改正雇用保険法等について

 事務所通信vol.90

平成22年10月20日

顧問先各位  

毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 急激な円高で、日本経済は大きな打撃をうけています。輸入業者は円高で儲かってると言う状況があるのでしょうが、いずれにしても急激な為替の変化に対応できず、日本の円の独歩高となっている状況では、国内事業は悪影響を受けているところが多く、円の独歩高を是正する対策を政府が行う必要があると感じています。

この様な状況で、製造業を中心として国内産業の空洞化が進んできています、経営では顧客満足度を高めることが非常に重要ですが、政治においても政治家が国民の要求に答えるようサービスを行う事が必要で、党利や自身の利益追求でなく、国民の政治に対する満足度を高めるよう、努力してもらいたいと希望します。

今回は、景気悪化状況における非正規労働者の増加にともなう、雇用保険の改正点を中心に概要を説明します。

@雇用保険被保険者の範囲拡大

 平成22年4月1日から、パートタイム労働者等の非正規社員の雇用保険適用者の適用範囲が拡大されました。

 (1)適用要件の雇用契約期間の短縮

 改正前では、雇用保険の適用対象となるパートタイム労働者等は「6か月以上の雇用見込みがあること」となっていましたが、改正により「31日以上の雇用見込みがあること」に改正されました。

 なお、雇用保険の被保険者の対象となるには、従前どおりこの他1週間の所定労働時間が20時間以上であることも要件となっています。

・「31日以上引き続き雇用されることが見込まれること」

とは、下記のような契約でも該当します。

イ)雇用契約に更新する場合の規定があり、31日未満での雇止めの明示がないとき

ロ)更新規定はないが、同様に採用された労働者が31日以上雇用された実績があるとき

 従って、実際には1週20時間以上の従業員はほとんど被保険者として加入させなければならないこととなります。

(2)登録型派遣労働者の適用要件の改正

 派遣労働者についても、前記パートタイム労働者同様の雇用されることが見込まれる期間で、雇用保険の被保険者としなければなりません。

 直接採用のパートタイム労働者の適用判定の相違点は、派遣元企業の被保険者となる点と派遣元で「31日以上派遣されることが見込まれる場合」と言う点です。

(3)学生の適用

 上記改正により、学生でも被保険者に該当する者がでてきました。これまでどおり、昼間学生は原則被保険者になりませんが、下記の者は被保険者となります。

イ)卒業予定者で、その事業に雇用されることとなっているもの

ロ)休学中の者

ハ)定時制の学生

ニ)公共職業安定所長が定めるもの

A雇用保険の遡及加入

 従来は、雇用保険の加入手続きが遅滞した場合は、届出があった日から2年前までに限り、遡って雇用保険の加入が適用できましたが、事業主から雇用保険料が控除されていたことが給与明細書等の書類により確認された者については、2年を超えても被保険者期間の算定の対象となります。

 なお、上記の遡及加入の場合では労働保険料の納付も必要となります。

 文頭にも記述したように、今後日本では、正規社員及び安定した雇用は増々減少し、非正規やフリーター等の労働者が増加することが予想されます。

 上記、雇用保険の改正は、これらの非正規労働者の増加に対応するものです。

 次の就職が決まるまで、失業給付があるかないかは、退職労働者の生活を安定化させ、離職の自由を確保することとなり、結果として職員退職時のトラブルの減少にも資するものと思われますので、企業としては保険料の負担増となりますが、該当労働者の加入手続のもれの無いように行うことが必要と思います。

現行法において、日本の労働法関係法令は、法律どおりに執行されれば、労働者の権利は相当保護された内容となっています。

この為、労働者でない形で使用しようとして、「偽装請負」・「名ばかり店長」等の問題が発生しています。

 私は、今後、労働者も経営者も妥協できる労働関係法の改正となる事を期待しております。