橋の上、靴が一足並んで置かれている。その上に手紙。
風、うちわを持ってやってくる。うちわで靴の上の手紙をとばす。
男1、通りかかる。靴を見つける。ひらめく。靴を取って中を覗く。自分の靴を脱いで中を見る。喜ぶ。靴を履き替える。飛び跳ねてみる。具合がいいらしい。腿上げを始める。嬉しそうな顔。そのまま腿上げで去る。と思いきや後ろ向きに戻ってきて止まる。自分が履いていた靴をそろえて再び腿上げで去る。
親1、子1、通りかかる。子1、靴を見つけ指さして言う
子1「靴の忘れ物だ!」
親1「違うよ、アレはね自殺した人のだよ」
子1「自殺ってなーに?」
親1「この橋から飛び降りるんだよ。」
子1「バンジージャンプ?」
親1「違うよ、なんでそんなこと知ってんだい。」
子1「テレビで見たモン。でもさ。なんで、靴脱いでいくの?」
親1「何か残したかったんだろうね。」
子1「なんで靴なの?図工の授業で作ったやつを残せばいいじゃん。」
親1「はっはっは。この子は。」
親子去る。
酔っぱらい通りかかる。宴会の帰りらしい。鼻眼鏡をかかけている。靴につまづいて派手に転ぶ。
酔っぱらい「畜生、誰でい、こんな所にトリップワイヤー張ったのは。今時こんな大都会でブービートラップもねえもんだよ全く。ん?あら、ブービートラップじゃないの。あらそう。そりゃどうも失礼しました。やっぱあれでスか、この世の中に嫌気がさして。違う。あらそう。そんじゃ金とか女とか、あーそうでスか。そぉりはたいへんでしたねえ。まま、いっぱいやってくださいよ。あに?酒飲めないの?ああにいってンだよ。飲めねえなんてあるモンかい。ああそう、そんなにいうんならねえ、じゃあ、あたしが全部飲んじゃいまふよ。」
夢の中で酒を飲んでいる。
酔っぱらい「ぷはーー、いやーこんなうめえもんがあんだから俺は死なねえぞーー。ええーーうっへへへへ。ああー宴もたけなわとなって参りましたぁ。それじゃあここらで一曲。」
一曲歌い始める。
酔っぱらい「あによ。やめろって?おひらき?あああさいでございますか。っそうですか。じゃ、」
鼻眼鏡をはずし、靴の近くに添えて。合掌して千鳥足で去る。 親子2、通りかかる。親の手にはハリセンが握られている。子、靴を見つけて駆け寄る。
子2「あ、くつだー」
親2、ハリセンで子をたたく。
親2「馬鹿。そんな汚い物さわるんじゃありません。」
子2「痛っ」
親2「全くこの子は、何度言っても分からないんだから。」
親2、必死になってたたく。
子2「痛い、痛いよ、なんでたたくんだよ。」
親2「私はお前のためを思って。」
親2、これでもかと言わんばかりにたたく。
子2「もうしないよ。やめてよ。」
親2「口ばっかりそんなこと言って。」
親2、殴り殺さんばかりの勢いでたたく。
子2、泣きながら逃げる。
親2「こら、待ちなさい」
そのまま二人退場。
不良グループ3人通りかかる。
不良1「おい、見ろよ。」
不良2「おお、すげえ。」
不良3「なんでこんな所に落ちてンだ?」
不良2「しらねえよ。」
不良1「とにかく儲けもんだぜ。」
不良3「罠じゃないのか?」
不良2「んな訳ねえだろ。」
不良3「もしかしたらと言う事もある。」
不良1「誰か一人が取りに行くか。」
不良2「よし。じゃあ、これで決めよう。」
不良1「OK。じゃんけんポン」
不良1「いっせーの2。いぇー」
不良3「いっせーの3。やりー。じゃあお前な」
不良2「おれ?」
不良1「そう。」
不良3「いけ。」
不良2「ほんとに?」
不良1「そう。」
不良3「いけ。」
不良2「もう一度やり直さない?」
不良1「やだ。」
不良3「いけ。」
不良2「やっぱやめない?」
不良1「やだ。」
不良3「いけ。」
二人で押し出す。不良2、転がりながら取る。
不良3「やった!」
不良1「ちょっとかけてみようぜ。」
不良1、かける。
不良2「おおおお。かぁっこいいー」
不良3「俺も俺も。」
不良3かける。
不良1「おおおお。なかなか。」
不良2「俺も俺も。」
かけるやいなや
不良3「ああ、駄目だ。」
不良1「最悪だ。」
ぎゃあはっはっはと笑いながら退場。
恋人らしき男と女、ワルツで通りかかる。女2、靴を見て。
女2「ほら、みて。」
男2「え、」
女2「すてきね。」
男2「そうだね。」
熱い抱擁。そのままワルツで回りながら去る。
やがて朝。
ゴミ拾いのオッサン。靴を片付けて去る。