2008年12月25日

余市ダムにおける捕獲事例


概 要.

 2002年7月19日、後志支庁管内の余市町にある余市ダム(面積:0.08平方キロメートル)でラージマウスバス2尾が捕獲された。捕獲された2尾はいずれもメスで、同ダム湖内での繁殖も懸念された。道水産林務部では同年6月9日に札幌市在住の釣り人によって釣り上げられたラージマウスバスが、同町内の釣り具店に持ち込まれているのを確認していた。また前年より生息情報も寄せられていた。

 調査にあたってはダム湖の水位を下げ、捜索範囲を狭め、成魚、稚魚、および産卵床を発見しやすくして行われ、9月以降は体長4〜9センチの稚魚の捕獲が相次ぎ、10月末までに223尾が捕獲された。この稚魚は安定同位対比の分析結果から、先に捕獲されていたラージマウスバスの成魚が産卵したものではなく、「新たに放流」されたものと推定された。

 同ダム湖における調査中だった9月4日朝、捕獲用に設置されていた箱網の魚を取り出すために取り付けられているファスナーが、何者かによって開けられているのが確認された。人がいなくなる夜間から早朝を狙って、中に入っていた魚を逃がしたものと見られた。

 冬期間、ダム湖の結氷などのため中断されていた調査は、2003年5月以降再開され、刺し網やエレクトリック・ショッカーのほか、潜水による調査も行われたが、ラージマウスバスの生息は確認できなかった。これらの調査の結果から余市ダム湖のラージマウスバス稚魚の越冬は、「魚体サイズが小さいため」失敗したとみなされた。

 またダム下への流下を懸念する声もあったが、こちらもバスは確認できなかった。(特に融雪期における)ヌッチ川の水温および流速などの諸条件では、ラージマウスバスの生残は難しいという。

<余市ダムにおける捕獲の経緯>


 余市ダム湛水部。右手に見える施設はダム管理所。ヌッチ川水系ヌッチ川を堰き止めた農地へのかんがい用のダムで、畑550.4ヘクタールへ灌漑し、貯水量は80万トン。
 満水時にオーバーフローした貯水は、そのままヌッチ川に流れ出す構造になっている。
 下流から見た余市ダム。オーバーフローした貯水は、ここを流れてくる。
 現在もレインボートラウト(ニジマス)の釣り場として知られているようで、取材時にも釣り人の姿が目に付いた。
 ヌッチ川中流。放流されたブラックバスがダム下へと流下した可能性も指摘されたが…。


(以下、写真提供:北海道立水産孵化場)
 刺し網によって捕獲されたラージマウスバス。
 捕獲されたラージマウスバスの稚魚。
 2002年9月12日以降、ダム提内への立ち入りが禁止された。
 冬季、結氷した余市ダム。
 潜水による生息調査。