世界征服研究部
観念合成装置の逆襲

ご注意


登場人物

男1
部長:3年生、狼
女1
副部長:2年生、耳たぶが好きらしい、猫
男2
新入部員:1年生
女2
生徒会長:3年生、ファッショレッド
男3
副会長:2年生、ファッショブルー
女3
新入生:1年生、ファッショイエロー

シーン1

暗闇、男1、懐中電灯で下から照らしナレーション

男1:青春という言葉はもうはやらない。しかし高校生が高校生でいられるのは特殊な場合を除いて3年間しかない。勉強に追い立てられようとも、遊びに駆け回ろうとも、異性を追いかけようとも、3年間は3年間である。その3年間は振り返ってみれば120分ぐらいに思えることもしばしばである。そして今ここにその3年間を迎えようとする新たな犠牲者がいる。

男2の姿が現れる。部活の勧誘のポスターを見ている。

男2:うーん。いろいろあるなぁ。野球部。サッカー部。剣道部。クリケット部。 セパタクロー部。こっちは文化系か、えーと?吹奏学部。軽音楽部。ジャズ研究部。カリプソ研究会?なんだカリプソって。文芸部。漫画部。なんだこれ「君の行く道は果てしなく遠く、幾多の困難と誘惑が待ちかまえている。きみは困難を乗り越え、誘惑を振り切って無事たどり着くことが出きるか!さあ君はどうやって帰るか!帰宅研究会。部員募集中。」アホかこりゃ。ん?世界征服研究部?何々?めくって下さい?ぴらっとな「いやーンエッチ」……

男1、通りかかる。

男1:きみ。見かけない顔だな。

男2:え?僕ですか?

男1:そうだ。君だ。

男2:な、なんですか?

男1:だから、見かけない顔だなと言ってるんだ。

男2:あ、はい、あの、入ってきたばかりで……

男1:どういうことだね。

男2:いや、だからあの新入生です。

男1:何!侵入者!?怪しい奴め、ちょっとこい。

男2:いや、そうじゃなくて

男1:何がそうじゃないだ

男2:侵入者じゃなくて新入生ですよ

男1:はーっはっは!今さら誤魔化しても遅い。自分から身の上をばらしおって愚かな奴め。

男2:ちょっと待ってくださいよ

男1:ちょっとまってろ

男1靴を脱いで耳に当てる。

男1:あーこちら205こちら205。えー1−Dまえにて侵入者を発見。身柄を拘束しましたーどうぞ。……了解、連行します。と言うわけだ侵入者君。ついてきてもらおう。

男2:ちょっと何がと言う訳なんですか?なんで靴で話してるんですか。しかも何も応答なかったじゃないですか。

男1:まあいいから来い。

男2:あなた一体誰ですか!?あなたの方が怪しいじゃないですか。

男1:なにおう!比較的怪しいのはお前の方だ!さっきだって一人で「いやーんエッチ」などと言ってたじゃないか俺聞いたモンね。

男2:あ、あれは!

男1:聞いたモンねー。感情がこもってたなー。漫画的表現で言うところのハートマークがついてる感じだったなー。しかもちょっと声高くして女の子っぽこくしてやンの。変態じゃないの?

男2:そんな風にはして無いじゃないですか!

男1:何を言っても無駄だ。目撃者は俺しかいないのだ。

男2:何いってんですか。ちょっと待ってくださいよ。

男1、男2を引っ張ってゆく。ぐるりと回ると、女1が出てくる。

女1:あ、部長。こんにちは。その子はアレですか?

男1:ああ、さっき言っていた侵入者だ。

男2:だから違うって言ってるじゃないですか

男1:一人で「いやーんエッチ」と言っていたとびきり怪しい奴だ。

女1:そうですか。君は一年生?

男2:そうです。新入生って言ったのをこの人が聞き間違えて。

女1と男1目を見てうなずき会う

男1:じゃあ、誓約書を書いてもらおうか。

男2:なんでそんな物書かなきゃいけないんですか

男1:決まってるだろう、二度とこんな事をしないようにだ。

男2:僕何もして無いじゃないですか

女1:はいこれ。(ペンと紙を出す)

男2:ホントに書くんですか?冗談でしょ。

男1:いいから書け!

女1:書いたら自由になれるよ。

男2:……(ペンと紙を受け取る)

男1と女1にやりとする。

女1:文面はもう出来てるから。ここにクラスと名前ね、あとここに生年月日。

男1:2枚複写式になってるから強く書いてね。

男2むすっとした顔で書く。書いてる間。男1と女1は喜びの踊りを踊っている。

男2:かけました。

女1:1−Dの**君ね

男1:(確認しながら)よし、今日は帰って良し。

女1:じゃあまた明日。さようなら。

男2去る。

女1男1:くくっ。ふふふ。はーっはっはっは!やったー新入部員ゲットー!

男1:これで我が部は安泰だ!

女1:何とか来年も続きますね。

男2戻ってくる

男2:ああ、やっぱりだましたんだなぁ。さっきのは入部届けか!

男1:はーっはっはっは。ばれてしまっては致し方ない。

女1:世界征服研究部へようこそ。

男1:活動日は月水金デス。現在は部員勧誘のため、毎日活動しております。そこのきみ是非世界征服研究部へ!

男2:ああ、俺の青春がぁーーーーー!

暗転


シーン2

男2:強制的に変な部活へ入部させられてしまった。しかも部員は僕を含めてたった4人しかいない、背部寸前の部だ。しかし、この部活はこのような状態で十数年も存続しているらしい。僕はこう決意した。この部活の息の根を僕の手で止めてやろうと。そして僕は生徒会本部の戸を叩いた。

男2:た、たのもう!

男3:あ、ちょっと出てくれる?

女3:はい。……はい。なんですか?あ、**君

男2:あ、えーと同じクラスの……えーっと

女3:??

男2:えーっとあれ、ちょっとまってね。

女3:……?

男2:うーん。(考え込む)

女3:うーん?(のぞき込む)

男3:(ため息)フォローしてやったらどうだい。

女3:忘れちゃったんですか?…………用事。

男3:(ヒステリックにどうぞ)ああああああもうっ!用事じゃないだろ!お前の名前を忘れとるんだこいつは!お前もお前だ!わからないんなら聞けばいいだろ、なんでそんなことにもっと早く気づかないんだ。信じられないよ!(呼吸を落ち着ける)この子は1−Dの出席番号*番の****さんだ。血液型はAB型で性格はどじでおっちょこちょいだ。君は1−Dの*番で、**中学出身で女の子と話すのが苦手で彼女いない歴15年の****君だね。生徒会本部へようこそ。さあ入り給え。

男2:なんでそんなことまで。

男3:ちなみに、僕は2−*の*番。頭脳明晰、成績優秀、容姿端麗、きざったらしく、長時間一緒にいると不愉快なので女の子にもてない****だ。よろしく。

男2:自分のことまでそんな風に

女3:****です。

男3:それはさっき僕が言ったじゃないか。ああ、それで彼女が現生徒会長で朝は和食派の****さんだ。ちなみに3サイズは(ものが飛んでくる)本人の希望により秘密だ。そしてこれが作業用の机だ。こっちは書類が入っている棚。これは椅子だ。分かるね。こうやって腰掛けるんだ。(と男2を座らせる)これが生徒会本部役員の登録用紙だ。ここに名前と生年月日を書くようになっている。それからこれはボールペンだ。中にインクが入っていて紙に先端を軽く押しつけながら動かすと先端のボールがへこんでインクが出てくると言う便利な代物だ。君も見たことあるだろう。さあ、握って。

男2:あ、あの

男3:何だい?分からないことでもあるのかい。やだなぁ僕がこんなに説明したのに。信じられないよ。それとも説明不足だったかな?

男2:なんで入会希望って言ってないのに分かるんですか?

男3:ちっちっちっそれは愚問だよ。きみ。顔を見れば分かるってモンさ。犬だって、飼い主の顔を見れば飼い主の気持ちが分かるんだよ。

女3:ほんとはきた一年生全員勧誘してるだけなんですよ。

男3:それを言っちゃあ駄目じゃないかぁ。信じられないよ。まあいいさ早くかきたまえ。結局入るんだからね。

男2ペンを取って書こうとした瞬間、けたたましい警報が鳴り響き赤いランプがつく。

女2:(立ち上がり)出動よ!!

男3女3:ラジャー!!

ヒーローっぽい音楽が流れる中、3人いそいそとマスクやゴーグルやマントをつけ、「変身」し始める。呆然と見つめる男2。

3人:独裁戦隊ファッショレンジャー(ポーズ)

3人マントを翻しはためかせながら走り去る。音楽カットアウトし男2我に返る。無言でペンを置き、紙をくしゃくしゃに丸める。

男2:何か違うぞぉおおおおおおーーーーー

泣きながら走り去る。
男1女1の笑い声
暗転。笑い声続きながら次のシーンへ


シーン3

男1と女1、ぬいぐるみ相手に勧誘をしている。男1と女1は何故か動物の耳としっぽがついている。
そこへ、女2、男3、女3が駆けつける。

女2:その一般生徒から手を離しなさい!

男3:強制的な勧誘は我々がゆるさんぞ!

女3:正義の拳が悪を撃つ!

3人:独裁戦隊ファッショレンジャー!(ポーズ)

男1:また出たな。ファッショレンジャー。そんな口上を3人で言ったからってビビルと思うなよ。

女1:光あるところに闇がある。

男1:正義あるところに悪がある。

二人:われら無秩序と自由の使徒、秘密結社アナーキーズ!(ポーズ)

女2:いつもいつもふざけた真似を!

男3:今日こそは叩きつぶしてやる。

女3:イエロー行きます!

女3飛びかかろうとするが

男1:ストーップ!

女3中途半端な態勢で止まる。

男1:ちょっとでも動くと、この青少年の未来が危ういぞ。

女1ぬいぐるみの耳にかみついている。
女3中途半端な態勢で止まっている。

男3:ああ、これは確かに青年期の高校生にとっては刺激が強すぎる!

男1:今後の彼の精神に影響を及ぼす可能性大だ!さあ、どうする!

女2:くっ。卑怯な。

男1:ふわっはっはっは。何とでも言え。いかなる手段を使おうとも結果によって全て正当化されるのだ。

男3:おのれ。

女2:落ち着きなさい。興奮したら彼らの思うつぼよ。

男3:し、しかし。あんなものを見せられたら!

女2:冷静になって考えるのよ、必ず何かチャンスがあるはず。

女3まだなお中途半端な態勢で止まっている。

女3:あの、辛いんですけど……

男1:あ、ああ少し楽にしていいよ。

女3:はい。有り難うございます。

男3:リーダー!

女2:どうした。

男3:奴は……どうやら、女に甘いようです。

女2:それって普通じゃないの?

男3:いや、あ、言われてみれば……あ、でもこういう作戦はどうでしょう。

全員フリーズ。男1が客に向かってモノローグ

男1:説明が必要であろう。独裁戦隊の隊員は、人体改造を施され、内蔵された無線により、声を出さずに会話できるのであった。

全員動き出す。

女2:よし、それで行きましょう。

女2つかつかと歩き出し、男1の前でつまづいてよろめく。

女2:あっ

男1:あ、大丈夫?(抱き留める)

男3:今だ!

男3、女1に駆け寄り、ねこじゃらしをぱたぱたさせる。

男3:ほーらこっちだよー。(ぬいぐるみから引き離そうとする)

女1:にゃ、にゃあ。(動くものに興味が引かれるのであった)

女2:イエロー!その一般生徒を救い出して!

女3:あっはっ、はい!

男1:あ、しまった!(女2を抱き留めているので動けないのである)

男1、女2をきちんと立たせてから離れる。

男1:仕方ない、今日はこの辺で引き下がるとしよう。撤退だ!

女1はまだじゃれている。

男1:キャット!何してる!早く行くぞ。

男1、女1を引っ張っていく。

女1:にゃぁーにゃぁー

男1:ええい哀しげに泣いたって駄目だ。帰るぞ。

男1、女1去る。ちょっとしてまた戻ってくる。

女2:まだ、やるの?

男1:言い忘れたことがある。

二人:おぼえてろー!

今度こそ去る

女3:先輩これ……

男3:先輩じゃない!グリーンとレッドだ!

女2:どうしたの?イエロー

女3:これ、ただのぬいぐるみみたいですけど。

女2:あら、ほんとだ。

男3:ああああなんでこんな事にもっと早く気づかなかったんだ。信じられないよ。

女2:まんまとだまされた訳ね。恐るべしアナーキーズ

余韻を残しつつ暗転。


シーン4

世界征服研究部活動場所

男1:あ、電気付けて。

女1:はい。(照明つく)

男1:まあ、以上が我が部の通常の活動である。何か質問は?

男2:あの、なんで

男1:質問は手を挙げてからするように

男2:はい、(手を挙げようとするが)

女1:はい(こっちの方が早い)

男1:どうぞ

女1:なんでしっぽや耳がついているんですか?

男1:うん、いい質問だ。実はな。歴史ある我が部のOB・OGは皆あのような半獣人なのである。我が世界征服研究部では、入部したもの全員があのような半獣人になってもらう。他に質問は?

男2:はい、あの(手をあげようとするが)

女1:はーい、はいはい。(こっちの方が早い)

男1:はいどうぞ。

女1:どうやってー、あんな半獣人になるんですか?

男1:うーむ、またまたいい質問だ。実はな、我が世界征服研究部の創始者であらせられる、初代部長が考案した観念合成装置を使って人間と他の生物を合体させているのだ。この観念合成装置についてはまたあとで説明しよう。もう質問は無いね。では

男2:はい!あります!(手を挙げて立ち上がる)

男1:な、なにが?

男2:質問が!(前へ進む)

男1:質問なら説明のあとで……(たじろぐ)

男2:今聞きたいんです!(顔を寄せてにらむ)

男1:いや、だからあとで。(目をそらす)

男2:答えて下さい!(首をつかむ)

男1:いや、だから君の質問には……うぐ

男2:そうやってまた有無を言わさず押し通すつもりでしょう!だまされませんよ僕は!

女1:ちょ、ちょっとそれ以上やると……

男2:(放す)はあ、はあ、……

女1:ああっ、部長ッ、大丈夫ですか?

男1:は……はっはっはっ私が死んでも……悪は滅びない……なぜなら……

女1:部長!その台詞は言う相手が違いますよ!

男1:大丈夫。ちょっと向こうの世界をかいま見ただけだ。

男2:冗談で誤魔化さないで質問に答えて下さいよ。

男1:そんなに重要な質問なの?

男2:重要です。

女1:また今度にしない?

男2:いやです。

女1:じゃあ、聞いてあげる。

男1:ああ!なんで君が決めるんだよ。

女1:まま、いいじゃないですか。で、質問は?

男2:はい、活動内容についてはさっきのビデオでだいたい分かりました。

男1:じゃあ、いいじゃないか。

男2:一番肝心なところが分からないんですよ。

女1:肝心なところと言うと?

男2:なんで、ああいう活動をしなければならないか、その理由です。

男1:……

女1:……

男1:だって……、そりゃぁ……、ねえ?

女1:え?

男1:答えろよ。

女1:なんで私が?

男1:君が質問受け付けたんだろう。

女1:そんなこと言われても。私よく知らないんですけど

男1:よく知らないで、去年1年やってきたのか君は!?

女1:いや、ほら、アレだ、そんなこと知らなくてもやって行けた人がここにいるわけで。

男2:知らなくてもやっていけるかどうかじゃなくて、何故ああいう活動をするのかが聞きたいんです!

男1:いや、だからね。こういう活動をするために部として結成したんであって、何故とか聞かれても。

男2:じゃあ、何故そういう活動をする団体が必要なんですか。

男1:うん、あのつまりだな。やはりこう生徒会本部が横暴を働かないようにだな、こう、与党に対して野党があるように、対抗組織というものが必要になるわけで、

男2:それがこの部ですか?

男1:そうだ。

男2:そんなに横暴を働くような生徒会には見えませんが?

女1:私もそう思う。

男1:そこが問題なのだ。いい人のような顔をして、近づいてくる。そしてああしなさい、こうしなさいと親切ぶって我々に首輪や鎖を付けていくのだ。気がついたときには我々は檻の中にいる。自由をうたい文句にしているが実際は檻の中での自由だ。与えられた自由だけを見せられて自由だと思っているが、普段がんじがらめに縛られているのに気づいていないんだ。本当の自由というのはこんなモンじゃないんだ。

女1:そうだ、我々は檻の中にいる!

男2:我々は解放されなければならない!

男1:我々は飼い慣らされた犬ではない!

女1:飼い主の手に噛みつかんとする野獣である!

男2:全体化を計ろうとする生徒会に対し

男1:断固として立ち向かう、それが!

3人:世界征服研究部!

男1:集え若人!きたれ進入部員!

3人:ハーッハッハッハッハー

笑い声フェイドアウト
暗転


シーン5

続き

女1:と、あんなCMを作ってみたものの。

男2:誰も来ないですね。

男1:まあ、毎年こんなもんだ。それはそうと**君、君もついに本格的に我が部の一員になるときが来た。

男2:まだ、本格的じゃなかったんですか?

男1:当たり前だ。こんな入部届けを出したぐらいで部員になれると思ったら大間違い。君はまだこの部が分かってないようだな

男2:あ、まだ部員じゃなかったんですね、じゃあ。(帰ろうとする)

男1:逃がすか!ヒュッ!パシッ!クルクルッ!(見えない縄でまかれたんだな)

男2:ああっ身動きがとれない!

女1:逃げようなんて甘いわよ。

男1:ふっふっふ君もだんだんこの部が分かってきたようだな。

男2:やだなあ、冗談ですよ。

男1:まあ、今さら逃げようなんて甘い考えはおこさないことだ。

女1:たとえ、地の果てまで逃げようと

男1:地獄の果てまで追いかける!

女1:たとえ登校拒否になろうとも

男1:親切を装って家に訪れ、晩御飯までごちそうになって帰る!

女1:それが

3人:世界征服研究部!

男1:さあ、宣伝はこれぐらいにして、本題に入ろう。

男1:今日の活動だが、**くんを怪人にする。

女1:いよっ。待ってました!

男1:では、**くん。この中に入り給え。(押し込もうとする)

男2:いや、ちょっと待ってくださいよ!

男1:なんだ往生際の悪い奴だな。

女1:男らしく無いぞ。

男2:そういう問題じゃないでしょう。説明ぐらいして下さいよ。いきなり怪人にするとかいって、二人がかりで訳も分からない装置に押し込んで、どういうつもりですか?

男1:あれ、説明してなかったっけ?

女1:まあ、いいじゃない。細かいこと気にしないで、

男2:気にしますよ。不安じゃないですか。

男1:説明してもいいけど、たぶん君にはわからないぞ。

男2:馬鹿にしないで下さいよ。僕だって一応義務教育は終えたんですから。

女1:いや、でも分からないよ。私もまだ分からないモン。

男1:まあ、人間分からないことの方が多いんだよ。いいからとりあえず入り給え

男2:いいからとりあえず説明だけでもして下さいよ。

男1:長いよ。

男2:いいですよ。

男1:今日の活動時間がなくなるんだけど。

男2:そんなことどうだっていいじゃないですか。

男1:分かった。そこまで言うなら説明してやろう。アレを。

女1:はーい。

女1、スライドやら、黒板やらを持ってくる。
それらを使って二人で説明を始める。

男1:まず、人間の知覚について説明をしなければならない。人間は目や耳、鼻などいわゆる五感を使って外界の情報を収集する。その情報は頭の中で統合、編集され感覚を作る。我々が見ているのは対象の存在そのものではなくて対象から発せられる情報をから作り出された影のようなものなのである。この影を便宜上感覚と呼ぶことにする。

女1:普段使っている感覚という言葉とはちょっと意味合いが違うから注意してね。

男1:感覚というのは二つに分類される。一つは印象。もう一つは観念だ。印象は観念よりも強烈で生々しいイメージだ。観念は印象よりも薄い色あせたイメージだ。観念には二種類あって、単純観念と複合観念がそれだ。一つの印象に対して一つの単純観念が存在する。複合観念というのは複数の単純観念が融合して出来ている。複合観念に対応する印象はない。では具体例を挙げて説明しよう。

女1:(黒板に絵を描いたりしながら)はい。まず、馬という存在があります。で、これを見た人は馬の姿や体格の印象とそれらに対応した単純観念を得ます。さらにその単純観念を寄せ集めて一匹の馬という複合観念を形成します。そこに、一羽の鳥から得た翼と言う単純観念を付け加えると。いわゆるペガサスができあがるわけです。

男1:これがだいたいの原理だ。分かったかな?

男2:……何となく、狐につままれ……

男1:そうか何となく分かったかあ。じゃあ、実際に入ってみよう。

男2:ちょ、ちょっと待ってくださいよ。

男1:なんだよう、説明したじゃないかよう。往生際の悪い奴だな。

女1:男らしく無いぞ。

男2:そういう問題じゃないでしょう!だいたい観念だとかの話はともかくこの機械の原理は説明されて無いじゃないですか。

男1:だぁからさっきも言っただろう。単純観念を合成して複合観念に変える装置だよ。話聞いててわかんなかったのか?

男2:それはだいたい分かりましたよ

女1:じゃあいいじゃない。

男2:良くないですよ。

男1:何が良くないんだよ。

男2:この機械が単純観念を合成するにしてもどうやってやるんですか。仮にそれが出来たとしても。どうしてそれが現実のものになるんですか。

男1:観念を合成する仕組みについては大学レベルの知識が必要になるのでここでは言わないでおくが、そういう観念が合成されたんだから、それが現実のものになるのは当然だろうが!

男2:そんなの納得できません!

女1:あきらめて納得しなさい!

男2:そんなことできる分けないですよ。第一観念とか印象とかって人間の心の中の話じゃないですか。それがどうして現実の存在を変化させられるんですか。

男1:だからさっきも言っただろう。我々は現実の存在を見ているんじゃない!我々は自分の頭が作り出した幻影を見ているのだ!

男2:その幻影は現実の存在がもとになっているんだから、現実の存在がかわってなかったら、幻影だってかわらないはずじゃないですか。

男1:だからその幻影の方を変えるんだよ!

男2:でも、現実はかわらないじゃないですか。

男1:現実はかわらないが、そう認識される。

男2:現実がかわらなかったら、意味が無いじゃないですか。

男1:現実は関係ない!

男2:そんなの全然科学的じゃないじゃないですか!

男1:これは科学的な機械ではない!

男2:……

男1:言うなれば……そう!非科学的な機械だ!

男2:……

女1:言い得て妙……ですね。

男1:いいか**この際科学的事実がどうなってるとか、そういうことは問題じゃない。重要なのはそれを信じることだ。

男2:だまされろって言うんですか?

女1:違うのよ。だからただ言うことを信じなさいって

男1:そうだ素直に先輩の言うことを信じろ。

男2:そんなこと言ってまた騙そうとするんでしょう。

男1:ええーい。もう良い。

男2:え?じゃあ

男1:強制的に入れる。

男1・女1、男2を装置の中に押し込もうとする。

男2:ちょっと、やめて下さい!僕は入りませんよ。

女1:大丈夫。ちゃんと入る。

男2:そういう事じゃないでしょ。だいたい無理矢理押し込んでも意味無いでしょ。

男1:大丈夫だ。我々は信じている。

男2:どういうことですかそれは!

男1:ええーい。往生際の悪い奴だな。

女1:あーら。お客さんいい体してますわぁーん。

と言いつつ、男2の耳たぶをまさぐりだす女1

男2:ちょっと先輩!何処触って……ああっ

男2装置の中へ。すかさず、扉を閉める。
そこへ、現れる独裁戦隊。

3人:そうはさせるか!

二人:その声はっ!

女2:ひとつ、秘密の裏組織

男2:ふたつ、不思議な非営利団体

女3:みっつ、みんなの人気者!

女2:呼ばれてないのにやってくる!

男2:いかした姿の3人組

女3:む、む、えーっと。む、無駄な抵抗やめなさい。

3人:中身は誰だか言えないが

3人:やっと登場、独裁戦隊ファッショレンジャー!

女2:私たちが来たからにはもう安心よ。

男1:遅いよー。

女1:もう入れちゃったモンね

男2:しまった。遅かったか。

男1:っていうか口上も長いよー

女1:もうちょっと短くね。つっかえてたし。

女3:すいません。

女2:謝ってる場合じゃないでしょ。彼を助け出さないと。

装置を開けようとする。

男1:まて!今開けると危険だ!

女2:そうなの?

男1:あーあー。これだからしろーとはこまるんだよなー。なんにも知らないんだから。

女1:まったく。やれやれ。下手すれば大爆発ですよ。

女2:ええっ?!

男1:だいたいなんのために、こんなに厳重にポリカーボネイトで多層コーティングしてあると思ってんだよ。IRDMが外気中のEPGAとふれあって反応しないようにってわかんないのか?

女2:ご、ごめん。

女1:事故が起きたら後免じゃ済まないんですよ。IRDMが0.1ピコグラムでもEPGAと反応したら励起状態になったSRKが飽和して臨界状態になるんですよ。

女2:はい、

男1:1836年にはバーニンガムで工場が一つ吹っ飛んでるんだぞ。もっと神経質になってもらわないと困る。

続くかも

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