改正労働基準法について

 事務所通信vol.87

平成22年4月20日

顧問先各位  

毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 景気の低迷により労働時間は、バブルの頃と比べ短くなっておりますが、反面時間外労働の厳格な取り扱いが、小規模な事業所でも要求されてきております。

 本年4月1日より、労働基準法が改正され、時間外労働等に対し取り扱いが強化されております。中小企業では、一部の改正には当面猶予措置がありますがいずれは大企業同様強化された労働基準法を全て守らなければならなくなります。

高度経済成長期が過ぎた日本では、総労働時間は減少傾向にありますが、現在多くの国では経済格差が広がり、多くの失業者が存在するにも係わらず、一部の労働者が過重労働により健康を損なうと言った状況も発生しております。この様な行き過ぎた過重労働が見直され、ライフワークバランスのとれた社会を構築することが必要となっております。今回は、改正された労働基準法につき要点を記述します。

1.時間外労働の限度に関する基準の見直し

労働基準法で労働時間は1週40時間、1日8時間までと定められています。これを超えて法定時間外労働を行わせるためには、労使間で36(サブロク)協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

36協定では、1日、3ヶ月以内の期間、1年間のそれぞれについて、延長することができる時間を労使で協定しなければなりません。

このうち、3ヶ月以内の期間及び1年間の延長時間については、一定の限度時間が定められています。(1ヶ月45時間、3ヶ月120時間、1年間360時間、この他特別条項付き36協定では、一定限度内で限度時間を延長することが可能です。)

特別条項付き36協定を結ぶ際には、限度時間を越えて働かせる一定の期間ごとに、割増賃金率を定める必要があります。この率は25%を超える率とするよう努めなければなりません。また、延長時間数を出来るだけ短くするよう努めなければなりません。

また、特別条項付き36協定で割増賃金率を定めた場合には、就業規則に割り増賃金率を規定する必要があります。

2.月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引上げ

特に長い時間外労働を強力に抑制することを目的として、1ヶ月について60時間を超えて時間外労働をさせた場合には、その超えた時間の労働について、法定割増賃金率を5割以上に引上げることとされました。

※ なお、中小事業主の事業については、当分の間、法定割増賃金率の引上げは適用されません。

また、60時間を超える時間外労働が、深夜割増の場合には75%の割増となります。

 

 中小企業では、変形労働時間制やフレックスタイム制等時間管理の必要とする制度を活用しようとすると、労働者ごとの労働時間の厳格な管理が必要となり、賃金計算や労働法の遵守が困難となると思われます。このため出来る限り、簡便な規定とした方が、労働者とのトラブルを回避することとつながると思います。近年、企業規模による特例が徐々に無くなってきているため法令を遵守しようとする場合、出来るだけ単純かつ公平・明確な規定とすることが望まれます。

 例えば、一定の時間外労働時間を含めた手当てを、支給する賃金制度にしておけば、一定時間までの時間外手当の計算が必要なくなります。(但し、実際時間外労働時間が一定時間を超える場合は、追加の支払が必要です。)

3.年次有給休暇について

 中小企業では、あまり守られていないように感じられますが、労働基準法第39条において、6ヶ月継続勤務して全労働日の8割以上出勤した労働者に対して10労働日の年次有給休暇を労働者の請求により与えなければなりません、勤続年数が6年6ヶ月以上の継続勤務の場合、年次有給休暇の日数は最大の20労働日となります。

 

 今回の改正で、労使協定を締結することにより、年に5日を限度として、時間単位で年次有給休暇を与えることができることとなります。なお、通常の年次有給休暇を異なり前年度からの繰越がある場合でも5日が限度となります。

 なお、年次有給休暇の取得は労働者の権利ですので、使用者が命令により日時を指定することは出来ません。但し、事業に支障がでる場合は取得する時季を変更する権利を使用者は有しています。