年次有給休暇取得の義務化について

事務所通信 vol.140

         平成31年1月20日

顧問先各位

毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご清祥のことと存じます。本年もよろしくお願いします。 昨年の働き方改革関連法の改正において、平成31年4月から、一定日数の年次有給休暇の確実に取得をさせる為、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、うち5日について、毎年時季を指定して与えなければならないこととなりますのでご注意下さい。また「年次有給休暇管理簿」を作成することが義務付けられました。保管義務期間は3年間となります。

1. 年次有給休暇

年次有給休暇とは、雇入れの日から6か月間継続勤務し、その全労働日の8割以上出勤した労働者に対して最低10日を付与しなければなりません。(一般労働者の場合)その後は、継続勤務年数1年ごとに一定日数を加算した日数となります。(一般労働者の場合の最大付与日数は20日となります、また前年度に取得されなかった残日数がある場合は翌年まで繰り越されます。)

2. 計画的付与制度とは

 日本での有給休暇の取得率が低い為、職場において業務との兼合いをつけながら気がねなく年次有給休暇を取得できるようにするための制度として、労働基準法では年次有給休暇の計画付与制度が設けられています。計画的付与制度とは、年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分について、労使協定に定める時季に年次有給休暇を与えることができるというものです。

3. 計画付与制度の改正点

平成31年4月より使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、うち5日について、毎年時季を指定して与えなければならないこととなります。(罰則規定あり・中小企業も対象。)ただし、労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については上記時季の指定は要しません。

4. 計画付与の準備

@年次休暇取得の実態把握

 まず年次有給休暇の取得実態を把握し、年間5日の取得ができていない従業員がどの程度いるかを把握します。労働者各人の有給休暇管理台帳の作成は必要でしょう。また賃金明細等で本年度の有給休暇残日数を記載する等、従業員本人に対しても通知することも必要です。

A有給休暇の計画付与実施

例年有給休暇を概ね5日間取得できている場合は、当年度の使用日数を定期的に確認し、年度内の5日取得を指導します。なお例年取得が、5日間取得できていない社員は、未達成者リストを作成し、直属の上司に状況を報告し、休暇を5日間取得するよう計画付与を行います。

5. 計画の作成・実施

労使協定締結を前提に、年次有給休暇のうち、5日を除いた残りの日数を超える分について、計画的に休暇取得日を割り振ることができます。計画に基づき計画的付与を実施します。  例えば、年次有給休暇の付与日数が20日である従業員に対しては、15日までを計画的付与の対象とすることができます。(改正法の義務規定は5日間のみ)

この計画的付与の方法は例えば以下の3つの方法等があります。

@企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方法  

A班・グループ別の交替制付与方法  

B年次有給休暇付与計画表による個人別付与方法

具体的な導入例としては、夏季、年末年始の時季に付与する、業務閑散期に計画的付与日を設けて交替で付与する、特別休暇として従業員の誕生日を指定する等があります。

なお計画付与制度の導入には、就業規則による明文化と労使協定の締結が必要となります。労使協定には、以下の項目を定める必要があります、それぞれの取り扱いを決定し、協定書に記載します。

@計画的付与の対象者 

A対象の年次有給休暇の日数 

B計画的付与の具体的方法 

C計画的付与日の変更 

D対象分の年次有給休暇日数がない者の扱い