Book Review 2003
◇Book Index

『13階段』高野和明
[STORY]
障害致死罪で2年間服役した三上純一が仮出所することになった。刑務所の刑務官南郷は、記憶喪失の死刑囚・樹原の冤罪を晴らすため、捜査の手伝いをしてほしいと三上に持ちかける。2人は樹原が思い出した「事件のあった日に階段を登った」という記憶を頼りに事件を調べ始めるが、現場周辺でそれらしい階段を見つけられずにいた。
−◇−◇−◇−
第47回江戸川乱歩賞受賞作品。大まかなあらすじを読んだ時に、突拍子もない話かも?と疑問に思っていたので読まずにいたんだけど、映画化されるということで読んでみることにした。

・・・私が間違ってました。事件の加害者側、被害者側それぞれの立場、死刑制度について、死刑を執行する刑務官の心の内が細かく描写されてて、まるで実際に見てきたかのようだ。 また現在の法制度のおかしなところ、死刑のあり方について考えさせられる。
ちなみに私は死刑制度に反対ではない(手放しで賛成、というわけでもないが)本作のように冤罪の可能性や、死刑執行も“殺人”になるのではないか?と言われたら困ってしまう。でも「人を殺したら自分も殺されるんだ」ということにならなければ、殺人はもっと増えてしまうじゃないか(実際は1人殺しただけでは死刑にならないらしいが)私はそれがものすごく怖い。せめて死刑と無期懲役の間にもう1つ厳しい刑罰があればね・・(ちょっと話がズレてきたかな)
とにかく冤罪を晴らすというメインストーリー以外でも読みごたえがあった。

メインストーリーのほうも面白くてあっという間に読んでしまった。樹原が思い出した階段は一体どこにあるのか?少しずつ事件の謎が分かっていくさまはもちろん、三上はどうやら隠し事があるらしいんだけど、それがこの事件とひょっとしたら繋がりがあるんじゃないか?とイヤな予感もしてきちゃって読んでて苦しかった。

ただし、事件捜査のタイムリミットが迫っている、樹原の死刑執行が刻々と近づいている、という緊迫感があまり感じられなかったのが残念。章と章の間に樹原の心理描写が少しでも挿入されていれば良かったかも。失われていた記憶が戻ったところの描写もほしかった。このあたりが映画で描かれていればいいなぁ。

というわけで映画の感想はこちら
home