個人の事業継承税制(贈与税)について 事務所通信 vol.144 令和元年8月20日 顧問先各位 毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご清祥のことと存じます。昨年「非上場株式等に係る相続税・贈与税の特例納税猶予制度」(10年間限定)が創設され、本年は、個人事業版の事業承継税制(10年間限定)が創設されました。 法人版の事業承継税制に似た制度で、対象となる事業用資産の贈与税又は相続税が納税猶予される制度です。なお対象となると贈与税の特例納税猶予を受けた場合、その後贈与者の死亡による相続税においても特例納税猶予を受ける事が出来ます。(※贈与税の猶予対象分は相続税の課税対象となります。) 1.特例承継計画の作成 特例納税猶予の適用を受けるには、後継者が「認定経営改革支援機関」の指導・助言を受けて「個人事業承継計画」を令和6(2024)年3月31日までに都道府県庁に提出し、「確認書」の交付を受ける事が必要です。 2.贈与をする期間 特例納税猶予の適用を受けるには、令和10(2028)年12月31日までに、贈与により後継者が特定事業用資産を取得する事が要件です。先代事業者は認定申請時までに「廃業の届出書」を提出し、個人事業継承者は、認定申請時までに「開業の届出書」を提出する必要があります。また原則贈与の日から2月以内に「青色申告承認申請書」を所轄税務署長へ提出する必要があります。 ※相続税についても本制度の適用はありますが、相続が発生してから手続きを期限内提出するのは時間的制約があると思われます。 3.都道府県知事への認定申請(贈与税) 贈与日の属する年の翌年の1月15日までの間に、「個人事業承継者」の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県庁へ認定申請書(様式第7の5他)を提出する必要があります。 4.特定事業用資産 納税猶予の対象となる「特定事業用資産」とは、先代事業者の事業の用に供されていた以下の資産で、先代事業者の贈与又は相続開始の年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されているものをいいます (1)宅地等 事業の用に供されていた土地又は土地の上に存する権利で、建物又は構築物の敷地のように供されているもののうち、棚卸資産に該当しないもの(納税猶予の対象となる面積は400uまで) (2)建物 事業の用に供されていた建物で棚卸資産に該当しないもの(納税猶予の対象となる面積は800uまで) (3)減価償却資産 固定資産税が課税される償却資産(構築物、機械装置、器具備品、船舶等)、自動車税又は軽自動車税において、営業用の標準税率が適用される自動車等 ※不動産貸付業、駐車場業及び自転車駐車場業をのぞく ※棚卸資産、事業用の預貯金、売掛金等は対象外 5.猶予打切り事由 特例猶予が、経営状況の変化等により猶予を打切られることがあります。主な打切り事由を以下に列挙します。 @事業を廃止した場合、青色申告の承認取消し、取りやめた場合 A資産保有型事業、資産運用型事業に該当した場合、 B特例受贈事業用資産が青色申告書の貸借対照表にすべて計上されなくなった場合(一部を事業の用に供しなくなった場合もその部分は猶予打切り) C事業所得の収入金額が零になった場合、特例受贈事業用資産を譲渡した場合等 6.先代経営者の要件(贈与税) @贈与年、その前年及び前々年において、事業所得に係る青色申告書(複式簿記記帳者の特別控除対象者に限る)を提出していた者であること A贈与年の前年において、特定事業用資産に係る事業が資産保有型事業、又は資産運用型事業に該当しないこと等 7.特例後継者の要件(贈与税) @個人事業承継計画の確認を受けた承継者であること A20歳以上(2022年4月1日以降は18歳以上)であり、かつ、贈与の日まで引き続き3年以上特定事業用資産に係る事業等に従事していたこと B青色申告の承認を受けていること又は受ける見込みであること C先代事業者から受贈した特定事業用資産の全てを取得し、かつ自己の事業の用に供していること等 8.担保の提供 納税猶予額に見合う担保を税務署に提出する必要があります。 |