ミュラーとウォルフ

ご注意


登場人物

ミュラー
女、理髪店店主
ウォルフ
男、近所の暇人
おっさん
男、近所の中年

cut1

ウォルフ、あごに泡をつけたまま店内に入る。ドアの鈴の音。

ウォルフ:すいませーん。誰か居ませんか ぁ?

時計が午前9時を告げる。

ウォルフ:すいませーん。

ミュラー:はーい。すいませーん。今いきますー。

どたどたと階段を下りる音。ミュラー入ってくる。

ミュラー:なんだ。あんたか。

ウォルフ:なんだってなんなんだよ。客に向かってぇ。

ミュラー:だっていつも来てるじゃない。毎日。

ウォルフ:いいじゃんかよ。毎日来たって。

ミュラー:いいけどね。でもあんた変よ。

ウォルフ:変じゃないよ。男なら髭ぐらい毎日剃るだろ。

ミュラー:あたしが言ってるのはね……もういいよ。座ってよ。

ウォルフ、いすに腰掛ける。ミュラー、大きな布を取り出しウォルフの首に巻く

ミュラー:倒すよ。

いすは古いものらしく、一気に背もたれが倒れる。

ミュラー:一応聞いとこうか。注文は?

ウォルフ:ああ、髭剃ってください。

ミュラー:(溜息、カミソリを取りに行く。)

ウォルフ:何、その溜息は。

ミュラー:聞かなきゃ良かったって後悔してんの。 (カミソリをちらつかせながら)ほら、動くなよ。

ミュラー:(剃りながら)ねえ、あんたさあ。

ウォルフ:ん?

ミュラー:仕事してないんでしょ?

ウォルフ、ぴくっと動く。ミュラー、カミソリをあごから離して

ミュラー:危ないって。動くなって言ってるでしょ。(またそり始める) で、仕事。

ウォルフ:うん。

ミュラー:うちはひげ剃り200円だよね。一週間来たら。1400円でしょ。 一ヶ月で6000円?一年で……(手が止まっている)

ウォルフ:7万3000円。

ミュラー:ん。収入がない人にしたらかなりの額だね。(またそり始める)

ウォルフ、ぴくっと動く

ミュラー:動くなってば。(またそり始める)

ウォルフ:……。(怪訝な顔でミュラーを見る)

ミュラー:…?(手を止めて)どうかした?

ウォルフ:いや、あの…落ちは?

ミュラー:オチ?

ウォルフ:いや、話の続き。

ミュラー:え?ああ、えーとね。…忘れた。

ウォルフ:…そう。

ミュラー:うん。(またそり始める)

両者無言のまま。しばらくして。

ミュラー:はい、終わり。

ミュラー、カミソリを洗いに奥へ。ウォルフ鏡を見てそり残しがないか調べている。

ウォルフ:うーん。さすがだね。

ミュラー:そりゃ。毎日やってるからね。あんたのおかげでね。

ウォルフ:良く磨かれた鏡だ。いい男がますますよく見える。

ミュラー:200円ね。

ウォルフ:……。ごめん。冗談だよ。

ミュラー:……。

ウォルフ:悪かったって。今出すよ。

ズボンのポケットから小銭をじゃらじゃら出す。

ウォルフ:はい。

ミュラー:毎度。ちょうどね。

ミュラー、レジへ。

ミュラー:ねえ。今度さあ。

ウォルフ:ん?なに?

ミュラー:あー。やっぱいいや。

ウォルフ:なんだよ。デートに誘って欲しいって?

ミュラー:ばか。そんなんじゃないよ。

ウォルフ:だめだぜ、素直にならなきゃ

ミュラー:くだらん事言ってないで、とっとと帰れ!

ミュラー、ウォルフの尻を蹴って追い出す。 ウォルフがかけ布をつけたままなのに観客だけが気づいている。 ミュラー、レジに戻り、

ミュラー:あ、忘れてた。

ミュラー店の外へ

ミュラー(声):おーい!レシートー!

暗転、BGM(陽気なラグタイムを希望)


cut2

BGM F.O. 明かりつく、時計が午前九時を告げる。 ミュラー、ひげ剃りの準備をして待っている。 外で物音。

ミュラー:(振り返って)いらっ…違った。

ミュラー、また準備をする。 ウォルフ、かけ布をすっぽりかぶってこそこそと小さくなって入ってくる。

ミュラー:あ、おはよう。

ウォルフ、ぴたっと止まる。

ミュラー:どしたの?そんなカッコして。

ウォルフ、ぴくぴくふるえている。

ミュラー:何やってんの?

ミュラー、かけ布をはぎ取る。

ウォルフ:いや、いいんだ。もう。つまらないことさ。

ミュラー:そ。じゃ、座って。

ウォルフ:はあ、

ミュラー:ひげ剃りね。(タオルをウォルフの首に巻く)

ウォルフ:うん。

ミュラー:なんだ。今日は元気ないね。倒すよ。

ウォルフ:わっ(不意を突かれて、頭を打つ)あたっ。

ミュラー:あー、ごめん。大丈夫ね。(素っ気なく)

ウォルフ:う、うん。

ミュラー:どうしたんだよ。本当に大丈夫?

ウォルフ:あ、いや、最近スランプって言うか、調子がね。

ミュラー:スランプ?なんの?

ウォルフ:いや、何でもないんだ。別に。

ミュラー:何でもないってこたないでしょ。話しなさいよ。

ウォルフ:いいよ。

ミュラー:悩みがあるんでしょ。聞いてやるからさ。

ウォルフ:いいって。早く髭剃ってよ。

ミュラー:あーはいはい。やりますよ。仕事ですから。

カミソリを取りに行く。鼻歌でも歌いつつ。 泡付けたり、いろいろ。

ミュラー:(髭を剃りながら、ふと気づいたように) あんたさあ?

ウォルフ:ん?

ミュラー:便秘?

ウォルフ:ぶふぅ!(吹き出す)

ミュラー:(とっさにカミソリを離して)あぶなー。どうやら図星だな?

ウォルフ:ううう。

ミュラー:あははーうんこかたいんだー。

ウォルフ:うんこっていうな!うんこって。

ミュラー:あら、失礼。

ウォルフ:下品だな、もう。(一息ついて)何で解るんだよ。

ミュラー:いやー、血行悪そうだしさあ。皮膚に艶がないんだよね。 (またそり始める)野菜食べてる?あ、そうだ。ポテトサラダ大量に作ったからさ。 それ、あげるよ。ちょっと待ってて。

ミュラー、退場。どたどたと階段を上る音。ばたんと冷蔵庫を閉める音。 何かけっ飛ばして階段から落ちる音。どたどたと階段を下りてくる音。 ミュラー大きめのボウルを抱えて登場。

ミュラー:はい。(ボウルを渡す)

ウォルフ:(受け取る)いや、はいって?

ミュラー:ん?

ウォルフ:このまま?

ミュラー:ああ、ごめん。今取ってくる。

ミュラー再び退場。どたどたと階段を上がる音。どたどたと階段を下りる音。 ミュラー登場。手には調理用のラップを持っている。

ミュラー:こうして(ボウルにラップをかけながら)こうね。はい。

ウォルフ:……。(怪訝な顔でミュラーの顔とボウルを交互に見る)

ミュラー:ほら、髭。

ウォルフ、促されいすに倒れる。ボウルを抱えたまま。

ミュラー:(剃りながら)あ、あとね。運動した方がいいぞ。

ウォルフ:うん。

ミュラー:運動してる?

ウォルフ:んーん。

ミュラー:体うごかさんとー。散歩とかでいいんだってよ。

ウォルフ:ふーん。あー

ミュラー:危ないなぁ急に口開けるなよ。

ウォルフ:あ、ごめん。

ミュラー:で、なに?

ウォルフ:あぁ、いいや、いい。続けて。

ミュラー:なんなんだよ。もう。後ちょっとだけどね。 はい、終わり。

ウォルフ:ん、ありがと。

ミュラー、カミソリを片づける。ウォルフ、ポケットを探る。

ウォルフ:はい、200円。

ミュラー:はい、まいど。

ウォルフ:じゃあ、また、明日。

ミュラー:ああ、ちょっと待って。タオルと布が。

ミュラー、ウォルフを後ろにむけて、タオルとかけ布を取る。

ミュラー:ほい、じゃあ、明日ね。

ウォルフ:うん、サラダ、ありがとね。

ウォルフ、退場。入れ替わりにおっさん入場。

おっさん:(ウォルフに)あ、おはようございます。

ウォルフ:おはようございます。どうも。

おっさん、店の中へ。鈴の音

おっさん:どもー、こんちわー。

ミュラー:あら、いらっしゃいませ。

おっさん:今の人、いっつも俺が来るとき先にいるねぇ。

ミュラー:毎日来るんですよ。髭だけ剃りに。変な人でしょ。

おっさん:へぇえ。毎日。ポテトサラダ持って?

ミュラー:いや、あれは私が持たせたんですよ。

おっさん:へっへぇ手料理か?いいねぇ若いもんは

ミュラー:やだなぁおじさん。そんなんじゃ(おっさんをど突く)

おっさん、突き飛ばされていすに座る。

おっさん:いたた。

ミュラー、おっさんに布をまく。 タオルを巻こうとしたときに、急にウォルフがはいってくる。

ミュラー:あら、どしたの?

ウォルフ:ああ、いや、言い忘れたことが。

ミュラー:言い忘れた?

ウォルフ:いや、その、大したことじゃないんだけど。

ミュラー:何?

ウォルフ:その、あー、うん。おはよう。

ミュラー:ああ、おはよう。

ウォルフ:じゃ。

ウォルフ退場。

ミュラー:行っちゃった。なんだったんだろ。

おっさん:きしししし。いやーわかいねぇ。いい関係じゃないの。 いやいや、しっかし、あの先生があんたにお熱たぁ知らなかったね。

ミュラー:やめてくださいよ。なんですか?その先生って。

おっさん:あれだよ。小説書いてるでしょ。あの人。

ミュラー:ええ!?まさか、無職でしょ。

おっさん:いやいや、小説家だよ。

ミュラー:ほんとに?

おっさん:有名だよ。うちの近所では。

ミュラー:有名!?

おっさん:結構売れてるんだよ。うちの近所では。

ミュラー:へぇえ。どんなの書いてるの?

おっさん:おやおや、なかなか興味があると見えるね。よし、ここは一つ俺がなこ…

ミュラー、タオルでおっさんの首を絞める。

おっさん:うげ、く、くびが

そのまま暗転。BGM。


cut3

BGM.F.O.九時の鐘 明かり。 ミュラー、そわそわして、店内をうろついている。 店内の時計と腕時計を見比べたり。 ふと気づいたように、鏡に向かい化粧をなおす。 ウォルフはまだ来ない。 しばらくじらした後ウォルフ登場。ボウルを頭にかぶっている。

ウォルフ:おっはよー。

ミュラー:ああ、おはよう。いらっしゃい。

ウォルフ:サラダ、おいしかった。ありがとね。(ボウルを渡す)

ミュラー:(もう一言待っている。ボウルを受け取り損ねて落とす)…。

ウォルフ:落ちたよ?大丈夫?

ミュラー:あ、うん。平気。(ボウルを拾う)

ウォルフ:どうかした?

ミュラー:え、いやその。(ボウルをかぶってみる)なんか言うことない?

ウォルフ:似合うね。

ミュラー:そうじゃなくて。

ウォルフ:(顔をのぞき込む)

ミュラー:わからない?

ウォルフ:あーうーん?あっ!化粧…濃いね。

ミュラー、ボウルをウォルフにたたきつけてでていこうとする。

ウォルフ:ちょっと!どこ行くの?

ミュラー:顔洗ってくる!

ウォルフ:いいよ。そのまんまで。

ミュラー:やだ!洗う!

ミュラー退場。蛇口をひねる音。水の音。蛇口をひねる音。 ウォルフ、ポケットから電気カミソリを出してしげしげと眺めている。 やがて、ミュラーでてくる。タオルを首にかけて顔を拭きながら。 ウォルフ、何となく電気カミソリを隠す。

ウォルフ:あーあ。いつものすっぴんに戻っちゃって…

ミュラー:(微笑んで)へっ。お前のせいだよっと。 今日も髭でしょ。

ウォルフ:ああ、いや、それが。

ミュラー:ちがうの?

ウォルフ:こんなもんが手に入ってね。(電気カミソリを見せる)

ミュラー:あら、こんなん持ってたんだ。

ウォルフ:懸賞であたってさ。昨日届いたんだけど。

ミュラー:ふーん。そう。

ウォルフ:使い方わかんなくてさ。

ミュラー:使い方も何も、電源入れるだけでしょ。

ウォルフ:それがはいらないんだよ。

ミュラー:かしてよ。(ひったくる)こうでしょ。

ウィーという動作音。しばらく入れっぱなし。

ミュラー:ほら、入るじゃん。

ウォルフ:あれ、俺がやったらだめだったんだけど。

ミュラー:でもあんた、電気カミソリってアブないんだよ。

ウォルフ:え?そうなの?

ミュラー:電磁波がどうとかって、体に良くないってさ。

ウォルフ:それ、フライデーに書いてあったヤツじゃないの?

ミュラー:違うよ。週刊金曜日だよ。

ウォルフ:フライデーじゃんか。

ミュラー:ちがうって。とにかく良くないんだよ。

ウォルフ:そんなこと言われてもなぁ

ミュラー:ちゃんとノーベル賞持ってる物理学者が…あれ?

だんだん動作音が変になってくる。やがて、低くなって消える。

ミュラー:あら?あーあ。だめだね。こりゃ。

ウォルフ:電池切れじゃない?

ミュラー:いや、だめだよ。だめだめ。うん。こわれた。

ミュラー、電気カミソリをゴミ箱に捨てる。 その足でカミソリと泡を取りに行く。

ウォルフ:おわぁ!何すんだよ。

ミュラー:壊れたんだからいらないでしょ。

ウォルフ:壊れたかどうかわかんないだろ。

ミュラー:壊れたんだってば。

ウォルフ:でも、修理すれば……

ミュラー:うるさいな、ごちゃごちゃごちゃごちゃ。なんだよひげ剃りぐらいで。 ほら、ちゃんと座ってろよ。(カミソリを向けて近づいてくる)

ウォルフ:あぶないよ。おい。(気圧されしていすに座る)

ミュラー、いい加減にウォルフに泡を塗りたくる。

ウォルフ:ちょっと、タオルは?

ミュラー:ん?ああ、はい。(自分の首にかけていたモノを渡す)

ウォルフ:ああ、(自分で首に巻く)

ミュラー:(そり始める)ねえ、

ウォルフ:ん?

ミュラー:小説書いてるって聞いたけど?

ウォルフ:えぇ!?(体を起こす)

ミュラー:突然動くなよ!切れたらどうすんの!

ウォルフ:誰から聞いた?

ミュラー:昨日のおじさん。

ウォルフ:はあぁ。(椅子に倒れる。)

ミュラー:ホントなの?

ウォルフ:(あわてて)嘘だよ。

ミュラー:じゃ、何でおじさんあんな事言うの?

ウォルフ:いやー、それはー、だからーあのおっさんはおかしいんだよ。

ミュラー:おかしい?

ウォルフ:あることないこと言いふらして回るんだよ。あんま信用しない方がいいぞ。

ミュラー:(疑り深い眼)どんなの書いてんの?

ウォルフ:え?いや。だから書いてないって。

ミュラー:いいじゃん、隠さなくても

ウォルフ:隠してないよ。ほら、髭!

ミュラー:はいはい。

しばらくそり続ける。

ミュラー:そういえばさあ。

ウォルフ:ん?

ミュラー:出た?

ウォルフ:出たって…何が?

ミュラー:あれだよ。

ウォルフ:あれって何よ。

ミュラー:毎日出すやつだよ。

ウォルフ:毎日?

ミュラー:ああー鈍いやつだなぁ。いいよ。もう。

ウォルフ:何だよ。

ミュラー:いいってば。ほら動くなよ。

剃る。

ミュラー:はい、終わり。

ウォルフ:うん。

ミュラー:何だよ。まだあんなひげ剃りのこと根にもってんの?

ウォルフ:あれはいいよ。もう。

ミュラー:じゃあその難しい顔はなんだよう。

ウォルフ:いや、あの、トイレ貸してもらえる?

ミュラー:え?あ、はいはい。いくらでも。奥行って左ね。

ウォルフ:うん、ありがと。

ウォルフ、退場。ドアを開けて閉める音。ミュラー、ウォルフが入ったのを確認してゴミ箱をあさりはじめる。

ウォルフ(声):おーい!

ミュラー、びっくりしてゴミ箱の中身をまき散らす。

ミュラー:は、はーい。何?どうかしたー?

ウォルフ(声):紙がないんだけどー。

ミュラー:あー、ごめーん。上の棚のところにないー?

ウォルフ(声):んー?あー、有ったー。ありがとー。

ミュラー、ほっとしてゴミ箱の中から電気カミソリを探し出す。水を流す音。ミュラー、あわてて散らかしたゴミを片づけはじめる。ウォルフ、登場。

ウォルフ:いやー、ポテトサラダ効果だねー。何してんの?

ミュラー:あの、ちょっと掃除をね。出ましたか。

ウォルフ:ああ、大きくて茶……

ミュラー:(すかさず)あー色とか匂いはいいです。あー、あのさ、これ(電気カミソリ)。

ウォルフ:あー、もういいよ。あげる。

ミュラー:いや、使わないし。

ウォルフ:俺も使わない。

ミュラー:え?あ、そう?じゃあ……あの、いや、でもどうすんのよ?こんなのもらって。

ウォルフ:飾っとけば?

ミュラー:どこに?

ウォルフ:あそこの棚とか。

ミュラー:あそこ?整髪料のとなり?

ウォルフ:あるいは鏡の前とか。

ミュラー:いや、あの。店の中におかなくても。

ウォルフ:ああ、そうね。まあ、好きなとこ置けば……。(ポケットを探り)はい。200円。

ミュラー:うん。毎度。

ウォルフ:じゃあ、また。

ミュラー:明日ね。

ウォルフ、退場。 ミュラー、椅子に腰掛けて電気カミソリを見つめる。電源を入れてみる。しばらくすると急速に作動音が鈍くなり同時に照明F.O.


cut4

雨だれの音。眠そうなミュラー。電気カミソリはカミソリのとなりに置かれている。ウォルフ、ずぶぬれで登場。

ウォルフ:おはよう。

ミュラー:ちょっと!ずぶぬれじゃない。何やってんの!?

ウォルフ:ん?ああ、すごい雨だね。

ミュラー:(タオルを探しながら)雨じゃなくて!自分のことでしょ!?ほら。拭いて。

ウォルフ:へ?

ミュラー:風邪ひくでしょ!

ウォルフ:ああ。ああ!そうか。ありがとう。

ウォルフ、体を拭く。ミュラー、ため息を一つ。

ミュラー:傘持ってこなかったの?

ウォルフ:え?何だって。

ミュラー:傘!

ウォルフ:傘?ああ!そうだ。それだ!

ミュラー:どうかした?

ウォルフ:なんか忘れてるなと思ったんだ。ありがとう。

ウォルフ、そのまま出ていこうとする。ミュラー、あわてて引き止めながら、

ミュラー:ちょっと!どこ行くんだよ?

ウォルフ:傘取ってくるよ。

ミュラー:今行ったらまた濡れるでしょうが!

まだ続く?

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