H23年度税制改正大綱について

 事務所通信vol.91

平成23年1月20日

顧問先各位  

さて平成23年が始まりました。昨年は皆様にとってどの様な一年だったでしょうか。平素は格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましてはご健勝のことと存じます。

 政権交替は起こりましたが、政局が安定せず、政情不安を外国から利用される事となってしまいました。民主党の支持が低下しているため3月に改正法案がすんなり通るかは不明ですが、以下「平成23年度税制改正大綱」について、特に中小企業者に関係のあるものについて説明します。(ご注意:現時点で法律として確定したものではありません)

1.納税環境整備

 @更正の請求期間の見直し

更正の請求を行う事ができる期間を5年に延長し、併せて課税庁が増額更正できる期間を5年に延長します。

  A個人の白色申告者の記帳が義務化されます。

1.個人所得課税

@給与所得控除の見直し

(1)給与収入が1,500万円を超える場合、給与所得控除額は245万円の上限となります。(H24年以降適用、以下同じ)

(2)4,000万円超と言う高額な役員給与については、給与所得控除額の2分の1の額を上限となります。

A退職所得課税の見直し

 勤続年数5年以内の法人役員等の退職所得について、2分の1課税を廃止します。

B成年扶養控除の見直し

23歳から65歳までの成年扶養者は、障害者、学生を除き扶養控除の対象から外れます。但し、合計所得金額が400万円以下の納税者については、引き続き成年扶養者を扶養控除の対象とできます。

C年金所得者の申告不要制度

公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金以外の所得が20万円以下の者については、確定申告不要制度が創設されます。  

(H23年以降適用)

2.資産課税

 @相続税・贈与税の見直し

  (1)相続税の基礎控除が3,000万円、法定相続人の控除額が一人600万円へ引き下げられます。

     また、最高税率が55%へ引き上げられます。 (H23年4月1日以降の相続から)

  (2)贈与税の暦年課税分の最高税率が引き上げられ、また20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合とそれ以外の者からの贈与が区分され、それぞれ税率区分が変更されます。(H23年分以降の贈与から)

     相続時精算課税については、受贈者に20歳以上である孫を追加し、また贈与者の年齢要件を60歳以上に引き下げます。

3.法人課税

@法人税率を25.5%へ引き下げられます。また中小法人の軽減税率も平成23年4月1日から26年3月31日までに開始する事業年度の法人税率が15%に引き下げられます。

A平成23年4月1日以後に取得する減価償却資産の定率法の償却率が、定額法の償却率を2倍した数へ引き下げられます。

B欠損金の繰越控除制度で、控除される額が、繰越控除前の所得の金額の80%までとされます。この為、繰越欠損金があっても20%は課税の対象となります。但し、中小法人等については、現行の控除限度額のままです。

C青色申告の欠損金繰越期間の延長

 青色申告の欠損金繰越期間を9年に延長します。

D貸倒引当金の改正

 貸倒引当金の適用会社が銀行、保険、中小法人に限定されます。

E雇用促進税制

青色申告者で、公共職業安定所長に雇用促進計画の届出を行ったものが、平成23年4月1日から26年3月31日までに開始する事業年度において、前事業年度末の従業員の数が10%かつ5人以上(中小は2人以上)増加したことの確認を受けた場合には、増加した一般被保険者の数に20万円を乗じた金額を控除できる措置が導入されます。但し、法人税額の10%(中小は20%)が上限です。

 ※現行の中小企業者の少額減価償却資産の特例(30万円未満)は、平成24年3月31日までの資産の取得が対象となっています。

4.罰則の見直し

・虚偽申告や検査忌避の罰則が強化されます。

・消費税の不正還付未遂罪も罰則の対象とされます。

・給与支払報告書不提出・虚偽記載も罰則が強化されます。