2003年 5月23日 最終更新

大沼国定公園・バス初確認からの経緯

2001/ 7/13  大沼国定公園内の湖沼でスモールマウスバス1匹を捕獲北海道内初の公式確認。 注 1
7/17  網を仕掛けるが新たな捕獲は無し。  
7/25  刺し網を仕掛ける。網は本栖湖でのバス駆除に使用されたものを取り寄せた。  
7/26  ラージマウスバス1匹を捕獲。道立水産孵化場はウロコの状態から、過去に越冬、産卵した可能性を示唆、繁殖を懸念。 注 2
7/27  道は道内水面漁業調整規則を改正し、ブラックバス、ブルーギルの外来魚2種の放流を正式に禁止、存在を確認した場合は全面的に駆除する方針を決定。施行は2001年10月1日から。
  再度網を引き上げるが新たな捕獲は無し。
注 3
7/31  道と渡島支庁、道立水産孵化場、大沼漁協などが外来魚対策会議を開く。全面駆除を目指し、12月まで継続的に駆除を実施し、密放流防止を訴える啓蒙活動を行うことなどを確認。  
8/10  密放流防止を訴えるチラシとポスターの配布を開始。看板を大沼湖畔などに設置。 注 4
8/16  7月26日に捕獲されたラージマウスバスは、道立水産孵化場の卵巣調査の結果、産卵した可能性がほとんどない事が判明。  
9/ 1〜2  青森県鶴田町の農業貯水池「津軽富士見湖」で、水位を下げ地引き網を用いる大がかりな駆除を実施し、北海道内より道立水産孵化場、渡島支庁、七飯町、大沼漁協の関係者5名が視察。  
10/ 9  地引き網を使用した捕獲調査を実施。長さ180mの網を、位置を変えながら6回引いたが、網が湖底の木に引っ掛かって破れるなどして、外来魚は発見できず。本件での地引き網を用いての調査はこれが初めて。捕獲調査の実施はこれが10回目。  
10/10  刺し網を10カ所に仕掛けたほか、新たに「かご網」を設置。かご網は9月に視察した青森県でのブラックバスの駆除方法を参考にし、道立水産孵化場が自作。  
2002/ 1/12  渡島支庁などは完全な駆除に向けた抜本的対策として、国内での前例のない火薬の水中発破による駆除を検討している旨を発表。同支庁などは「環境への影響が最も少ない方法」とし、周辺住民や自然保護団体の理解を得た上で、産卵期前となる5〜6月に実施したい考え。 注 5
3/ 7  水中発破について、地元漁協や自然保護団体、発破専門家、渡島支庁など関係機関による初の打ち合わせ会議を実施。4月中に試験発破を行い、そのデータを基に5月初旬に発破を実施する計画を正式に確認。  
3/20  水産庁が「爆発物を用いて水産動物を捕獲することは、水産資源保護法に抵触する恐れがある」として、道側に水中発破の見直しを求め、計画の実施は極めて困難に。  
4/15  水産庁の意向で水中発破を断念したための緊急的な措置として、ブラックバスが沼から河川に流出するのを防止するための土のう設置工事を開始。  
4/18  新たな駆除策として、人口産卵床10基を沼の底に設置。水中カメラで観察し産卵が確認されたならば、CD(コンパクトディスク)を取り付けた網で絡め取る作戦。 注 6
4/26  道が調査を実施。親魚も産卵も確認できなかったが、沼の水温は16℃で、ブラックバス産卵の適水温だった。 注 7
7/24  道と地元関連機関が対策会議を開き、これまでの調査から「捕獲された2匹以外の生息は限りなくゼロに近い」とした。 注 8
9/ 5  初めての潜水による調査を実施。この調査で確認できなければ、バス対策は駆除から放流防止へと縮小・移行する考え。 注 9
10/ 8  昨夏以降、親魚も稚魚も捕獲されず、産卵も確認できなかったため、これまでの捕獲調査から、密放流の監視外来魚が生態系に与える影響の啓発活動に重点を移すことを決定。  
10/11〜13  道立水産孵化場が、大沼近郊の大野町・八郎沼と函館・新中野ダムで生息調査を実施。この二つの水域は釣り師らから生息および密放流に関する情報が寄せられている。  
12/10  密放流を監視する目的で監視カメラが設置され、試験運用を開始。 注10
2003/ 4/20  大沼漁協と地元の自然保護団体のメンバーらが、ブラックバスなど外来魚の再放流禁止の指示発動を求めるため、JR大沼公園駅の駅前広場で署名活動を実施。 注11
5/19〜21  道立水産孵化場と渡島支庁水産課が調査を実施したが、ブラックバスなど外来魚の生息は確認できず。2003年度のバスの調査は今回が初めて。 注12
 ここに記載されている情報は、あくまでも管理者が確認しているもののみです。欠落等に関しましてはご容赦下さい。

参 考

注 1 …  捕獲されたスモールマウスバスは、体長約23pの未成熟な雌。道立水産孵化場がバス放流の情報に基づいて、岸から約20m、水深約2.5mの地点に設けた刺し網に掛かっていた。大沼ではバス放流の情報は1999年、2000年と、以前からあった。が、公的な確認は北海道でもこれが初めて。場所は国定公園内の湖沼とあり、今後の影響を考慮してか、場所の詳細は非公開。



注 2 …  捕獲されたラージマウスバスは体長約32.5pの雌。ラージマウスバスはスモールマウスバスに比べて低水温に弱く、北海道では越冬できないと考えられていたが、この魚は越冬した可能性が強いと見られている。



注 3…  規則の改正は生態系や漁場の保護が目的で、規則には違法放流の場合、六月以下の懲役、或いは十万円以下の罰金を科すという罰則規定も盛り込まれており、新たな生息情報があった水域では調査の上、刺し網などで根絶する。
関係条文
【北海道内水面漁業調整規則】

(2001年10月1日現在)
24条の3
 次に掲げる魚種(卵を含む)を内水面に移植してはならない。
  1.  ブラックバス(オオクチバス、コクチバスその他のオオクチバス属の魚をいう。)
  2.  ブルーギル



注 4 …  チラシはA4判で2,000枚、ポスターはA3判で200枚作成された。密放流に対する法的な罰則規定は設けられたが、これらを未然に防ぐための抜本策は、現在のところ釣り師らに対する意識啓発しかないのが実状だ。

ポスター等についての詳細はこちら



注 5…  計画された発破は、事前に地引き網を用いて捕獲、用意した3t水槽2基に移し待避させた後に行い、使用する火薬は1本50gで半径16m以内の魚の駆除が可能で、ブラックバスが生息していると見られる湖沼の魚が隠れやすい水草の密集部分を中心に数十カ所で行う。当初は湖沼の水抜きも検討されたが、これに比べ水中発破は環境への影響が最も少ないという。

 渡島支庁は「発破の音や振動が、周辺住民や自然環境に影響しないよう事前に試験を行う」として、周辺住民や地元自然保護団体などに理解を求めたが、発破という手法に不安や疑問を投げかける者も少なからずいたようである。

 水中発破はこれまで国内での前例を見ないが、海域での漁業ではコンブを生育させるため、雑海草の駆除で実施されている。



注 6 …  この日設置された人口産卵床は幅63p、奥行き72p、高さ50pの砂利を敷いたもので水深1.5mの水底に沈めた。産卵が確認されたならば網で捕獲する。尚この日の水温は午前11時現在で12.5℃だった。(「注7」参照)

 使用する網はCD(コンパクトディスク)を取り付けたもので、バスが鏡面状になっているCDに映った自分の姿を敵と勘違いして攻撃する習性を利用して誘き出し、網に絡め取るというもの。CDを取り付けた網は長野県立水産試験場が野尻湖などで実施し、捕獲率86%という好成果を上げている。

 人口産卵床とCD付きの網をセットにしたブラックバスの駆除は全国でも初めて。



注 7 …  ブラックバスは水温13〜16℃で産卵行動を開始すると言われている。つまり湖沼内にバスが残っているならば、既に産卵を始める水温となった。



注 8…  「バスの生息は限りなくゼロに近い」とされたが、未だ繁殖を懸念する意見もあり、8月下旬まで調査を続行することを申し合わせた。
 琵琶湖では7月末に産卵が行われ、8月末には稚魚が拡散した例もあるという。



注 9…  地元関係者は「この何度かの調査で確認できなくとも、大沼にバスがいないという保証にはならない」と、依然警戒を続ける構え



注10…  北海道大大学院水産科学研究科の山下成治助教授が、湖沼監視システムとして考案し、機器は海洋調査機械開発会社「日栄電機工業」(本社・釧路市)が製作。水産庁沿岸沖合課では「外来魚対策で監視カメラが設置された例は聞いたことがない」とのこと。



注11…  署名はこの日を含め、これまでに1,200名分集まった。集められた署名は4月末、道内水面漁場管理委員会に提出し、ブラックバス再放流禁止の指示発動を要請する。

 現在ブラックバスは道内水面調整規則において、移植放流が禁じられているが、放流後の規制はないため、大沼漁協は外来魚の釣りを事実上禁止する効果がある、としている。



注12…  調査の実施は昨年9月以来。道立水産孵化場は「外来魚は網にかからず、生息の可能性は低いだろうとしている。調査はあと2回予定している。
 また、同孵化場などは6月中、大沼近郊の新中野ダムと八郎沼でも生息調査を行う予定。調査は湖面が凍結するまでに、それぞれ2回程度計画している。