派遣労働者の利用について

 事務所通信vol.94

平成23年9月20日

顧問先各位  

毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 3月に発生した地震・原発事故は想像を絶する規模で、未だ復旧しておらず、また世界同時不況も一向に回復する基調が見込めず、中小・零細企業においては、業績は上がっているところも少なく、また若者をはじめとする求人も増えてはおりません。

この様な状況下において、正規社員を雇用せず派遣労働者等を利用する企業も増加しておりますが、派遣労働者の雇用契約は派遣元会社と派遣労働者とが締結し、仕事は派遣先企業で指揮命令を受けて行うという正規雇用より複雑な雇用形態となります。労働者派遣法では、派遣労働者の保護の目的から多くの規定を派遣元・派遣先企業に義務づけております。

今回は、派遣労働者を利用する際の注意点を説明します。

@  雇用主

(1)雇用契約

@     一般社員……採用会社(請負会社の従業員を含む)

A     派遣社員……採用会社

(2)請負契約

発注者との雇用関係なし

A 事前面接の禁止

     派遣先が派遣労働者を指名することや派遣就業開始前に面接を行う事、履歴書を送

    付させる事は原則禁止されています。

また、派遣元会社が、派遣先会社が上記の事を行うことに協力する事も出来ません。

ただし、派遣労働者が、派遣先の職場見学を希望する事は認められています。

B 労働条件の明示

  (1)労働契約の締結時に、労働条件の明示が必要

    ・契約期間・就業場所・業務内容

    ・就業時間(残業の有無)

    ・休日・休暇

    ・賃金

    ・退職に関する事項(解雇の事由を含む)

書面により明示(交付)しなければなりません。

(2)派遣就業を開始する時に、就業条件の明示が必要

  ・業務内容

  ・就業場所

  ・指揮命令者

  ・派遣期間

  ・就業日、時間

  ・苦情の申出先(派遣先及び派遣元)

  ・期間制限抵触日

書面、FAX,メールのいずれかにより明示(交付)しなければなりません。

C 派遣禁止業務

・建設業務

・港湾運送業務

・警備業務

・病院等における医療関係業務

D 残業

派遣元会社の三六協定の範囲内で、派遣先会社から残業を命じる事ができます。(派遣先会社の三六協定ではありません。)

E 二重派遣、偽装請負

明示された就業条件と相違していれば、労働者派遣法違反となります。

また、派遣先から別の会社へ派遣する事は二重派遣となり、職業安定法違反です。

請負契約であるにも関わらず派遣先から指揮命令をすれば労働者派遣法違反になります。

F 年次有給休暇等

(1)派遣元の責任

 ・賃金の支払い、年次有給休暇、育児休業の付与

(2)派遣先の責任

 ・労働時間・危険防止・健康障害

(3)派遣先・派遣元両者の責任

 ・セクハラ・妊娠等の健康管理

G 解雇

派遣労働者を解雇できるのは派遣先会社ではありません。また派遣契約を解除する際は派遣期間の定めがあるので、正当な理由がない場合、損害賠償義務が発生します。

 この様に、派遣労働者の利用に当たっては、雇用契約者と指揮命令者が同一でないため本来は正規社員以上に労働法を遵守する様注意しないと、労働者派遣法等の違反となるケースが多くありますので、十分に理解した上で利用する必要があります