令和2年の年末調整について

 事務所通信 vol.150

         令和2年8月20日

毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご清祥のことと存じます。

 コロナ禍において、感染防止と経済活動の両立が必要とされ非常に事業運営に困難な状況が続いております。売上減少に伴う諸制度の活用も必要ですので経済産業省・労働厚生省等のホームページ等で最新の情報を取得するようお願いします。

 今回は、本年の年末調整から適用される、改正所得税での変更点について説明したいと思います。

1.ひとり親控除の創設

 未婚のひとり親に対して、ひとり親控除が創設されました。「ひとり親」とは、現に婚姻をしていない者又は配偶者の生死の明らかでない者で一定のもののうち、次に掲げる要件すべてを満たすものを言います。

1)生計を一にする子でその年分の総所得金額等が48万円いかのものを扶養している事

2)従業員の合計所得金額が500万円以下であること

3)従業員と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる以下のものがいない事

 ア、従業員が世帯主である場合…同一の世帯に属する者の住民票に世帯主との続柄が未届の夫又は妻である旨の記載がされた者

 イ、従業員が世帯主でない場合…その者の住民票に世帯主との続柄が未届の夫又は妻である旨の記載がされているときの世帯主

 居住者(従業員)がひとり親に該当する場合には、ひとり親控除として、35万円を控除できます。

2.寡婦控除・寡夫控除の見直し

 上記「ひとり親控除」の創設に伴い、寡夫控除はひとり親控除に吸収されるかたちで廃止され、寡婦控除は扶養する子供がいない場合で、合計所得金額が500万円以下の者もののみが対象とされるよう対象が縮小されました。

3.基礎控除申告書の制定

 令和2年の年末調整から、基礎控除を受けようとする場合は、「基礎控除申告書」を事業主に提出しなければならないこととされました。

 所得税の改正により、基礎控除額が合計所得金額により逓減されることになります。令和1年より配偶者控除を適用される場合に作成して頂いている「配偶者控除等申告書」が改定され、基礎控除の適用においても「基礎控除申告書」を作成して頂くことが必要となりました。令和2年分からは従業員の方に3つの申告書を一葉にまとめた「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を作成・提出して頂くこととなります。

4.所得金額調整控除の創設

 改正前に対して850万円を超える給与等の収入金額のある居住者は、給与所得控除額が引き下げられ負担が増加する為、本人が特別障害者や特別障害者を扶養する場合、23歳未満の扶養親族を有している場合は、一定額を調整する所得金額調整控除が創設されました。

 所得金額調整控除申告書に記載された内容にもとづいて、給与等の収入金額(1,000万円が限度)から850万円を控除した金額の10%が給与所得の金額から控除されます。

5.年末調整の電子化

 上記のように各種控除の計算が複雑になり、手書き申告書では間違いが多くなる事が予想される事や、同じ内容を各申告書に記載する事、また前年の内容を繰越す事等において利便性があることから、年末調整においても上記申告書を電子化する予定となっています。(国税庁HPで利用できるソフトを提供予定)

 但しここで注意しなければならないのは、年末調整の電子化を行う場合、事業所は従業員が提出した電子データを受取る必要があります。このため電子化対応した年調ソフトを導入する必要がありますし、また所轄税務署へも年末調整を電子にて行う事の届出が必要となります。

 当事務所では、JDLの年末調整ソフトを利用しておりますが、現時点では電子化対応の詳細については不明となっております。

 本年の当事務所での年末調整事務は、申し訳ありませんが従業員様が電子化対応されたといたしましても、事業所への資料の提出は昨年同様紙による申告書をお願い致します。