 | いやいや(うろたえる)あのその、何でそうなる?あなたも協会賞、貰ったから責任がある。ミステリ映画って意識してご覧になりました? |
明石 | え、ミステリーなんですかねぇ。あんまりミステリー映画っ、これがミステリーだ!っていうようなかたちでは、あんま見てないんですけど、たとえばあの〜盛岡って競馬場がありますよね?それでまぁあの、キューブリックの『現金に身体を張れ』なんていう映画なんかあるんですけれども、ああいうのもミステリーといえばミステリー。 |
斎藤 | ええ、あれはミステリーですね。 |
明石 | ええ、そんなことを考えながら、先ほども競馬場に(笑)行ってきました。 |
斎藤 | どうでした? |
明石 | いえ、チダ君ていうジョッキーがいまして、名前がおんなじだったんで、買ったらしっかり2着に来てくれました(拍手) |
斎藤 | 去年はジョセフ・ジョバンニさんがゲストでいらしたんですけど、やはり競馬場にご案内して、僕は一緒じゃなかったんだけど、ジョバンニさんに「どうでしたか?」って聞いたら「勝てなかった」って僕にいったんだけど、あとでスタッフから聞いたら「スった」って(笑)ハードボイルド系はね、スっても言わないの(笑) |
京極 | ゲストはやっぱりお金落としていくほうがいいですよね。 |
斎藤 | そりゃそうです。盛岡にねぇ。 |
明石 | ミステリー映画の話ですよね(笑) |
斎藤 | そうです(笑)あの『免許がない!』は、森田芳光さんの(脚本)。 |
明石 | そうです。 |
京極 | 今度もそうですよね。 |
明石 | そうです。 |
斎藤 | あれは、館さんの映画は『免許がない!』は裏返しのハードボイルドっていう感じで見てたんですけどね。どうでしょうか?どうでしょうかっていうのも(笑)あれですけど。 |
明石 | 裏返しの(笑)難しい質問だなぁ(笑)でもなんかあの、教習所の教官に関してはけっこうちょっとハードボイルドでやってくんないか、というかたちで要求はしましたけれども。 |
斎藤 | 前の映画もハードボイルドなんですよね? |
明石 | 鶴太郎さんが演った教官なんかでも、京極さんみたいにこう革手袋、ドライビング手袋さしたりとか。 |
斎藤 | (京極さんを指して)あの手袋の話題に触れてはいけないんですよ(爆笑)文士劇の話と手袋は(笑)(京極さん渋い顔) |
明石 | 文士劇も拝見させていただきました。(京極さんさらに渋い顔) |
斎藤 | そりゃ言っちゃいけない!(大爆笑)しまったー! |
明石 | ぜひ、次回キャスティングさせていただきたいと(笑) |
斎藤 | やはり。いいでしょう?役者。 |
京極 | 僕がですか?死体の役と幽霊の役は(笑) |
斎藤 | それが不満だったかー!(爆笑)文士劇はいいけれども、死体の役が不満だったということですね。 |
京極 | いや、死体の役だったら出てもいい、文士劇の不満はですねえ(笑)死んでなかったってことですね。最初死んで、そのまま最後まで死んでる、というのが(笑)。そうすると、2時間たっぷり眠れる、と(笑) |
斎藤 | 今回の京極さんは忙しくてですね。次の本のために切羽詰まってて、ほとんど寝ないで盛岡に来てるんです(観客「おおー」)盛岡に、来れるようなスケジュールじゃないにもかかわらず、逃げてきたんじゃなくて(笑)編集者もいますから逃げてきたんじゃなくて同業者として言えば。あの、盛岡に来ればその分眠れると。寝るために来た!あ、そんなこと言っちゃいけない(笑)こんなにファンが集まってるのに。すみませんでした。 |
京極 | ただね、これでもし何かあった時「盛岡に行ったからなぁ」って言い訳ができるじゃないですか(笑) |
斎藤 | あーー。そういう伏線もあったわけですね。 あの、さっき原作モノの話をしてたんですが。 |
明石 | いや、僕自身もまだ原作モノは。 |
斎藤 | オリジナル、ですよね? |
明石 | はい。ほかにもまぁ何本か撮ってるんですけど、すべてオリジナルで。あの、京極さんのような優しい原作者そんなにいませんので(京極声立てて笑う)はい。 |
京極 | そうですか? |
斎藤 | そうですか? |
明石 | はい。この間もあの、ある、まぁ有名な作家の、あの(口篭もる) |
斎藤 | こんな人数だから言ったって大丈夫ですよ。東京じゃないし(笑) |
明石 | ちょっとビデオが恐いんですけど(笑) |
斎藤 | ビデオ撮影ダメって聞いても(笑) |
明石 | 有名作家の原作を、映画化しようとしまして、はい。あまりにも変え過ぎた、原作者に対する敬意がない!ということで降ろされました。 |
斎藤 | あれ?脚本の段階で?脚本にしたら? |
明石 | はい。それをさっき聞いて、京極さんの原作にしとけば良かったな、と。(笑)そう思ってます。 |
斎藤 | あの、それはね、京極さんのように、映画がね監督のものだからっていう。 僕もそうなんですよ。あの『ル・ジタン』という作品ね映画化したいっていう話があってね。それで監督さんがね「ついては」って恐る恐る口を開かれた時に、お好きになすって下さい、って言ったのね。おんなじものは見たくない、それは小説で十分ですから、って。あなたの『ル・ジタン』に撮って下さいって言ったんですけれども。みんながみんなそうじゃないですよ。原作通り、じゃないとダメ!っていう、むしろそういう人のほうが。 |
京極 | 多いんじゃないですかね。話聞いてると。原作通りにしなきゃダメ!っていう人がいて、原作通りにしなきゃダメだろう、という作り手がいて。さっき言った通りにね。で、原作通りにならないから。所詮違うものですからねぇ。違わなきゃいけないのに。昨日大林さんのお話で、大林さんは原作もけっこう使われててやっぱ変えちゃう、でも変えるのはその原作を活かすために変えるんですよね。すごく良く分かってる。そういう姿勢が、むしろ大事で。原作通りったって、その、無理でしょ、それは。どこまで敬意を払って、どこまでスピリットを大事にするか。いろんなものがありますから。でも原作者はワガママ言っちゃいかんですな(笑) |
明石 | 1つ声を大にしてそれを! |
京極 | 作品を世に放った段階で、作品だけで独立してますから、読者のものでしょう。それと監督さんなりプロデューサーなりそれを読んで、映画にしたいと思ったんだったら、それはもうその人のものなんだから、若干のギャランティを貰えるだけでありがたい、と(笑)それが原作者の、礼儀!(笑) |
明石 | 京極さんがあの、例えば『嗤う伊右衛門』なんか映画化しようと思って、やっぱりこう、頭のくだりからこう、やっぱりもう、これだけ絵が出来てるんだから、脚本通り撮っても面白いなぁと思ってやったとしても、あのくだりだけで、直助と伊右衛門のくだりだけで1時間半超えちゃう(笑)それはありますけれども。 |
京極 | そうなんですよ。あの、だから僕はね、思うのはね、小説家っていうのは映画化できないような小説を書くべきだと。映画化できるんだったら映画で見たほうがいいわけですよ。映画化できやすい作品なんてのは、脚本書いたほうがいいわけね。脚本書いて映画にしてもらってみなさんに見ていただいたほうが、感動が呼べるだったら、それは脚本にするべきでしょ。小説でわざわざ出すんなら、絶対に映像化した時には「これは出せないぞ!」というものにしないと、小説を書く意味ない、と思うから。小説を書く時は絶対映像化、をさせまいという気持ちがある。(明石さん声立てて笑う)で、あえてそれをやろう!という監督さんには、それを上回る、あるいは全く違った監督さんなりの映画を、作りたいんだ、と。その監督さんの中の、作品を作る力を呼び覚ます、手助けをしたいなぁと。原作っていうのはね、そう思っているでね。だから、原作と違うからダメェ〜!とかっていうのはちょっと。ただ、いろいろあるんですよね。あの、プロモーションの問題がね。出版社と映画の配給会社と。 |
斎藤 | ああ。これがだから、この映画がそのまま、商品化とか。 |
京極 | だから逆にね、そういうのがその政治的なしがらみもいろいろあるでしょう。製作する方、いろいろ大変なんだろうな、と余計愛が深まるんですよ(笑) |
斎藤 | その、製作するのが大変なんだろうなぁというその、いくつか進行中の計画は、京極さんのがあって、僕のはお金が集まんないからできないみたいなんですけど、そういうご苦労は、たくさん経験してるでしょ? |
明石 | そうですね。でも、あんまりあの、僕の場合まぁほかにも、この間なんかプロデュースやったんですけれども。 |
斎藤 | プロデュースっていうのは、お金集めることですよね? |
明石 | はい。はい(笑)イコールお金集めという、いかに人を騙すかということで(笑) でもそんなにお金に苦労したってことはあんまりないんですけど。 |
斎藤 | そういう人は珍しいですね。 |
明石 | そうですね。なかなかないんじゃないかって。 |
京極 | プロデューサーやられてる時と、実際監督される時というのは、だいぶ、そのメンタリティとか違うもんですか? |
明石 | いやもう、客観的にも違うでしょうね。 |
京極 | 使い分けないと。 |
明石 | 使い分けができればいいんですけど。 |
斎藤 | 監督にこう口出しとかはしないですか?プロデュースって。 |
明石 | あ、あの〜もちろんシナリオが1番大きいですから何つっても。その辺のところはかなりやっぱり詰めてディスカッションしてますし、あと編集の部分ですね。だからプロデューサー、が監督になんかアドバイスしたりとか、できることってやっぱりシナリオと編集の段階じゃないとなんかこう。現場のほうはある程度任せなきゃいけない。それをいちいち何か細かいこと言ってたら、時間いくらあっても足りないっていう部分がありますので。 |
京極 | 今日、あの『キリコの風景』朝、見させていただいたんですけれども。 |
明石 | ありがとうございます。 |
京極 | あれはあの、キャスティング、なんかは明石さんがやっぱり仕切られたんですか? |
明石 | そうですね、だいたい私の希望通り。 |
京極 | そうですか。すごく感心したんですけど手法がね。あれはシナリオは、中に、まぁどのくらい書き込まれたシナリオか分かりませんけれども、映像的な感性としては、やっぱり全面的に明石さんの考えられた通りに、作られたと思うんですけど。 |
明石 | そうですね。いろんなパターンで撮ってるんですけれども、だいたい風景の中に、こういった人物の置き方をしたいな、っていうのはほぼ思い通り。 |
京極 | とても、こう構造がぼく好みの感じだったんで、とても面白く見させていただいたんですけど。なんともその、あれですけど、見てらっしゃらない方もいるでしょうから。あの見てらっしゃらない方はですね、ぜひ見てください。とても面白い、面白いというか。面白いって一口で言っちゃうとね、なんかお世辞みたいですけど、そういうお世辞抜きに見ていただいて、いろいろ感じていただけるだけの映画ですので。見てない人は見て下さいね(笑) |
明石 | あの、みなさんよく聞きましたね?(笑)今の。京極さんと共通体験できますので。ぜひ。 |
斎藤 | 「この映画、京極さんも感激したんだね」と(笑)2度楽しめる。 あの映画は通常と公開形態が違うっていうのは。 |
明石 | あの、割合ちっちゃな全国の20館くらいの公開になりますけれども。盛岡もいちおうフォーラムのほうでやって下さるという話もありますので、ぜひ、みなさんのお力で(笑)公開にこぎつけたいと思います。 |
斎藤 | いや、もう大丈夫でしょう(と京極さんを見る) |