パワハラ・未払残業手当等について

 事務所通信vol.97

平成24年3月20日

顧問先各位  

平成と元号は決められましたが、激動する年がこのところ続いております。また東京では4年以内に大地震が起きる発生率が70%との予想もあり、各人・各社で危機管理への備えが必要な時代となりました。

 不景気にともなうリストラ等が多く行われ、また就業の形態の多様化もあって、労使間の労働紛争は増えて来ております。

 労働法は、一部中小企業への適用除外項目もありますが、殆どの項目は企業の規模に関係なく一律に適用されております。

 今回は特に注意すべき事項について、若干の説明を行いたいと思います。

1.未払残業について

・現行労働法では、法定労働時間は原則週40時間と定められており、この時間を超えて従業員を就業させるには、36協定を労働者と締結し、所轄労働基準監督署へ提出する必要があります。

  一般的な小規模事業所の場合、残業手当のみ計算してこの届け出をしていない事業所が多いのではないでしょうか。

 また、労働時間の管理が適正に行われていない場合、ある日突然、未払い賃金の請求がされるケースもあります。

  定時に退社させている会社では、未払残業の請求が突然行われると言った事はないでしょうが、残業時間を把握せず、残業手当を支払っていない企業では、突然に請求されても過年度分も含め支払はなければなりません。

  普段から、各労働者就業時間を正確に記録し、適正な計算を行って支払っておく必要があります。

  また、渡切残業手当を予め支払っておく場合でも、実際の残業時間が手当を上回る場合は、差額を追加支給しなければなりません。

2.パワハラについて

・近時、セクハラだけでなくパワハラも労働裁判で、慰謝料の請求が行なわれるケースが出てきております。

  現時点ではパワーハラスメントの正確な定義等は、厚生労働省では公表されておりませんが、一言でいうと、職場等で上司等が従業員に教育・指導と言った名目でいじめや嫌がらせを行い、従業員が業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を受ける、またはその職場環境が悪化すると言った場合を言います。

  これらの行為が行われた場合、いじめや嫌がらせを行った者だけでなく、使用者(事業主)も安全配慮義務違反として、損害賠償を請求されます。

  この件に対して、まず事業主は普段から職場でパワハラが起こる事のないよう十分な体制を整えておく必要があります。

   パワハラの相談窓口や担当部門等を設置するのが、望ましいでしょう。

   ただ零細企業では、これらの設置する事が難しい場合もあると思いますので、普段から各従業員が相談出来る体制を作っておく環境を整備しておく必要があります。

   限られた人員で、担当者を決める事は困難かとも思いますが、企業の幹部は、普段から各従業員と十分なコミニュケーションをとり、従業員への指揮・命令が過度でないか、不適切な指導・教育となっていないか、パワハラに該当しないかを、十分に配慮した行動を行うよう心がける事が、パワハラの労働問題を未然に防ぐ事となります。

3.年次有給休暇について

 ・中小・零細企業では、上記の労働問題の他、年次有給休暇の取得に対しても、十分理解されていない場合が多いと思います。

  年次有給休暇は、入社日後6か月継続して勤務した一定の者に対し、法律上労働者に与えられる権利で、勤続年数等で最高20日まで取得する事が出来ます。

  これも実態は、会社への取得が100%消化される事がなく、理由がある場合のみ、認めると言った会社も多いです。しかし、労働法上では、会社は申し出があった場合は、休暇の取得時季を業務に支障が出る場合は、変更出来る権利を有すると言うだけです。

 以上のように、労働法は本来労働者に有利な法律であるにもかかわらず、あまり遵守されてこなかったのは、従業員が使用者と対等な地位になく使用者へ申し出る事を憚っていた為や、労働者自身が労働法をよく知らない為だと思われます。

 現下の厳しい雇用状況で、今後これらの労働問題が地域ユニオンや弁護士等を通じ、表面化し請求されるケースが増えてくる事も予想されます。予め事業主は労働法を十分に勉強し、労働法を遵守して問題の発生を未然に防ぐ事が重要だと思います。