賃金計算事務について
事務所通信vol.100
平成24年9月20日
顧問先各位
9月に入り、国内での政情不安に加え、隣国との領土問題等も発生し、年初から平成24年は大変な年となると予想されていましたが、まさに大変な1年となっております。
また経済においてもユーロ危機をひきずっており、いまのところ景気の上昇は実現できておりません。
今回は賃金計算の注意点について、若干の説明を行いたいと思います。
賃金の支払いについては労働基準法では、毎月に一回以上、一定の期日を定めて通貨(現金)で支払うよう定められています。
余談ですが、1月分の賃金の支払いを2月10日に支払うよう、賃金規定等で定めている場合は、所得税では2月分の所得となります。
@
雇用保険料
毎年、労災保険・雇用保険の保険料は4月から変更されます。従ってこれらの保険料率に変更があれば、同一賃金であっても4月分から支払い賃金が変更されます。
A
介護保険料、協会けんぽ料
毎年3月に保険料率が変更されますので、@同様、4月分の賃金から変更されます。
B
厚生年金保険料
毎年9月に保険料率が変更されます、この為、10月分の賃金から変更されます。尚、この厚生年金の保険料率の改定は現在のところ平成29年9月まで、毎年引き上げる事とされています。
C
算定基礎届による標準報酬額の改定
毎年7月10日までに提出した算定基礎届により、9月に標準報酬が改定されます。この為、10月分の賃金から改定された標準報酬に基づき、保険料が改定されます。
D
特別徴収住民税
1月末までに、前年に賃金を支払った従業員の給与支払報告書を従業員の住所へ報告する義務がありますが、年末調整をした主たる給与の支払い企業には、5月に6月分から翌年5月分までの住民税(前年所得分)を賃金から控除し納付する義務があります。
この事を特別徴収の住民税と言います。これまでは従業員数の少ない事業所等では、各従業員に直接徴収するよう役所へ依頼する事で、事業所としては特別徴収する事務負担を軽減してもらっていました。
しかし、本来源泉所得税同様、賃金の支払い時に、事業者が賃金から控除して、各役所へ納付する事が原則である為、近年は原則どおり厳格な取扱いを行うよう役所から指導が強化されて来ております。
なお源泉所得税の納期の特例同様、人数が少ない場合、特別徴収住民税の納付の特例も届出る事により適用が可能です。
E
復興特別税の適用
平成25年1月から、平成49年まで復興特別税が適用される事となります。源泉所得税においても本来の源泉所得税に上乗せして徴収・納付する事となります。
以上の事から、賃金支払い額の改定は、賃金に異動がなかったとしても4月分、6月分、7月分、10月分、来年1月と改定される事となりますので賃金計算では十分な注意が必要です。
また、源泉徴収義務は、支払者にある為、源泉徴収を行わずに従業員に全額を支払った場合で、役所へ特別徴収住民税を支払った場合は、従業員から徴収出来なければ、事業所では二重負担となり、また従業員も負担額は課税対象となります。
近年、介護保険制度の導入、保険料率の変更が頻繁に行われる事となった為、給与計算も煩雑な事務となりました。この他有給休暇の消化や残業の適正な届出・計算を行っていないと、労働問題となる場合がありますので、普段からこれらの事に適正に対応しておく事が必要であると思います。