2008年12月25日

円沼(大沼国定公園)における捕獲事例


概 要.

 2001年7月13日、道南の大沼国定公園内の「円沼」(面積:0.05平方キロメートル)でスモールマウスバス1尾が捕獲された。寄せられた情報に基づいて、道立水産孵化場が仕掛けた刺し網に掛かっていた。大沼でのバス放流の情報は1999年、2000年と以前からあったが、これが北海道で初めてとなるブラックバスの公式確認となった。さらに同26日にはラージマウスバス1尾も捕獲された。

 捕獲された個体はいずれもメスで、スモールマウスバスが体長約23㎝(未成熟)、ラージマウスバスが体長約32.5㎝であった。このうちラージマウスバスは、スモールマウスバスに比べて低水温に弱く、これまで北海道では越冬できないと考えられていたが、ウロコの状態などから越冬した可能性が高いとされた。また産卵の可能性も示唆されたが、道立水産孵化場が卵巣を調べた結果、産卵した可能性はほとんどないことが判明した。

 明けて2002年には完全な駆除(撲滅)の抜本的対策として、国内での前例のない火薬の水中発破による駆除を検討している旨を発表。渡島支庁などは「環境への影響が最も少ない方法」とし、周辺住民や自然保護団体の理解を得た上で産卵期前となる5月初旬までに実施する考えだったが、水産庁が「爆発物を用いて水産動物を捕獲することは、水産資源保護法に抵触する恐れがある」との見解を示したため、計画は断念された。

 円沼の近くには大沼に注ぐ宿野辺川が流れるが、川と沼をつなぐ唯一の排水溝をステンレス網で塞ぎ、沼の周囲には直径1メートル、高さ1メートルの円柱形土のうを隙間なく並べ、沼や川が氾濫しても円沼の水が川に流れ込まないようにして、ブラックバスの流出防止をはかった。

 水中発破が中止となったことでその後の調査は従来どおりの刺し網のほか、産卵期には人工産卵床を設置するなどし、2002年9月には潜水での調査も行われた。が、円沼では当初の2尾以外に生息確認はできなかった。このことなどからブラックバスの生息は限りなくゼロに近いとされ、その後の捕獲調査は縮小し、密放流の監視や啓発活動に重点がおかれる事になった。

<円沼における初捕獲からの経緯>


 北海道で初めてブラックバスが捕獲された円沼。観光地である大沼からは離れた場所でもあり、ここを目的に訪れる人は決して多くはないだろう。
 水生植物が繁茂し、いわゆるリリーパッドの様相の円沼。バス釣り場として、適したフィールドと言えなくもない。
 大沼から円沼へと向かう道路。行き交う人もまれで、非常に静かな場所である。
 大沼畔の随所に建てられた、ブラックバス・ブルーギルの放流禁止を知らせる看板。
 大沼を訪れる一般の観光客の目に付くところにも、放流禁止の看板がある。
 観光船が行き交い、多くの観光客で賑わう大沼。
 大小の島が点在する大沼。円沼に比べ、はるかに巨大な湖である。もしここにブラックバスが侵入していたとしたら、その駆除はより一層困難なものとなっていただろう。

(以下、写真提供:北海道立水産孵化場)
 沼の周囲に設置された、ブラックバス流出防止用の土のう。
 人工産卵床も設置されたが、産卵は確認できなかった。
 刺し網による調査。網に取り付けられたCD(コンパクト・ディスク)は、バスが鏡面状になっているCDに映った自分の姿を、敵と勘違いして攻撃する習性を利用し、誘引するためのもの。
 水中カメラによる、産卵床の探査。