Movie Corner
第23回 ぴあフィルムフェスティバル

2001.6.22〜7.2
東京国際フォーラム

◇Smap Short Films感想
◇Movie Index
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■招待作品 新映像スペクトラム Featuring石井克人 -June22.2001
『Weeklyぴあ』で応募したチケットに当選し、完全招待制のプログラムに行ってきた。

生の石井さんはとても“ユルい”感じがした(悪い意味ではなく)服装は「寝起きです」と言われてもおかしくないTシャツにスウェットで、髪は寝癖はないが無精髭あり。なーんか誰かに似てるなぁと思って、ふと顔が浮かんだのが奥田民生だった。歳も同じくらいだし、見れば見るほど雰囲気が同じような気がしたんだけど、そう思ったのは私だけかな。

トークは経歴や考え方などが中心で、話してくれた順番はバラバラだったけど、以下私が調べたことも盛り込んで順番に書いていきます。

浪人時には本屋に行って一日中美術書を見ては自分の好きな絵画や彫刻を見つけていたらしい。そして大学(武蔵美)では授業と関係なく自主的にアニメなどを作っていて、就職活動ではそういうのを面接官に見せていたそうだ。また漫画を描いて出版社に送ったら評価され、漫画家として誘われたらしいが、認められたってことだけで満足しちゃったらしい。そして東北新社を受けた時は面接官にハッタリをかまして見事入社にこぎつけたそうだ(笑)

会社に入ってからはCMディレクターとしてコカ・コーラやマツダのCMを手がける。しかしCMばかりで飽きてしまったようで、会社の仲間たちと映画を撮ることを計画する。しかし著作権の問題等で会社側に反対され、頓挫するかと思いきや、その後会社から資金が出たそうだ(すごいね)そして完成したのが『8月の約束』(私はこれ見てないんだ)
この作品は「ゆうばり国際・冒険ファンタスティック映画祭」のビデオ部門でグランプリを受賞している。

その後はまたCMを撮ってたらしいんだけど、その間も映画のビデオから好きなシーンやアングルを抜き出し、どのように撮影しているのか日々研究していたそうだ。
会社では『鮫肌』の企画が持ち上がっていたが監督が決まっておらず、『鮫肌』が好きだった石井さんが担当することに。脚本も何人かが書いたそうだが、結局それも石井さんが書いたものになったそうだ。この作品が大ヒット。

そして『鮫肌』を見たSMAPサイドからMusic Clipの依頼が来る。しかし海外の映画祭に参加することになっていた石井さんは断ろうとしたが、SMAP側がスケジュールを合わせることになり引き受けたそうだ(そこまで気に入られたのね)大急ぎで制作が始まり、石井さん曰く天才プランナーの多田琢氏より脚本が渡され、石井さんが書き直し、それをまた多田さんが書き直し、という作業が繰り返されること3日。撮影3日、編集やら何やらも3日ほどで計10日で完成。この作品はタランティーノを意識しつつ、さらにバタ臭くしたそうだ。このMCが好評で、その後もSMAPとの仕事を数多く担当しているようだが「彼らは何でもできる」とのこと。それは「BLACK〜」や「MUSIC〜」を見ていて分かる気がする。

また我修院達也や森下能幸、津田寛治など石井作品常連の方もいるが、それはもう好みだからだそう(笑)無理して別の人を使うよりも、一緒にやりたいと思う人とやっていきたいそうだ。そこはどうなの?って気もする。毎回同じじゃん、と思われないようよっぽど新しいアイデア入れないと難しいのでは。同じ人を使っても常に全然別のものを見せるぞ!という心意気ならばすごいけど。

それからの経緯は私は聞いててもよく分からなかったんだけど、長編2作目の『PARTY7』までは東北新社の社員として撮ったのかな?現在は退職し[GRASSHOPPER]という会社を作り、その会社で制作した作品の第1弾が「BLACK ROOM」であり、第2弾が「MUSIC POWER GO!GO!」なんだそうだ。

今回のプログラムで上映した作品は全部で4つ。SMAPモノが3つと一番最後に上映した「WILD WORLD」という作品は、石井さんが学生の時に友達と作ったものだそうで、見せるのは非常に恥ずかしいとのこと(笑)この頃は色々考えすぎてたらしく、それが作品に表れているそうな。
確かに今の作品の方がいい意味で力が抜けてるっていうか、石井さんの見た目同様に“ユルい”感じがするな。
◆今まで監督した映画
 『8月の約束』(1995)
 『鮫肌男と桃尻女』(1999)
 『PARTY7』(2000)

◆最近のCM作品
 田辺製薬「アスパラドリンク」
 SKY PerfecTV!
 富士通「FMV」

◆今回上映した作品
 SMAP BIRDMAN「FLY」Music Clip
 『世にも奇妙な物語SMAPの特別編』より「BLACK ROOM」
 『Smap Short Films』より「MUSIC POWER GO!GO!〜ダモン君の巻」オリジナルカット版
 「WILD WORLD」
というわけで今回のプログラムで上映された作品の感想。

◇「FLY」Music Clip
歌の部分を見たことはあるけど、ロングバージョンを見たのは初めて。全部で20分くらいあるのね。最初に黒人の男がベラベラと早口で下らないことを喋り始める。このあたりがかなりタランティーノか。ベタベタすぎるのも狙いなんだろう。
にしてもここにも森下能幸と寺島進が出てるのには驚いたな。我修院達也が出てるのは知ってたけど「すっぱい!」は初めて見た。やっぱこの人すごいね。
しかし映像そのものは取りたてて工夫がないかな。最後にビルから飛び降りるシーンは綺麗だが、3人までが飛び降りたところでアングルが切り替わったのが気になった。ここは5人最後まで同じ角度から見たかった。
ドラマ部分終了後に、5人がただ突っ立って歌うシーンがあったけど、これだけでもなんか可笑しいね。カメラの意識の仕方とか、最後のほうにオチらしきものがついてたけど、あれは台本があっての行為じゃないね。彼らの個性がよく出てる。

◇BLACK ROOM
2001年正月元旦に放映されたSMAP5人がそれぞれ1話ずつ主人公となるオムニバスの3話目。主演は木村拓哉。共演に志賀廣太郎と樹木希林(そして謎の出演者・・・誰かは秘密(笑))
これは既に2回見てたけど、何度見ても面白いね。両親のボケっぷりがいいのは言わずもがなだが、木村のツッコミもうまい。常々この人は長く喋らせちゃダメだと私は思ってるんだが(笑)貶してるわけじゃなくて、ツッコミのタイミングの良さと間の取り方の良さこそ、彼の長所なのではないかと。
石井さんは会話はできるだけ早く喋るようにと演出してるそうだ。ただしこういう会話のやりとりは短編だからこそいいのであって、長編でこれをやられるとイライラしてくるのね。そのへんの匙加減が難しいでしょう。
クライマックスはやっぱりガンダムかしら・・・懐かしさを感じる。

◇MUSIC POWER GO!GO!〜ダモン君の巻
2001年4月9日に『SMAP×SMAP』枠で放映されたショートフィルム7編のうちの1本。出演は草なぎ剛と香取慎吾。
これもビデオに撮って2回も見たけど、オリジナルバージョンとは嬉しい。TV放映時に違和感を感じていた画面がいくつもに分割されるシーンがなくなり、さらに笑えるシーンが入っていた。放映時は時間の制約があってカットするしかなかったのかな。削ったのは勿体無かった。「オレはオレ!」可愛いね。それとナトリのセリフの「ピー」が外されていて、ラストにはナギナが帰っていくシーンもあり。しかし!TV時のエンドクレジットと違っていたのが残念だ。あれがオチになるんじゃん(笑)
この撮影では絵コンテは描かず脚本だけで、ダンスは本人たちに即興で振り付けしてもらい5時間くらいで撮影終了したそうだ。この作品の場合、絵コンテも演出もいらないでしょ。まさに“ユルい”お話。ただ何度見てもやっぱりダンスシーンから会話へ戻る時のタイミングがあまり良くない気がする。会話からダンスはスムーズなんだけど。
設定は「インド雑貨屋で働く人って謎だけど、裏でこういう会話をしていて、実はダンスが上手かったら面白いだろうな」というとこからきてるそうだが、彼ら雑貨屋の店員だったのか?(笑)

◇WILD WORLD
大学時代に作ったという短編アニメーション。時間は5分くらいかな。ストーリーの説明がちょっと難しいんだけど、巨人(球団ではなくて大きい男ね)が、3匹の虫を探しており賞金を懸けたというポスターを貼っている。それを見た男たち(これは普通の人サイズか)が、3人の男を殺してそれぞれの体内から虫を1匹ずつ取り出す。そして巨人の元へ虫を持っていくが・・・というお話。
絵がね、どっかで見たことあるんだな。でも思い出せなくてずっと悩んでる(笑)和製アニメじゃなくて外国アニメっぽいですね。オリジナリティはないと思う。でもけっこう好きだな。
既存のものを模倣(悪く言えばパクリ)することは、アマチュアのうちは悪くないでしょう。勉強になるし。そこから自分らしさをいかにして出すか、そしてそこから自分だけのものを見つけ出せるか、というのが大事なんだねえ。私は単なるミーハー心で参加したけど、映像関係の勉強している人も数多くいたようで、勉強になったんじゃないでしょうか。

* − * − *

今回、参加できて非常にラッキーだったけど、実は私は『鮫肌』も『PARTY7』もあまり好きじゃないのだ(笑)でも短編やCMは好き。SSFでナトリ君も言ってたけど、ショートフィルムは短距離走みたいなもんだと思う。短距離やる人は長距離に向いてないわけで、無理に長距離やろうとしなくてもいいと思うんだけど・・・そうもいかないか(笑)短距離と長距離では身体の作り方から練習方法まで違うように、長編と短編では企画段階から違うものとしてやらなきゃいけないと私は思う。んー、今後の長編も同じようだったらガッカリしそうだな。
・・・なんか偉そうに書いてきたけど、所詮素人考えですので。それだけ石井さんには期待してるんだっていうところで纏めとこ(ははは)