グループ法人課税について

 事務所通信vol.8

平成22年8月20日

顧問先各位  

毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 政局が安定せず、景気回復が遅れる中、国民にとっては、どの政党であっても誰が総理大臣であっても、景気の回復、雇用の創造、安全保障が重要課題と思われます。

10月より改正法人税法の適用を受ける、グループ法人税制の形が少しずつ明らかとなってきました。

当初、100%グループ間の取引とは、そんなに該当事例がないのではと、静観しておりましたが、徐々に詳細が判明するにつけ、中小企業にとっても、複数の法人の株主となっている場合、グループ法人税制の適用を受ける場合が出てくる場合があると思われます。

単純に言えば、10月1日以降にグループ間で一定の資産を譲渡した場合、外部者へ譲渡するまで、課税の繰り延べを行うと言う内容ですが、実務上は、手数がかかり管理するのが大変な税制で、リスクもともないます。

今回はグループ法人税制について現在分かっている範囲で説明します。

1.完全支配関係とは

対象となる法人は、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係がある法人相互関係を言うとなっています。

この「一の者」とは、個人及び法人を言い、個人である場合には、その者及びこれと特殊の関係のある個人(親族等)を言います。

すなわち、対象会社Aの株主構成が夫100%、対象会社Bが子100%を所有する場合、A社とB社は完全支配関係の該当会社となります。親族のもつ株を合わせた株数が100%になる場合、グループ課税の対象となります。

2.譲渡損益調整資産とは

@譲渡の直前の帳簿価額が1,000万円以上であるもの

 建物、機械等の種類ごとに基準が定められます。

・棚卸資産は、通常譲渡損益調整資産には、該当しませんが、棚卸資産であ       る土地等は対象です。

3.課税関係

H22年10月1日以降、上記のグループ法人に該当する法人間で、に該当する資産を譲渡した場合、譲渡損益は繰延べて、該当資産がグループ外へ移転等した時に損益が実現します。

ただし、完全支配グループ間であっても、課税の繰り延べ該当資産の、再度の資産の移転は原則として、課税の繰り延べがなくなりますので、これも注意が必要と思われます。

4.手続き関係

上記に該当した場合の、会計上は、通常の譲渡と同様の処理を行います。

また法人税においては、グループ法人当事者間で通知しなければなりません。

原則として、グループ外に資産が移転されるまで、課税の繰り延べが行われるため、相互の法人において該当資産の管理、記録が必要となります。

5.リスク

  これらの事がグループ税制に該当する事に気が付かず、通常の処理を行ってしまった場合、例えばグループ会社Aの資産を同じくグループ会社Bに譲渡した場合で、売却時点で損失が発生し、所得から控除した場合は、判明した時点で修正申告を税務当局から要求される事となります。

今まで、グループ間でも、時価による資産の評価替えが行えていたものが、グループ外へ資産が移転するまで損失の計上を、認められない事となる。

また、グループ会社間での「通知」が適時・適正に行われていないと「損失」計上の機会を失う可能性すらあります。

 以上の事から、10月1日以降、出来る限りグループ間での1,000万円以上の該当資産の売却は、控えるべきだと思います。

 一見、課税の繰り延べとも思われるグループ法人課税は、利益計上の場合であっても、事務手続きが負担となり、損失計上に至っては修正申告、加算税の発生等のリスクを伴う場合があります。

 文頭に記述した「一の者」の範囲が相当広範囲に渡るため、リスクの伴った税制改正となったと思われます。

  現時点では、詳しい情報がまだ国税庁からでていない為、今後も注視が必要と思われます。