軽減税率と売上・仕入れの簡便計算について

事務所通信 vol.125

              平成28年5月20日

顧問先各位

 毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご清祥のことと存じます。さて今回は昨年末に発表されました与党税制改正大綱の内消費税の軽減税率制度について、少し説明したいと思います。

1.軽減税率制度

 平成29年4月1日以後、標準税率が10%に引き上げられる際に、食料品等に対し、軽減税率8%を適用する制度が創設されます。また、複数税率制度に対応した仕入税額控除の方式として、適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)を平成33年4月1日から導入します。インボイス導入後は、消費税額の計算はインボイス記載額の積み上げとなります。(交通費等一部のものを除く)

2.対象品目及び税率

 軽減税率は6.24%(地方消費税と合わせて8%)

@飲食料品の譲渡(食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く。)の譲渡をいい、外食サービスを除く。)

 上記には、食品衛生法上の飲食店営業、喫茶店営業その他の食事の提供を行う事業を営む事業者が、一定の飲食設備のある場所等において行う食事の提供を除きます。(販売時点で食事の場所を確認)

 飲食料品と飲食料品以外の資産が一体となっている資産については、飲食料品に該当しない。ただし、一定金額以下の少額の資産であって、当該資産の主たる部分が飲食料品から構成されているものについては、その全体を飲食料品として軽減税率の対象とされます。

A定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡

3.インボイス方式が導入されるまでの間の経過措置

@現行の制度(請求書等保存方式)を維持されます。ただし、課税仕入れが軽減税率対象品目に係るものである場合には、請求書等に「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」及び「税率の異なるごとに合計した対価の額」を加えます。(これらの事項を、交付を受けた事業者が追記することを認める措置を講ずるとしています。)

A売上又は仕入れを税率の異なるごとに区分することが困難な中小事業者に対して、以下の簡便に計算することを認める措置を講ずるとしています。(原則は、売上・仕入ともに税率による区分経理が必要)

 基準期間における課税売上高が5,000万円以下である軽減対象課税資産の譲渡等を行う事業者(免税事業者を除く。)が、平成29年4月1日から平成33年3月31日までの期間に、課税売上の税率の異なるごとに区分することにつき困難な事情があるときは、以下の方法を用いることを認める措置を講ずるとしています。

 売上税額の簡便計算に係る経過措置

1)連続する10営業日の課税資産の譲渡等に占める軽減対象課税資産の譲渡等の割合による方法

2)卸売・小売の場合、課税仕入れの全体における軽減税率適用課税仕入れの割合(簡易課税制度の適用を受けない場合)

3)区分することが困難な状況がある時、軽減対象課税資産の譲渡等の割合を50%とする方法

 基準期間における課税売上高が5,000万円以下である軽減対象課税資産の譲渡等を行う事業者(免税事業者を除く。)が、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの期間に、課税仕入れの税率の異なるごとに区分することにつき困難な事情があるときは、以下の方法を用いることを認める措置を講ずるとしています。

 仕入税額の簡便計算に係る経過措置

4)卸売・小売の場合、課税資産全体における軽減税率適用課税売上の割合(課税売上の経過措置2及び簡易課税制度の適用を受けない場合)

5)平成29年4月1日から平成30年3月31日までの日の属する課税期間の末日までに、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を提出した場合は、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用が認められます。

B区分することが困難な中小事業者以外の事業者に対する売上・仕入れ税額の簡便計算の経過措置

 平成29年4月1日から平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの期間について、売上税額は上記簡便計算の1及び2の方法が認められ、仕入れ税額は4及びの5に準じた制度の届出を行った場合、特例を受けられることとしています。