非上場株式の事業承継税制について

 事務所通信vol.93

平成23年7月20日

顧問先各位  

いつもお世話になっております。東北・東日本大地震と、原発事故が日本の景気低迷をさらに長引かせています。

 相続税法についても、本来であれば3月中に法案が成立し、4月から新法が適用されていたはずでしたが、国会審議が混乱し、法案の成立・適用開始時期は不確定となっています。

 この間にも相続・贈与は実際には発生し、納税者の税額だけが未確定となっています。納税者の税額を確定させる為、法案の早期成立、適用開始時期の確定等が必要であると痛感しております。

 今回は、すこし古い話となりますが、平成21年に制定された非上場株式の納税猶予の特例について略述したいと思います。

1.非上場株式等の相続税・贈与税の納税猶予特例

 後継者である相続人・受贈者が、相続・贈与により、経済産業大臣の認定を受ける場非上場株式の株式等を被相続人・先代経営者から取得し、その会社を継続して経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税・贈与税の内、その株式等に係る課税価額の80%(贈与の場合は、株式等に対応する全額)に対応する相続税の納税が猶予されます。(免税ではありません)

@事前手続き

・非上場株式等の納税猶予の特例を受けようとする場合、まず「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づき、「経済産業大臣の確認」をうける必要があります。(特定後継者、事業計画書等を地方経済産業局に提出

A申告時の手続き

・相続・贈与時に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づき、会社の要件等を満たしていることについての「経済産業大臣の認定」を受けます。

 (1)主な要件

・適用会社の要件

 風俗営業・資産管理会社・従業員がゼロの会社等は、適用を受けられません。

・後継者である相続人等の要件

  先代経営者の親族である事等

・先代経営者である被相続人等の要件

  会社の代表者であった事等

・担保提供

  相続税・贈与税及び利子税の額に見合う担保を、税務署へ提供する必要が

  あります。

B猶予期間中の手続き

・納税猶予を受け続けるには「継続届出書」を5年間は毎年、5年経過後は3年ごとに所轄税務署へ提出し続ける必要があります。

5年以内に要件を満たさなくなった場合、猶予を受けている相続税額・贈与税額の全額と利子税を納税する必要があります。

※ 基準日において雇用の8割を維持できなくなった場合他

 また、5年経過後は、ケースにより猶予税額を納付しなければならない場合があります。

C猶予される額(相続税の場合)

1.すべての遺産(後継者以外分を含む)に基づき、後継者分の税額を計算しま

  す。

2.後継者の財産は、非上場株式等のみであるとして税額を計算します。

3.後継者の財産は、非上場株式等の20%のみであるとして税額を計算します。

4.2−3が猶予される相続税額となります。1から猶予額を控除した額が相続税

  の納付額となります。