賃上げ税制について

事務所通信 vol.142

         平成31年4月20日

顧問先各位

 平素は格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆さまにおかれましては益々ご清祥のことと存じます。

本年3月末決算法人から所得拡大税制が「賃上げ・設備投資促進税制」に改組され3年間延長されました。

昨年までの所得拡大税制と同様の制度ですが相違する点もございますので、中小企業者として注意する点を少し記述したいと思います。

1.中小企業における所得拡大促進税制の改組

 従来の所得拡大促進税制は、青色申告書を提出する中小企業者等が、国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、適用対象年度の給与等支給額などに基づく一定の要件をみたすときに、税額控除が受けられるといったものでした。今回一部これらの内容が変更されたうえで、制度の継続が行われています。

適用期間:2018年4月1日から2021年3月31日までの間に開始する各事業年度(設立事業年度は適用対象外)

適用要件:国内雇用者に対して給与等を支給する場合で、次の要件を満たすとき

(当期の平均給与等支給額−前期の平均給与等支給額)/前期の平均給与等支給額>=1.5%

税額控除:給与支給増加額×15%(通常)

※ 以下の@及びAの要件を満たすときは、通常の場合にかえて

給与支給増加額×25%(拡充措置)

@(当期の平均給与等支給額−前期の平均給与等支給額)/前期の平均給与等支給額>=2.5%

A次の1)又は2)のいずれかの要件をみたすこと。

1)(当期の教育訓練費の額−前期の教育訓練費の額)/前期の教育訓練費の額>=10%

2)その中小企業者等がその事業年度終了の日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定をうけたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと。

以上のように改組された賃上げ税制では、賃金の上昇率が前年比2.5%増しと多いときに、上記1)又は2)の要件をみたす場合、通常の対象額の15%でなく25%の拡充措置の適用が受けられます。

※ ただし、通常及び拡充措置の税額控除の限度額は、当期の法人税額の20%が上限です。

 次に拡充措置の適用を受ける場合の、教育訓練費の明細書の記載例を以下に引用します。また教育訓練費の明細書には下記の1から4の項目を記載する必要があります。

1.教育訓練等の実施時期

. 教育訓練等の内容

3.教育訓練等の対象となる国内雇用者の氏名

4.その費用を支出した年月日、内容及び金額並びに相手先の氏名又は名称

(経産省賃上げ税制ガイドブックより引用)

上記の要件を満たしたうえで、これらのものを申告書に添付した場合、賃上げ税制の拡充措置の適用を受けることができます。

また、賃上げ税制での継続雇用者とは、前期と当期を通して(24か月)給与の支給がある者だけが対象となります。前期及び当期に一部でも支給がある者が対象であった旧法の所得拡大税制の継続雇用者とは相違していますので資料の作成にはご注意下さい。

(所得税にも同様の制度があります。適用は2019年分の所得税確定申告分からです。)