非上場株式等の事業継承税制について

事務所通信 vol.138

         平成30年9月20日

顧問先各位

 毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご清祥のことと存じます。平成30年度の税制改正において、従前からあった「非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度」に加え「非上場株式等に係る相続税・贈与税の特例納税猶予制度」(10年間限定)が創設されました。贈与税の特例納税猶予を受けた場合、その後贈与者の死亡による相続税においても特例納税猶予を受ける事が出来ます。(贈与税の猶予対象分は相続税の課税対象となります。)

1.特例承継計画の作成

特例納税猶予の適用を受けるには、会社が「認定経営改革支援機関」の指導・助言を受けて「特例承継計画」を平成35(2023)年3月31日までに都道府県庁に提出し、「確認書」の交付を受ける事が要件です。

2.株式等を取得する期間

特例納税猶予の適用を受けるには、平成39(2027)年12月31日までに、相続(遺贈を含む)・贈与により自社の株式等を取得する事が要件です。

3.一般納税猶予との相違点

(1)対象株式数

一般では対象株数は総株式数の2/3までの上限あり、特例は全株式数適用可能

(2)納税猶予割合

一般は該当株式に係る相続税額の80%、特例は100%が猶予対象

(3)猶予打切り要件の緩和

一般では、常時雇用する従業員数を5年平均で、贈与時点の80%以上維持しなければならないとの要件がありますが、特例は80%を下回った場合でも、認定経営革新支援機関の意見が記載されている「従業員8割維持要件を満たせない理由を記載した書類」を都道府県庁に提出した場合には、認定取消しはされません。

(4)後継経営者

一般は後継経営者一人のみですが、特例は後継経営者3名まで対象と出来ます。

(5)相続時精算課税

一般は受贈者は推定相続人等後継者のみですが、特例は推定相続人以外の特例後継者も適用できます。

(6)特例承継期間後の納税猶予税額の減免

事業承継税制の納税猶予税額の免除は、経営承継者が死亡した場合等を除き原則ありませんが、一般の場合は民事再生法や会社更生法適用時は、その時点で継承株式等を再評価し相続税を再計算して、猶予税額がこの再計算額を超える部分の税額を免除できます。特例ではさらに、譲渡、合併による消滅、解散の時も同様の再計算で猶予税額の一部を免除できます。

4.猶予打切り事由(適用後5年以内)

特例猶予が、経営状況の変化等により猶予を打切られることがあります。猶予を受けてから5年間は特に厳しい条件を守る必要があります。

主な打切り事由を以下に列挙します。

@特例経営承継受贈者が代表権を有しないこととなった場合

A特例承継株式等の一部の譲渡又は贈与をした場合

B特例認定贈与承継会社の総収入金額が零になった場合、資本金の額の減少又は資本準備金の額を減少した場合

C届出書が提出期限までに所轄税務署長に提出されない場合

5.先代経営者の要件(贈与の場合)

@会社の代表者であったこと(贈与時までに代表権を返上する)

A先代経営者と同族関係者で総株主等議決権等の50%超の株式を保有し、かつ、その同族関係者の中で筆頭株主であったこと

6.特例後継者の要件(贈与の場合)

@会社の代表者であること

A20歳以上であり、かつ、役員就任後3年を経過していること

B同族関係者と合わせて過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中に保有株式数の上位者がいないこと

C贈与のときから認定申請日まで引き続き贈与により取得した認定承継会社の株式等のすべてを保有していること